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【当事者カード】溺神の信奉者、リーアで墓地の出来事は唱えられるのか?【フラッシュバック】

エルドレインの森が発売し、新たな環境が始まった今秋、1枚のカードが話題となっています。

《溺神の信奉者、リーア》です。あなたの墓地にありインスタントやソーサリーであるカードにフラッシュバックを与える、つまり墓地のスペルをもう一度だけ唱えることができるという能力ですが、この能力とある種のカードとの相互作用が話題となっています。それは

当事者カードです。《溺神の信奉者、リーア》の能力によって、墓地にある当事者カードを「出来事」の側で唱えることが出来るのです。さらに出来事による追放はフラッシュバックによる追放に取って代わることができるので、それは追放領域からクリーチャーとして唱えることができます!

Q:じゃあ《瞬唱の魔導士》で墓地の当事者カードにフラッシュバックを与えて出来事で唱えていいってこと?
A:できません。
出来事として唱えているとき以外は、当事者カードはその通常の特性だけを持ちます。墓地の当事者カードはインスタントやソーサリーではないので、瞬唱の魔導士の能力の対象に選ぶことは出来ません。

Q:《貴顕廊一家の隆盛》で墓地の当事者カードを出来事として唱えてもいいの?
A:できます。インスタントやソーサリーである呪文を唱えてよいなら、当事者カードは出来事の側で唱えることができます。

Q:炎の中の過去で墓地の当事者カードにフラッシュバックを与えて唱えられるの?
A:できません。
墓地の当事者カードはインスタントやソーサリーでは無いので、炎の中の過去の解決時に生成される継続的効果の適用外です。

Q:《碑出告と開璃》で当事者カードがめくれたら出来事で唱えられるの?
A:出来ません。それは唱える呪文の特性を参照しているのではなく、追放されたカードの特性を参照しているので、当事者カードはインスタントやソーサリーであるカードではありません。

では改めて何故このプレイングが可能なのか、該当するルールを紹介します。

601.3e ルールや効果が、カードやカードのコピーを唱えるのが適正かどうかを判断するのに代替の特性群あるいは特性群の一部だけを参照することがある。その判断のためには、代替の特性でそのオブジェクトの特性を置き換える。そのオブジェクトがそれらの特性を持つようになった場合に適用される継続的効果も考慮される。

「代替の特性」という耳慣れない言葉が登場しますが、原文では「Alternative characteristics」なので、「別の特性」と言い換えていいかもしれません。ルール文をカードを主語として言い換えればこうなります。
別の特性を持つカードは、唱える際にその別の特性で唱えることが適正か判断することができる。その特性を持つようになった場合に適用される継続的効果も考慮される。

これにより、唱えるかどうかの判断に当たっては、墓地の当事者カードは《溺神の信奉者、リーア》の効果によりフラッシュバックを持つものとして扱うことができるし、《貴顕廊一家の隆盛》のインスタントやソーサリー呪文を唱えてもよいという効果を受けることができるのです。しかし対象に選ぶ際や、効果のうち呪文として唱えさせる効果以外が当事者カードの特性を参照するのなら、それは本来の特性を持ちインスタントやソーサリーとして扱うことはありません。


別の特性を持つカードは、当事者カードの他にも分割カード、変異能力を持つカード、反転カード(戦場でしか別の特性を持たないので今回の件に関係無し)、両面カード、授与を持つカード、試作カードがあります。

この説明で納得できる方にとってはこの記事はここでお終いです。「そんなルールでは無かったはずだ!」と思った方はこの先で説明致します。


おそらく出来ないと仰られる方は、このルールを根拠にすると思います。

715.4 スタック以外のいずれかの領域である間、また出来事でない状態でスタックにある間、当事者カードはその通常の特性だけを持つ。

では、当事者カードを通常の特性で唱えるか、出来事で唱えるかはいつ決定されるのでしょうか?スタックに置く前でしょうか?それともスタックに置いた後でしょうか?それとも、手札とスタックの間に未知の領域があり、そこに選択の余地があるのでしょうか?

