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面白かった!ゴジラS.P

 私はゴジラシリーズのファンではない。しいて言うならSFファンであるが、詳しいわけではないのでそういった観点からの考察や解説ではないことをここに明記しておきたい。あくまでも感想文である。

1.構造の面白さ

 なんといっても本作品で私が一番グっと来たのは物語の構造である。最初の謎は片田舎のなんだかよくわかんない場所、そこに来た二人の天才、仕事、役割が異なるために別れるが、ずっと協力して最後に収束する。作品としてはベタだけど、設定が込み入ってるのだから大枠はこのくらいわかりやすいほうがいいと思うし、やっぱりワクワクした。

2.円城塔のやりたい放題

 脚本を担当したのは円城塔というSF作家である。ゴジラSPを見て彼の作品に手を出そうとするとかなり疲れるだろうと思う。まず頭が良い方なので難解であることが多い、そうでない場合も「奇想」という表現がぴったり合うような面食らう表現が多い(『文字渦』などに代表される)。こういうのは古いSFファンの好物であり、読書初心者が嫌がるタイプの作風で、悪い例えをするならばSFの排外主義を助長するタイプの作家ともいえる。だからこそ私にとってはSFの入り口としてエンタメに特化している本作品は頼もしい存在でもあった。
 SFは説明するもの(フィクションに理由付けがされるもの)という意識が私にはある。だから、「ペロ2」や「ジェットジャガー」のようなAIにおけるシンギュラリティをとうに迎えたような人間味あふれるAIにも何か理由付けが欲しいと思っていた。
しかしやらない。
なぜ主人公のユンはあのレベルのAIをフリーで配布していたのか、そもそもなんであんな頭のおかしい爺さんの下で文句も言わず働いているのかなど、動機においても、技術的においても不明瞭なままストーリーは進んでいた。
 この辺にモヤモヤを感じて見るのを断念する人が多かったというのを、全話見終わって詳しい人の感想を読みたいと思ってネットを巡回しているときに見かけた。「確かに、あのキャラもこのキャラも突然現れてなんか探して情報共有しているけど、なんでだ?」と見終わってからしばらく考えていた。
 動機がはっきりしているのは頭がイカれてるしヒロイズムに溢れた大滝社長と、「ミサキオクの局長」くらいのものだ。彼は「いろいろ知ってるけど、深入りすると面倒だから放置&部下が探ってるけど面倒だから放置」というスタンスだったのがはっきりしている。
 脚本としてそうなった理由はおそらく、「ジェットジャガーが巨大化してみんなを守る」に収束させたいがためなのだろうと思う。「パニック映画的に様々な人間が様々な要素で動き回ること、これも怪獣映画として重要な要素なので入れる、けどジェットジャガーが大きくなって戦ってほしいので、そんなに掘り下げる必要もない」といったところではないだろうかなと感じた。この辺の熱量が私にとって面白いと感じたんだろうとも思う。

3.SFアニメをもっとお願い!

 近年、SFアニメが増えてきており、うれしい限りだ。ゴジラと同期放送でもViVyというアニメが放送されていた。出るロボもジェットジャガーのようなずんぐりむっくり逆関節ではなく、かわいい女性アンドロイドで、ゴジラときれいに差別化されていると感じるほど動機の説明も丁寧だったので、ゴジラ下げViVy上げのまとめサイトも多く見た。
 SFはその間口が広いのも魅力だ。惑星間航行が前提のもの(マクロスなど)、未来から超技術が現代に現れるもの(ドラえもんなど)、基本は現代劇のようだが、一部技術が発展しているもの(電脳コイルなど)様々存在する。
 小説家による脚本というのも注目ポイントだろう。ゴジラでメインの脚本は初めてだった円城塔さんのほかには、自殺を法的に認める社会を描いた『バビロン』や地球外生命体かつ人類の超越存在とのコンタクトを描いた『正解するカド』の脚本を担当された野崎まどさん。などがいる。特に私はこの野崎まどさんの大ファンなので、彼の新作である『タイタン』のアニメ化をお願いしたい。AIものの作品としては最高傑作ともいえる作品で、AIの発展によって99%の仕事が失われた世界を描いています。しかも「仕事を返せ!」みたいな人間との小競り合いはすでに終了し、「仕事がない」は当然の世界で、AI「タイタン」のうつ症状をカウンセリングするのが物語の主軸なのです。予算の潤沢な外資でアニメ化してほしいなと願っています。
 ほかに私個人の願いとしてアニメに携わってほしい作家さんで言えば柴田勝家さんでしょうか。柴田勝家を名乗り、作家名の変更も検討されたが、風貌があまりにも柴田勝家なので通ったという異色のSF作家さんです。本人もアニメなどを好んでいますし、オリジナル脚本など、よいものができそうだと勝手に思っています。SFがもっとみんなにとってとっつきやすいものになればいいと常々思っています。日本のSFの根幹は手塚治虫や藤子不二雄先生の作品群なのだから、アニメで先鋭化したっていいはずです。

ゴジラも、ウルトラマンも、仮面ライダーも、スーパー戦隊も、全部きっとSFです。日本の子供はSFの英才教育を幼少に受けているはずなのです。

サポートいただけますと、その分は私からウルトラマン基金へ寄付いたします。