私心に打ち勝つということ■□下田コラム□■vol.87
今、SBIホールディングスの北尾吉孝氏の「心田を耕す」を読んでいる。
その中で、こんな一説があった。
超意識（潜在意識を更に超える深層部分）とは仏教的に言うと阿頼耶識というものですが、そこから顕在意識下に情報を持ってこようとする場合、潜在意識の中にある様々な障害物、例えば過去の恐怖や嫌な思い出のようなものに妨害されてしまいます。従って、此の色々な障害物を上手に潜り抜けるべく如何にして超意識の世界に繋がるルートを付けるのかが問題となるわけですが、そういう中では精神的錬磨や学問的錬磨あるいは経験的錬磨といったものが求められ、そしてそれらが全て合わさって一つの道が出来てくるということなのだと思います。
人間の意識の深層には、自分の経験だけではない叡智が詰まっている。
その叡智のことを陽明学では良知という。仏教的には阿頼耶識。
陽明学的考えでいけば、その良知がそのまま発揮されたら人は間違えない。
間違えないというのは、言葉で表現するのは難しいのだが「亨る」ということだ。うまく流れるというのがいいのかもしれない。
それは、人との関係性でいえば人間関係がスムーズになるとか、ビジネスでいけば、とんとん拍子で話が進むとかである。
ものごとがうまくいくには、絶妙なバランスやリズムがある。それを良知は知っているのだ。
良知を発揮できたらうまくいくのに、それが発揮できないからいろいろな問題を起こす。
その問題を起こすのが私心だ。
私心というと邪な気持ちのようなものと考えるかもしれないが、それだけではない。
北尾氏が書いているように、過去の恐怖や嫌な思い出なども私心だ。
過去の恐怖体験などは人をトラウマにする。それが本来的には「やった方がいい」と思っている行動を避ける。
結果、ものごとがうまく流れなくなるのだ。
では、その障害物を取り除くためにやるべきことは何か。
北尾氏は、精神的錬磨、学問的錬磨、経験的錬磨だと言っている。
この錬磨が大事だ。
「練磨」、陽明学では「磨練」というが、これは実生活の中で体験し、そこから学び自分を鍛え上げていくということだ。
つまり、日常とかけ離れた特別な場所で学ぶのではなく、日常生活の中で体得していくということだ。
これを能動的に意識的にやっていくことで、障害物を取り除くことができ、良知に辿りつけるようになっていくということだ。
日々をそのようにとらえて、目の前の出来事に当たっていく。
そうすることで、良知の発揮がどんどん可能になっていく。
ただし、私はいつでもどこでも１００％良知が発揮される人間になるというのはあり得ないと思っている。
人は最後まで、私心が残る。
しかし、昨日より今日、今日より明日、0.1％ずつでも私心の入り込む余地を少なくすることはできると思っている。
そして、その道のりに人間が生きる意味があると考えている。
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