それについて、「呪文を唱える」というルールがどう変遷してきたのかを辿っていくことで明らかにしていきたいと思います。
古い総合ルールについては、日本語訳をログとして残してくださっているMJMJ.info様より引用させて頂きます。また、Wizards of the Coastのルール更新記事については、過去のページは未翻訳&サイト改編により404となっているのでInternet Archive様より引用させて頂きます。

では始めます。手始めに現在、2023年9月時点の最新の総合ルールの601項「呪文を唱えること」を載せておきますが、知ってるよという方&読むのが面倒くさいという方は目次より「基本セット2020:始まり」へ移動してください。


総合ルール601.呪文を唱えること

601. 呪文唱えること

601.1. かつて、呪文唱えること、あるいはカード呪文として唱えることを、その呪文カードを「プレイする/playing」と表記していた。そのように記載されているカードは、オラクルで訂正され、呪文カードを「唱える/casting」となっている。

601.1a 効果の一部は、カードを「プレイする/playing」となったままである。カードプレイするとは、そのカード土地としてプレイするか、呪文として唱えるか、該当する方のことを指す。

601.2. 呪文唱えるとは、やがて解決されてその効果が発生するよう、それを現在ある場所(通常は手札)から取り、スタックに積み、コスト支払うことである。呪文唱える、という中には、その呪文の提示(rule 601.2a-d)と、コストの決定と支払い(rule 601.2f-h)が含まれる。呪文唱えることは、以下の順番で以下の手順を踏む。プレイヤーがこの手順を始めるには、その呪文を適正に唱えられる必要がある(rule 601.3 参照)。下記に列記されている手順の実行中にその手順で必要なことができなかったら、その呪文唱えることは不正である。ゲームはその呪文が提示される直前の瞬間まで巻き戻される(rule 728不正な処理の扱い〕参照)。

601.2a 呪文唱えることを提示する場合プレイヤーはまずそのカード(あるいはそのカードコピー)を元の領域からスタックへと動かす。それはスタックの一番上にあるオブジェクトとなる。これはそのカード(あるいはそのカードコピー)のすべての特性を持ち、そのプレイヤーがそのコントローラーとなる。あなたがその呪文唱え始めるに際してその特性を修整する継続的効果は、それがスタックに置かれるに際して始まる(rule 611.2f 参照)。呪文は、解決されるか打ち消されるか、あるいはルールや効果によって他の領域動かされるまでスタックにとどまる。

601.2b 呪文モードを持場合プレイヤーモードの選択を宣言する(rule 700.2 参照)。プレイヤーがその呪文に他のカード連繋(rule 702.47 参照)したい場合、そのカード手札から公開する。その呪文が、バイバックキッカーと言った、代替コスト追加コスト(rule 118.8rule 118.9 参照)を持っている場合プレイヤーはそのコストのうちどれを払うかを宣言する(rule 601.2f 参照)。単一の呪文に対し、複数の代替法で唱えたり、あるいは代替コスト支払ったりすることはできない。その呪文が、唱える間に支払う可変のコスト(マナ・コストに含まれる{X}など。rule 107.3 参照)を持つ場合プレイヤーはその値を宣言する。その数字が、そのプレイヤーが後でその呪文の宣言中あるいは解決中に行う選択によってその呪文の文章中で定義されている場合プレイヤーはその選択をこの時点で行う。その呪文唱える間に支払コスト混成マナ・シンボルが含まれている場合プレイヤーは混成でないマナでどう支払うかを宣言する。その呪文唱える間に支払コストにファイレクシア・マナが含まれている場合プレイヤーはそれらの各シンボルごとに2点のライフ支払うかそのマナ支払うかを宣言する。前段階での選択(墓地からフラッシュバック呪文唱えることを選んだ、変異つきクリーチャー裏向き唱えることを選んだなど)は、それ以降の選択を制約する。

601.2c プレイヤーは、その呪文の求める対象それぞれについて、適正なプレイヤーオブジェクトを選んで宣言する。代替コスト追加コスト(キッカーコストなど)を支払ったとき、あるいは特定のモードを選んだときにのみ対象を取りうる呪文は、それ以外の場合には対象を取りえないものとして唱えられる。同様に、代替コスト追加コストが選択された場合にだけ他の対象を取りえることがある。呪文が可変の数の対象を取る場合プレイヤー対象を宣言する前にいくつの対象を取るのかを宣言する。対象の数が、呪文の文章によって定められていることがある。呪文の定める対象の数が決定されたら、その対象の数を決定するために参照された情報が変わったとしても、その数は変わらない。同じ「target」の語で示される中で(日本語版では、「[性質]N個」」「[性質]や[別の性質]のうちM個」としてまとめられている中で)、同じ対象を複数回選ぶことはできない。複数の対象群がある場合、同一のプレイヤーオブジェクトを(条件を満たしているなら)それぞれで1回ずつ対象に取ることができる。あるオブジェクトプレイヤー対象として選ばれなければならないという効果がある場合対象を選ぶプレイヤーは、オブジェクトプレイヤー対象にできないとするルールや効果に反しない限りにおいて最大の数のその種の効果に従うように対象を選ぶ。選ばれたプレイヤーオブジェクトはその呪文対象となる。(それらが呪文対象となったときに誘発する能力はこの時点で誘発する。この呪文唱えられ終わるまで、その能力スタックには積まれない。)

