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The Tender Bar

アマゾンプライムで公開されたばかりのジョージ・クルーニー監督作品。アメリカでは昨年12月17日より劇場公開。予告編(日本語サブなし)↓

素敵な作品だった。号泣せずとも、最後はかなりハートにジーンと来る。これはピュリッツァー賞受賞ジャーナリストで、作家のJ・R・モーリンガーの自叙伝を映画化したものだそうだ。 J.R.は父親不在の家庭で育つが、母方の伯父が父親代わりのようなもので、その伯父の経営するバーを舞台の中心として人生に必要な色々なことを教わる。ただタイトルの「バー」が表すのは、伯父の存在だけでなく J.R.を取り囲む優しい人達も含めている気がする。(ネタバレ)最後は J.R.はイェール大学を卒業してNYに向かい、いよいよ独り立ちとなる。

人の持つ価値観とか思考癖は、生まれ育った家庭環境にとても大きく左右されているのだけれど、本当に広い視野でそれを俯瞰できたり、自分でそのことに気付き認めたりできるのは色々な人生経験(特に失敗)を積んでからなのだと思う。人生全体がそれに向き合っていく過程だと言っても良いかも知れない。学歴偏重社会はアメリカに限ったことではない。人間の価値はそんなものでは測り得ない。ルームメートの言葉にもあったが、そもそも誰もが生まれてきただけでも幸運なのだし、価値があるのだ。


生まれた家の階級の差、男女の差、学歴の差、この作品には描かれていないが信仰の違い、肌の色の違い・・・。私達は自分以外の何者にもなり得ないのに、何かになろうとしてしまうという悲しい性がある。「自分探し」という言葉は好きではない。でもいくつになっても自分の中の知らなかった部分に遭遇するというのは、痛みを伴ったりすることもあるけれど面白いことだ。

作品のストーリーから思考が飛んでしまったけれど、こういう風に観た人に色々考えさせる映画には、やはり高評価をつけたい。 J.R.がこのあとNYでどのように生活していくかは、観る人がそれぞれ想像すればいいのだ。

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