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マクドとルートビアとひまわりの種

「ねえ、ルートビアが飲みたいから、マクド行こうよ。」

唐突に彼が言った。夜、12時に近い時間だったと思う。ルートビアは、アメリカで売っている不思議な味の炭酸飲料のこと。

「えっ、こんな夜中に何言ってんの?もうくたくただから早く寝たい。」

「えー、いいじゃん、行こうよ」

「行くならひとりで行ってきたらいいじゃん」

「一緒に行こうよ、いいじゃん、せっかくなんだし」

「え、やだよ、眠いって」

数年前、まだ夫婦ではなかったころ。友達の結婚式でグアムを訪れていたわたしたちは、真夜中にマクドに行くか行かないかで喧嘩をしていた。

その日は結婚式があって、二次会にも参加して、みんなで飲んでビーチバレーもして、酔っ払って服のまま海に飛び込んだメンバーがタクシーに乗れずに歩いて帰る羽目にあい、一番近いホテルに泊まっていたわたしたちの部屋のシャワーを提供し、ひと段落して友人達が引き上げたあと、さあ寝るか、というところでの冒頭の彼の発言。

もう、くったくたなんですけど。

ルートビア、そんなに飲みたいなら明日の朝マクド付き合うからさ、今日はもう寝ようよ。

それでも彼はどうしてもどうしてもルートビアが飲みたかったらしく、結局わたしはぶーたれて不機嫌なまま、マクドに付き合うことになった。

わたしはずっと不機嫌で、彼はそんなわたしに怒って不機嫌になり、翌日はお互い別行動。わたしが友達と海で遊んでいる間、彼はお気に入りの殻付きのひまわりの種を買ってきて、ホテルのベランダで食べていたらしい。ハムスターか。

今から思えば喧嘩の理由もしょうもないし、そんなことで翌日まで引きずって怒っていたこともしょうもない。それでもこのグアムでの大げんかは、わたしたちの歴史においてはビッグイベントで、結婚して数年経った今でもマクドを見れば「グアムで喧嘩したねえ」と言い、殻付きのひまわりの種を見れば「ベランダでひとりで食べてたねえ」と言う。

そして先日、社員旅行でグアムに行ったら、喧嘩の舞台となったマクドは変わらずに同じ場所にあった。

ああ、喧嘩したなあと、苦笑いがこぼれる。せっかくだからと、写ルンですのシャッターを切る。

そして今このnoteを書いていたら、会社の人と飲んできたー、とご機嫌で夫が帰宅した。酔っ払うとハイテンションで絡んでくる。

まあ、きみが楽しそうならいいか。

でも今夜は今からマクド行くとか言わないでよ。

#真夜中のつぶやき #夫婦の思い出

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