例:「クリーチャー2体を対象とする。それらをタップする。」という能力があった場合、同じクリーチャーを2回対象にすることはできず、適正な対象2つが必要である。一方、「アーティファクト1つと土地1つを対象とする。それらを破壊する。」という能力があった場合対象群は2つあるので、アーティファクト・土地1つを2回対象にすることができる。

601.2d 呪文によって、プレイヤーが1つ以上の対象を含む複数のオブジェクトプレイヤーダメージカウンターなどの効果を分割したり分配したりするとき、そのプレイヤーは、選ばれたプレイヤーオブジェクトそれぞれが最低限それを1つは受けるように、量と分割の仕方を選ぶ。

601.2e ゲームは提示された呪文が適正に唱えられるかどうかを見る。提示された呪文が不正だった場合、ゲームはその呪文唱えることが提示される直前の瞬間に戻る(rule 728不正な処理の扱い〕参照)。

601.2f プレイヤーはその呪文総コストを決定する。通常、そのマナ・コストだけである。追加コスト代替コストを持つ呪文や、支払うべきコストを増減させる効果、あるいは他の代替コストを使えるようにする効果も存在する。コストには、マナ支払い、パーマネントタップパーマネントの生け贄、手札カード捨てる、などが含まれる。総コストとは、マナ・コストまたは代替コスト(rule 601.2b で決定したもの)に、すべての追加コストコストの増加分を加え、コストの減少分をいたものである。複数のコスト減少が適用される場合、そのプレイヤーは任意の順番でそれらを適用する。コストの増減を計算した結果として総コストマナ部分がなくなった場合、それは{0}として扱う。{0}未満に減少することはない。この計算後、総コストを直接変更する効果が適用され、総コストが「固定」される。この後で効果総コストを変更しようとしても、何の効果もない。

601.2g 総コストの中にマナ支払いが含まれる場合、そのプレイヤーマナ能力起動する機会(rule 605マナ能力〕参照)を得る。マナ能力コスト支払う前に起動する必要がある。

601.2h プレイヤーはその総コスト支払う。まず、無作為の要素やライブラリーから公開領域オブジェクト動かすことを含まないすべてのコストを任意の順で支払う。その後、残りのすべてのコストを任意の順で支払う。一部分だけ支払うことは許されない。それらのうち支払うことのできないものを支払うことは選べない。

例:マナ・コストが{1}{B}でクリーチャー1体を生け贄に捧げ追加コストを持つ《祭壇の刈り取り》を唱える。ここで、あなたの黒の呪文唱えるためのコストを{1}減らす効果を持つ《雷景学院の使い魔》をこの追加コストとして生け贄に捧げ場合呪文総コストは実際に支払いが行われる前に「固定」されているので、《祭壇の刈り取り》のコストは{1}{B}になることはなく、{B}となったままである。

601.2i rule 601.2a-h で示された手順が完了したら、その呪文唱えられるに際してその呪文特性を変更する効果が適用される。その後、その呪文唱えられたことになる。呪文唱えられたこと、あるいはスタックに積まれたことによる誘発型能力は、この時点で誘発する。その呪文コントローラーがそれを唱える前に優先権を持っていた場合、そのプレイヤー優先権を得る。

601.3. プレイヤーは、ルールや効果によって唱えることが認められていない限り、呪文唱え始めることはできない。呪文を提示し終わったあとで唱えることが認められなくなった場合、その呪文唱えることは不正であり、ゲームはその呪文唱えることを提示する直前の瞬間に戻る(rule 728不正な処理の扱い〕参照)。

