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おじさん蒸し器バトルロワイヤル

夏休み最後として、JR西日本が実施している「サイコロきっぷ」を使って博多まで旅行に来た。
1日中観光を楽しみ、最後に大きな銭湯に訪れた。そこで僕はサウナを発見した。
サウナは大嫌いだ。基本的にサウナとは防衛戦、耐久戦であり、己との戦いになる。自分とすら戦わないといけないなら、もうこの人生どうしようもないだろ。
しかし、この世界に生まれた以上、入らずにはいられない。それは宿命と言っても過言ではなく、男達は皆、「トトノウ」とかいう謎の呪文を唱えてサウナに入っていく。トトノウって何なんだよ。馬鹿なんじゃないのかな。

サウナが大嫌いな僕でも一つだけ良いと思う点がある。好きなだけ汗がかけるという点だ。汗をかくと臭くなるので、人間社会で生きてる以上、汗臭いのは気になる。
しかし、サウナは別。皆汗をかきにきている。なんか、人の目を気にせず汗かけるとかもそうだけど、運動せずかいた汗って気持ちいいね。

余談ですけど男湯のサウナ部屋の木材で造った家ってめちゃくちゃ臭そうですよね。おじさんの汗が染み付いてるので。特に尻汗。最悪。

サウナに入るとテレビがついていた。金曜日ということもあり、金曜ロードショーで「竜とそばかすの姫」が放映されている。竜とそばかすの姫って、細田守監督作品にしては評価低いですけど親友ちゃんのアバターを作った時点で神映画ですよね。

かわいいね


金ローでやったということはネタバレ有りで説明するが、僕が入った時はあの正義の味方ヅラしたおっさんとBelleが対峙してる場面あたりでおじさんも若者もボーッとそばかすを観ていた。
すると、僕と同じ?くらいの学生4人組の1人がサウナの中にいる人全員に聞こえる声で言った。

やっぱエンドロールまでみんな見るよな?な?

空気がピリつく。何気ない一言だが、全員に聞こえるような声量、当たり前のことをわざわざ言うという行為、「みんな」という曖昧な人物指定、全てが宣戦布告である。
頭を下げてたおじさんも頭を上げてテレビに目を向ける。
サウナにいる全ての人間がテレビに目を向けた。今更逃げ出すことなど出来ない。男が裸一貫で持つのはプライドのみ。負ける訳には行かないのだ。
僕も例外ではない。仮にも映画好きを公表している。なんならそばかすなんて3回目だ。映画好きを名乗るのにエンドロールを見ないなんて暴挙を起こすわけが無い。
しかし内心焦っていた。というか既に弱気だ。それはそばかすを観るのが3回目ということもあった。

ちょっと待って????あと30分くらいなかった????

あと30分、サウナにいなきゃいけないの??正直、既に10分近く入っていた。発言した学生はBelleが正義の味方ヅラしたおっさんを倒せば終わりとでも思ったのだろう。

全身汗まみれの男たちが手に汗握り観戦していた。


全然違う!!!!なんかその後現実でもそのおっさんと会うんだって!!虐待ジジイが勝手にすずにビビって逃げてくシーンとかあるんだって!!
地上波初放送ということもあり、初めて観た人も多かったのだろう、全員テレビに釘付けで結末はまだか、まだかと待ち続ける。
とうとう逃げ出す者が現れた。しょうがない。まだ20分くらい残ってる。


サウナには、まだ14人近く残っていた。それになぜか1人抜けた以降、出るやつも入ってくるやつもいない。もう、なんか、戦友じゃない?僕達。サウナ、普通にかなり暑い温度設定にされているので、過酷も過酷。

そうこうしてるうちにとうとうフィナーレを迎える。
決着がつき、すずが街に帰ってきて、みんなで帰るところだ。

歌って!!

すず「いくよっ!」

エンドロールが流れる。

終わった。これで終わったんだよ。汗か涙か、ごちゃまぜになった感情が溢れる。ごちゃまぜになったところで「しんどいつらい」純度100%な訳なんですが。

エンドロールが流れ終わり、本当に、本当に全員立ち上がった。しかし、戦友たちは思い出したのだ。

ここ、水風呂だけくっっそちいせえ!!!

最大で入れて3人ほどだろう。裸のおっさん達がサウナから出て水風呂待ちしてるのも絵面が気持ち悪い。ここは思いやりバトルだ。
「あっ、先いいですよ」「どうぞどうぞ」
その中でいの一番に出ようとした奴がいた。
僕達に宣戦布告した学生だ。おい!!ちょっと待て!!お前だけはダメだろ!!!!!お前が最初に出るのは絶対にダメだろ!!

結局、9番目くらいにサウナを出て、水風呂に入り、外のベンチで横になった。
30分くらいそうしていた。多分普通に気失ってたよな??

疲れを癒しに行ったのにドっと疲れて僕はホテルへと帰った。もう、なんか、すぐに寝ようと思う。


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