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”ハリウッド3幕構成”完全攻略ガイド1

この記事について

 この記事は、ハリウッド型3幕構成――つまり「ハリウッドでヒットしている映画の脚本はほとんどこの方式を使っているよ~!」というシナリオ制作術を可能な限り分かりやすく解説するシリーズです。

 また、このシナリオ術には脚本の1ページ=映画の1分として扱うという超明快な基準がありますので、算数の割り算と掛け算さえできれば他の媒体のシナリオ制作にも応用可能です。その実例としてもご覧いただければと思っています。

 この記事では一例として、私の仕事である32ページ漫画のシナリオ制作に応用する形で説明しています(実績は商業小説の執筆協力3本、原案1本、商業漫画の読切3本、宣伝漫画2本、全5巻の連載1本、現在は次の連載が控えている状態です。アテになるかどうかの判断材料にしていただければ幸いです)。

 それでは、本論に入ります。

3幕構成の何がすごいのか

 まずはあなたの時間を無駄にしないために、3幕構成をマスターすることで必ず得られる効果を以下で説明します。大きくは3つです。

<1>ハリウッド型=エンターテインメントに徹した物語構造を理解し、そのストーリー配分も理解できる

<2>物語を構成する要素の過不足を極めて簡単にチェックできるようになる

<3>テーマとは何かを、感覚ではなく仕組みとして理解できるようになる

 <1>は”なんとなく”を”確信に変える”効果、<2>は実際の作業スピードを大幅に上げる効果、<3>はテーマという中級者以上が必ずぶつかる、得体の知れないものの正体を知れるという効果を持ちます。

 個人的には<3>がむちゃくちゃすごい効果だと思っています。というのも、創作相談の中でよく聞かれる「テーマって何ですか?」「テーマって必要ですか?」という質問に明快に答えることができるようになるからです。

 3幕構成をマスターした後では、あなたの作品を読んだ人からの「この作品のテーマは何ですか?」という質問に窮することは絶対にありません。もちろん、実際に質問された時は「テーマは作品の中にあります」と答えましょう(カッコイイので)。

そもそも3幕構成の”幕”ってなに?

 それでは説明に入ります。以下の図は、3幕構成の3つの”幕”、それぞれの割合を示しています。

三幕構成・大

 第1幕と第3幕がだいたい4分の1ずつ、第2幕がちょうど半分を占めているのがお分かりになると思います。3幕の割合は均等ではないんですね。

 では”幕”とはなんでしょうか。

 それは、物語世界を覆っている”価値観”のことです。”幕が切り替わる”とは、”価値観が切り替わる”ということになります。

 3つの”幕”、それぞれを覆っている価値観は以下のとおりです。

第1幕=「主人公がこれまで過ごしてきた世界の価値観

第2幕=「第1幕の世界とは正反対の価値観

第3幕=「ふたつの価値観の矛盾を解決した新しい価値観

 つまりハリウッド型の物語とは、主人公がふたつの相反する価値観の世界を潜り抜けたのちに、新たな価値観に到達(創造)する、という構造になっています。

 これが3幕構成の”幕”の正体です。

3つの”幕”を構成する15の”ビート(節)”

 このシリーズではここから、『SAVE THE CAT(猫を救え)の法則』という超有名、かつ超ベストセラーになっているハリウッド型脚本術の本を元に説明していきます。著者はブレイク・スナイダー。2008年に亡くなったハリウッドの脚本家です。この本では3幕構成を15のビート(節)に分解し、その通りに書くことを薦めています。

 各ビートの名称は以下の通りです(いま記憶する必要はありません)。

1.オープニング・イメージ
2.テーマの提示
3.セットアップ
4.きっかけ
5.悩みのとき
6.第1ターニング・ポイント
7.サブプロット
8.お楽しみ
9.ミッド・ポイント
10.迫りくる悪いやつら
11.すべてを失って
12.心の暗闇
13.第2ターニング・ポイント
14.フィナーレ
15.ファイナル・イメージ

 この方法は創作論の歴史上、未来永劫に渡って刻まれる大発明です。

 ただこのビートシート(節の構成表)、大変画期的で素晴らしい仕組みなのですが、正直、文字だけで説明された原著を読んでも直感的にピンと来ません。以下の模式図をご覧ください。

ビートシート全体模式図

 ”4”と”9”と”13”と”15”、見えますか?

 この図は、15のビートを3幕の時間軸上に配置したものです。一見しただけで、15のビートが順番通りに並んでいないことがお分かりになると思います。

 ”1”と”2”は”3”の手下みたいになってますし、”7”と”8”なんて完全同時進行です。同時ってなに!?

 そうなのです。15のビートとは要素の説明に過ぎず、独立しているビートもあれば、他のビートの中に含まれているビートもあります。

 ブレイク・スナイダー式のビートシートを学んだ方が上手く応用できない原因は、このまったく直感的でない分かりにくさによるものです。

 ですので、この記事ではよりシンプルに理解していただけるように、15のビートを2~3個ずつまとめた6つのブロックとして扱います。

 さらに、各ブロックが終わるごとに、漫画シナリオに置き換えた場合の作例を示します。一度挫折した方でも大丈夫です。絶対に100%理解させます。できます。

 次の記事からは各ブロックをさらに”幕”ごとにまとめて順番に解説していきます。3幕を覚えるなら最短の3回で覚えたいですもんね(つまり、この記事シリーズはこの回を含めて全4回です)。

 ですが、ここでひとつ正直に言うと、次の”第1幕”、その前半である”第1ブロック”が全ブロックの中で最も大変な鬼門になります。ビートシートから入った物語制作初心者の方はここで脱落することが多いはずです。

 ですがどうか、覚悟を決めてお付き合いいただければ幸いです。

 この記事シリーズは創作初心者の方はもちろん、中級者以上、特に創作に行き詰まっていて、「自分の話がありきたりでつまらない」=「最初から結論ありきになってしまって、自分の考えを超えられない」と思っている方にこそ、最後までお付き合い願えればと思っています。

 それではまた次回、何卒よろしくお願いします。


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