601.3a 効果によって特定の性質を持つ呪文唱えることが禁止されている場合も、プレイヤー呪文を提示している間に行われる選択によってその呪文の性質が変わり、その効果が適用されなくなるなら、そのプレイヤーはその効果を無視してその呪文唱え始めてもよい。

例:プレイヤーが「あなたの 対戦相手マナ総量が偶数のすべての呪文唱えられない。(0は偶数である。)」の能力を持つ《虚空の選別者/Void Winnower》をコントロールしているとき、その対戦相手マナ・コストが{X}{R}{R}である《とどろく雷鳴/Rolling Thunder》を唱え始めることができる。これはXの値の選択によって、その呪文マナ総量が奇数になることがありうるからである。

601.3b 効果によって特定の性質を持つ呪文瞬速を持つかのように 唱えることが認められている場合、そのプレイヤーは、その呪文の性質を変えうるような選択をその呪文を提示している間にすることを考えてもよい。それらの選択によって、その効果が適用されるようになるなら、そのプレイヤーはそれが瞬速を持つかのようにその呪文唱え始めてもよい。

例:オーラ呪文瞬速を持つかのように 唱えてもよいという効果があり、手札授与を持つクリーチャーカードがある場合授与 呪文代替コストを選ぶことでその呪文オーラ呪文 になるので、瞬速を持つかのようにその呪文唱え始めることは適正である。

601.3c 効果によって、プレイヤー代替コスト追加コスト支払った場合呪文瞬速を持つかのように 唱えることが認められている場合、そのプレイヤーはその呪文瞬速を持つかのように 唱え始めることができる。

601.3d 呪文が特定の条件を満たした時にのみ瞬速を持つ場合、その条件を満たしているなら、そのコントローラー瞬速を持つかのように 唱え始めることができる。

601.3e ルールや効果が、カードカードコピー唱えるのが適正かどうかを判断するのに代替の特性群あるいは特性群の一部だけを参照することがある。その判断のためには、代替の特性でそのオブジェクト特性を置き換える。そのオブジェクトがそれらの特性を持つようになった場合に適用される継続的効果も考慮される。

例:《ガラクの大軍》には、「あなたの ライブラリーの一番上からクリーチャー呪文唱えてもよい。」という効果が存在する。あなたが《ガラクの大軍》をコントロールしていて、あなたの ライブラリーの一番上のカード変異を持っていてクリーチャーでないカードだった場合あなた変異 能力を用いてそれを唱えてもよい。

例:《イゼットの模範、メーレク》には、「あなたの ライブラリーの一番上からインスタントソーサリーである呪文唱えてもよい。」という効果が存在する。あなたが《イゼットの模範、メーレク》をコントロールしていて、あなたの ライブラリーの一番上にあるカードが《切り落とし》というインスタントの出来事を持つ当事者・クリーチャーカードである《巨人落とし》だった場合あなたは《切り落とし》を唱えることはできるが《巨人落とし》を唱えることはできない。あなたコントロールしているカードが《イゼットの模範、メーレク》でなく《ガラクの大軍》でライブラリーの一番上のカードが《巨人落とし》だった場合あなたは《巨人落とし》を唱えることはできるが《切り落とし》を唱えることはできない。

601.3f 効果の中に、プレイヤー追放 領域にある裏向きカードの中から特定の性質を持つ呪文唱えられるようにするものがある。プレイヤーは、追放 領域にあるその裏向きカードを見ることができる場合にのみその種の呪文唱え始めることができる。

601.4. rule 601.2bにあるモード代替コスト追加コストの選択の宣言中に、そのルールの指示に従うと後で行なわれることになる他の選択によって可能になる選択肢がある場合がある。その場合、その呪文コントローラーはその段階でそれらの選択がされると考えてもよい。それらの選択によって特定のモード代替コスト追加コストが選べるようになるなら、選んでもよい。

例:《豊穣の碑文》はキッカーモードを持呪文で、「以下から1つを選ぶ。この呪文キッカーされていたなら、代わりに以下から望む数だけ選ぶ。」と書かれている。この呪文で選んだモードを宣言するとき、キッカーコスト支払いの選択は宣言の手順上それよりも後であるが、コントローラーは望む数のモードを選ぶことができる。

601.5. プレイヤーが、呪文の提示が終わったあとでその呪文唱えることができない場合(rule 601.2a-d 参照)、その呪文唱えることは不正であり、ゲームはその呪文唱えることが提示される前の瞬間まで巻き戻る(rule 728不正な処理の扱い〕参照)。その呪文コストを決定して支払う間(rule 601.2f-h 参照)や、呪文唱えられたあとに、ルールや効果がその呪文唱えることを不正なものにしても関係ない。

