見出し画像

企業分析:高島屋(8233) - 2024年2月期 決算

業績の安定性・成長性(85点)

髙島屋は百貨店事業を中心に、商業開発、金融、建装など多角的な事業を展開している。2024年2月期の連結業績は、営業収益が前期比5.1%増の4,661億円、営業利益が同41.3%増の459億円、経常利益が同42.5%増の491億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同13.6%増の316億円と、増収増益を達成した。コロナ禍からの回復に加え、グループを挙げた収益力強化策が奏功した格好だ。

見通し:百貨店業界全体の事業環境は依然厳しいものの、髙島屋の営業力強化とコスト構造改革は着実に進展している。グループ総合戦略「まちづくり」を軸に、商業開発や金融などの事業シナジーも追い風。業績の安定性と成長性は堅持されよう。

財務の健全性(80点)

自己資本比率は35.7%と前期比0.6ポイント上昇。営業キャッシュ・フローの増加などで財務基盤は一段と強化された。純有利子負債も減少傾向にあり、財務の健全性は十分に保たれている。一方、リース会計基準の適用により、有利子負債残高は大きくなっている点には留意が必要だ。

見通し:営業利益の積み上げによる自己資本の厚みは増している。安定的なキャッシュ創出力とともに、継続的な財務規律の維持が期待される。リースを含めた有利子負債管理にも目配りしたい。

事業ポートフォリオ(80点)

百貨店、商業開発、金融など、多様な事業ポートフォリオを構築している。各事業の収益力も総じて改善しており、事業ポートフォリオのバランスは取れている。商業開発や金融が第2、第3の柱として育ちつつあるほか、海外展開も視野に入れた事業開発力は評価できる。一方で建装事業の不振は課題だ。

見通し:百貨店を核に、商業開発のノウハウを活かしたまちづくりを基軸に、金融など他事業とのシナジーを追求する戦略は妥当。グループ全体での事業ポートフォリオの最適化をさらに進め、安定的な収益基盤の確立につなげたい。

株主還元(85点)

1株当たり年間配当は37円(前期比11円増)と増配。親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高を更新したほか、自社株取得(発行済株式の7.8%)も実施し、株主重視の姿勢を鮮明にした。配当性向は18.5%とまだ低水準だが、株主還元の充実は前向きだ。

見通し:利益成長に応じた増配と自社株買いを軸に、総還元性向の引き上げを掲げている。内部留保とのバランスを取りつつ、一段の株主還元強化に期待したい。資本コストを意識した資本政策の推進にも注目だ。

成長戦略(80点)

  1. 「まちづくり」を基軸に、百貨店と商業開発の融合を加速。地域密着型の店づくりや新業態開発を推進。

  2. 商業開発では賃貸住宅など非商業施設を取り込み、事業ポートフォリオの多角化を図る。ベトナム開発も本格化。

  3. 金融事業は営業基盤の拡大に加え、M&Aやアライアンスでも収益機会を探る。

  4. 全社的なDX推進で、店舗運営の効率化と顧客接点の強化に取り組む。

見通し:「まちづくり」を軸とした百貨店と商業開発の融合戦略は独自性が高い。金融を含めたグループシナジーの発揮がカギを握るだろう。アジア展開の加速や、DXを梃子とした新たなビジネスモデルの創出にも期待したい。

総合評価(81点)

百貨店業界のリーディングカンパニーとして、コロナ禍からの着実な業績回復を果たしている。営業力強化とコスト改革が進み、収益力は上向き。グループ総合戦略「まちづくり」を軸に、商業開発や金融との事業シナジーも発揮しつつある。財務基盤は盤石で、株主還元の姿勢にも前向きだ。

一方、DXの加速や海外展開の具体化など、中長期の成長戦略はこれからの段階。国内のまちづくりを基点に、デジタルと海外の2つの成長機会をどう取り込むかが今後の焦点となろう。消費環境の不透明感は根強いが、戦略の実行力は高く、グループの強みを生かした独自路線で差別化を図れる点は心強い。中長期視点での成長期待は大きい。

投資評価の指針

  • 百貨店業界の逆風下でも安定成長を続ける点を評価。競合他社対比で業績予想の確度は高い。

  • 自己資本比率35%超と、財務健全性は十分。純有利子負債の動向には注目したい。

  • グループシナジーを生かしたまちづくり戦略の進捗を見極める。

  • 増配と自社株買いの継続で、株主還元のさらなる充実に期待。

  • DXの本格化や海外展開の加速など、将来の成長ドライバーの芽を探りたい。

将来の収益予測

現状の業績動向と事業戦略を踏まえ、以下のように収益予測を立てた。

  • 2025年2月期:営業収益5,100億円、営業利益530億円、純利益360億円

  • 2026年2月期:営業収益5,300億円、営業利益560億円、純利益380億円

  • 2027年2月期:営業収益5,500億円、営業利益590億円、純利益400億円

百貨店事業は増収率を年2-3%程度と見込む。郊外店の再編などで一部店舗は閉鎖するものの、都市型店舗の営業力強化や免税売上の回復が寄与すると予想。商業開発事業は年5-7%の増収を見込む。国内外の開発案件が着実に進捗するほか、保有資産の収益力向上が期待できるだろう。金融事業は手数料収入の拡大で、年3-5%程度の増収を予想。

グループ全体では、営業利益率を現在の10%から12%程度まで段階的に引き上げることを想定。新規出店や海外事業の立ち上げ費用などが一時的な下押し要因となるが、グループを挙げたコスト削減や各種の施策効果で吸収は可能とみる。政策保有株式の削減なども進み、純利益率は7%程度で安定的に推移すると予想した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?