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Special No.10 男女ともに、人生相談

 9月23日
 秋分の日だ、休日だが文化祭の準備などがあるため、学校へ行った。今日は何となく体が重い。きのう、走ったり応援したり、どこへでも歩いたりしたためか、足が痛くて痛くて……。
 昨日、七時三十分に体育会が始まるために、六時五十五分の電車に乗った。小学校一年からずっと学校が同じだったが、まだ、話したこともなかった西森さんが突然話かけてきたのには、ビックリギウテン!
 内容は、たわいもないものだったが……、西森さんも変わったなと、つくづく思った。西森さんが「きのう、映画見に行ったんか?」(昨日は、おまつりであつたので、映画があった)と聞き、私が、「いかん」と、言ったら、映画で帰った時刻のことをすこしモサモサと話し、今度は私が、「今日、電車混んでいるやろぅ、丹生高生が乗っているで」と言い、彼が、
 「そんなこと、ねいこど」
 「今日、体育会やで」
そう、言っているうちに、電車が西田中に着いてしまった。
 「そんなら、今日一日楽しんできない」
「サイナラ」で、分かれた。
やっぱり、同級生って良いものだなと思った。
 学校行きしな、応援のための白い手袋を買った。二百円もしたので、後は一文無しのピーピーだった。
 応援は、あまり格好よくないので、少ししかしなかった。
 お昼は、二十円のパン一個、青柳さんに一個上げた。
 青柳さんは、六十メートルで二位になった。午後、友江ちゃんが「写真写してあげる」と言ったので、生徒玄関の前で写してもらおうと思って、すましていたらリチュウこと佐々木季忠が、「カメラ壊れるぞ」と言いながら、窓からのぞいている。
 全く憎らしいあいつだ!
 その時、犬が近づいてきたので「犬と一緒に写して」と言って、無理に犬を抱えたら、手をかまれそうになった。で、イヤーンと言って、変な顔した所を撮られてしまった。
 最後は、私の走る男女混合リレーだった。初めビリだったと思うが、二番目の走者青柳さんが四番になり、私も四番のままで先を越されなかった。私から、誰かノッポの男性にバトンをわたし、最後は二番に入った。嬉しかった!
 二番だと五点は青組に点が入るから……。
 パラッパラッと、雨が降る怪しい天気になったが、前夜祭をやることになり、最初はフォークダンスである。みんな雨が少し降ってきたもんだから、「もう、やめとけば良いのに」なとと、言っている。実は、私もそう言った。でも心の中ではフォークダンスした方が良いなあと、思っていた。きっとみんなも同じ心だと思う。
 フォークダンスをする時、いろんな事を考える。私もっと背が高いともてるやろぅなとか、もっと美人だったらなとか……。同じクラスでありながら花山さんとなった時がない。いつもフォークダンスになると、帰ってしまうのかな、とも思う。
 近藤さんとなる時は、くすぐったくておかしい。岩原さんとなると、何かおしゃべりしたくなり、リチュウとなると、なんだか固くなり下を向いて純情そうにしたくなる。そして、ノッポの斎藤一美さんと合うと、もっと身長が高かったらなと思い、チビな渡辺さんのこっけいな恰好におかしくて、吹き出さずにはおられない。このように、フォークダンスはとても楽しい。
 その日は、キャンプファィヤーの後、六時四分の電車で家に帰った。
 その電車を待っている時に聞いたのだが、信江ちゃんと伸ちゃんが、多栄子ちゃんの家できのう泊り、昨日の夜は映画を見に行ったのだが、小松高さんと、正治さん、吉田正二さんに会ったのだそうだが、吉田さんたらその時、タバコを吸っていたそうだ。そして、その時「修学旅行が終わった、もう学校止めるんや」と、言っていたそうである。
 吉田さんって、心はかわいらしいんだが、意志が弱いみたいな感じもする。タバコのんでみたり、おかしな者とグループを作ったり………。もっと、力強く生きられないのかしら‥‥。私は、おかしな子をよく知っている。みんな意志が弱いのだろうが、光男さん、岩原強さん、木原知さん、吉田さん、藪根さん、佐野さんこの人達はみな根はすごく善良で良い人ばかりなのに、おかしなグループ作ったり、あせった恰好したりして、喜んでいる。バカ者達だ。
 私は、やっぱりしっかりしていて、頼れる人と結婚しなければいけないと思う。なぜなら私も意志が弱い方だから、どんなことになるかわからない。意志の強いしっかりした者を求めて私は放浪する。
 私が、高2になって、付き合うようになった人は、青柳さんと古川さんの二人である。古川さんは、ただ優しいだけで、何の魅力もない。長く一緒にいると飽いてしまうような人で、私が男性だとしても吉川さんを好きにならないだろう。しかし、青柳さんは、思想が深くて、魅力的な感じがする。
