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大丈夫です

大丈夫ですか?と声をかけられた人の答えは「大丈夫です」一択だ。

地下鉄の階段で前を歩いていた人が突然転ぶ。
「大丈夫ですか」反射的に言葉が出る。
訊いてしまった瞬間から後悔が背中を走る。
「あ、大丈夫です、すみません。」彼女はかなり痛そうな足を引き摺り
ながら後ろの人たちに迷惑をかけないように端に寄っていく。

「昨日から頭が痛いんよ」
「大丈夫?病院は?」
「そのうち治るわ、大丈夫、大丈夫」
のやりとり。

昔、交通事故に遭った時、駆け寄ってきた人だか救急隊員だかに
「大丈夫ですか」と訊かれた。
「はい(大丈夫の意)」と頷きながら救急車で運ばれた。
いや、絶対大丈夫じゃない、って。車潰れてるし。。。


絶対骨折れてるやろ、なんなら血まみれだし、っていうひとにすら
私たちは「大丈夫ですか」なんて声をかけてしまう。
「大丈夫」以外の答えを聞いたことはまだ、ない。
何百回、何千回となく口にしたかもしれない「大丈夫?」と「大丈夫!」
辛いとき、苦しい時に「大丈夫?」って聞かれても、返せる言葉は「大丈夫」しかない。

誰か一回ぐらい「だいじょばんD!!D」って返してくれよ。

大丈夫じゃないんだから。
大丈夫なはずがないんだから。
その状態での「大丈夫」はなんだから。

でもやっぱり聞かれると反射的に「大丈夫、大丈夫」って返してしまう。

大丈夫?って訊くときは、「大丈夫」の答えしか期待していない。
だって安心したいから。

そう、自分が安心したいから「大丈夫?」って訊く
相手を思いやって出てきた言葉かどうか、自分でもわからないでしょ。


だから、他人に訊いちゃだめだ
「大丈夫?」って

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