私を少し大人っぽくしてくれるみたいである。
 実際、青柳さんは男子からももてるようである。私にとって、青柳さんはとってもよい友達だと思う。だから、この友達を離してはいけない。私ももっと思想を深くして、青柳さんといろんな話をたくさんしたい。
私は、今までに本当に良い友達に恵まれていたと思う。
 君江ちゃん、伸ちゃん、多栄子ちゃん、友ちゃん、くに子ちゃん、増田さん、古川さんみんな良い人達ばかりだ。だが、その話の内容と言ったら、きのうは何を食べ、何をして、宿題をしてこなくてなど、たわいもないものばかりだった。だが、青柳さんは、自分の考えをちゃんと持っているし、いろんな言葉を知っている。
 小説などは、私のほうがたくさん読んでいるのに、言葉は青柳さんの方がよく知っているようである。きっと、頭も良いのだろう。
 私は、すぐ同調するくせがある。自分の意見というものを持たない。だから、人を影響できない。征服できない。自分の意思はどうやると、自由に出せるようになるか? これからは、しっかり自分を見つめて、突き進まなくてはならないと思う。そして、モサモサしないで、しっかりとハキハキとし、人から愛される人間になりたい。
 私が、美人でなくても、いくら背が低くても自分をしつかり見つめて、自分の意思をしっかり持ち、考え深く、ハキハキとして利己的な人間にならす、自分を魅力的にするように心がければ、きっと、みんなが私を愛してくれるだろう。尊敬もしてくれるだろう。
 私の夢って何だろう。夢のない人間って何てバカなんだろう。
私の夢、すてきな男性が現れて、結婚し子供を三人産んですばらしい家庭を作る。何て、バカげた夢だろう。私の前にすてきな男性なんて、聞いてあきれちゃう。私みたいにいつもブーブー言ってなまけているものが、すばらしい家庭なんて、作れるわけがない。本当にバカみたいだ。いなくても良いような人間、それが私なのだ。
 だのに、私はこの世に出て来た。出て来たからにはいつも夢を持って生きたい。一生、おばさんになっても……、夢を捨てたらお終いだ。夢、夢……。
私は、京都へ行って母が言うように、みっちり和裁を習い、自活できるようにし、一生独身で、こじんまりした家で静かに暮らすのが、とってもすばらしいように思えてならない。そして、家の回りは四季を通じて花が咲き乱れ、いつも良い香りが漂い、近所のおじさん、おばさん、学生、子供達が遊びに着たり、話しに来たり、何かの相談に来たり、愚痴を言いに来たり、ちょっとでも暇があると色んな小説を読んで、ひっそりと一生を過ごしていくのだ。そして、貯金をしておいて、死ぬまでその家で過ごすのだ。
 そして、私を知っているすべての人が、私の死を本当に悲しんでくれる。こんな一生だとどんなにすばらしいか………。
 男の人って、本当にコワイ人間だと思う。酒を飲んで乱暴する人、浮気する人、おかしな人間である。
でも、やっぱり兄や父のように良い人間もいるのだから、そんなことを言っ   てもいけないが、父は小言ばっかりで、ちっとも取り柄のない人間なのである。
 私は、目が悪いからあまり細かい仕事はなるべくさけなければならない。すると、どんな仕事があるだろう。何もない。
 私は、自分があまり欠点ばかりなので、自分ながら本当にあきれている。これでは、私を好きになる人間など一人もないのがあたりまえのような気がする。でも、私はいつも人から愛されたいと願っているのである。
 私は、人のいうようにおセンチなのかも知れない。いつも、私を私という人間を好きになってくれる人間がいたら、どんなにすばらしいだろうと思っている。そんなこと私にありえないのかしら‥‥。ロチェスターが、ジェインを恋するが、あのような恋は小説だけのものだろうか、だったら、寂しくてたまらない。
 私は、いくら何でもモーパッサンの「女の一生」の主人公ジャンヌにだけはならないつもりである。いや、つもりではいけない。
 絶対ならない。いくら堕落しても、いつもしっかりと、すぐ堕落から立ち直れる人間でありたい。

【コメント】
高校生ともなると、一応立派な人生アドバイザーになれる。
こうして、友人仲間同士で意志を固め合うのは、大変よいことである。
出来るか、できないかは時の運もあるから、正解はないが、
小さくても信念を抱くのは、とても良いことだ。
ただ、問題は勉強だ・・・。
どうして、その歯車が思うように回らないだろうか。
勉強が、直ぐには役立つものでないところに、何かが私を遠くへ追いやるという、空想に落ち込むのだろうか。
この、暗い井戸から這い上がらなければ、ずーうっと暗い世界にいることになる。



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