601.5a プレイヤーが、特定の条件を満たしたことによって瞬速を持っている呪文、あるいは特定の条件を満たしたことによって瞬速を持つかのように 唱えられる呪文(rule 601.3d 参照)を唱え始めたら、その条件が満たされなくなったとしても瞬速を持つかのようにその呪文唱え続けることができる。

601.6. 呪文の中には、唱えるときに通常そのコントローラーが行うこと、つまりモード対象の選択などを、そのコントローラー対戦相手に行うように指定するものがある。こういった場合対戦相手はその呪文コントローラーが通常行うのと同じタイミングでその選択を行う。

601.6a 選択を行える対戦相手が複数いる場合、その呪文コントローラーがどちらの対戦相手に選択を行わせるかを決める。

601.6b その呪文唱えられるときに、そのコントローラーと他のプレイヤーに同時に何らかの行動をさせる場合呪文コントローラーが先に行い、その後で他方のプレイヤーが行う。これは rule 101.4 の例外である。

601.7. コストを変える呪文唱えても、既にスタックにある呪文能力には影響しない。

https://mjmj.info/data/docs/JPN_CR_20230901_0.html

基本セット2010:始まり

まず、現行のルールの大本と言える基本セット2010、2009年7月の総合ルールの601項を見てみましょう。現行ルールほどでは無いですが長いので飛ばしても構いません。

601. 呪文唱えること

601.1. 長年にわたり、呪文唱えること、あるいはカード呪文として唱えることを、その呪文カードを「プレイする/playing」と表記していた。そのように記載されているカードは、オラクルで訂正を受け、呪文カードを「唱える/casting」となっている。

601.1a 効果の一部は、カードを「プレイする/playing」となったままである。カードプレイするとは、そのカード土地としてプレイするか、呪文として唱えるか、該当する方のことを指す。

601.2. 呪文唱えるとは、やがて解決されてその効果が発生するよう、それを現在ある領域(通常は手札)から取り、スタックに置き、コスト支払うことである。呪文唱えることは、以下の手順を踏む。呪文唱える途中のどこかの時点でプレイヤーが手順を完了できなくなったら、その呪文唱えることは不正である。ゲームは呪文を唱え始める前まで巻き戻される。(rule 714不正な処理の扱い〕参照。)一旦なされた宣言や支払いを変更することはできない。

601.2a プレイヤーは、呪文唱えることを宣言する。そのカード(あるいはそのカードコピー)が物理的に元の領域からスタックへと動かされ、スタックの一番上にあるオブジェクトとなる。これはそのカード(あるいはそのカードコピー)のすべての特性を持ち、そのプレイヤーがそのコントローラーとなる。呪文は、打ち消されるか解決されるまでスタックにとどまる。(#コピーは物理的に動かせない。また、《時間停止》のように打ち消しでも解決でもなくスタックから除かれる場合もある。)

601.2b 呪文モードを持つ場合プレイヤーモードの選択を宣言する(rule 700.2 参照)。プレイヤーがその呪文に他のカード連繋(rule 702.44 参照)したい場合、そのカード手札から公開する。その呪文が、バイバックキッカー召集と言った、代替コスト追加コスト、その他の唱える間に支払う特殊なコスト(rule 116.8rule 116.9 参照)を持っている場合プレイヤーはそのコストのうちどれを払うかを宣言する(rule 601.2e 参照)。単一の呪文に対し、複数の代替法で唱えたり、あるいは代替コストを支払ったりすることはできない。その呪文が、唱える間に支払う可変のコスト(マナ・コストに含まれる{X}など。rule 107.3 参照)を持つ場合プレイヤーはその値を宣言する。その呪文唱える間に支払う コスト混成マナ・シンボルが含まれている場合プレイヤーは混成でないマナでどう支払うかを宣言する。前段階での選択(墓地からフラッシュバック呪文唱えることを選んだ、変異つきクリーチャー裏向き唱えることを選んだなど)は、それ以降の選択を制約する。

601.2c プレイヤーは、その呪文の求める対象それぞれについて、適正なプレイヤーオブジェクト領域を選んで宣言する。代替コスト追加コスト、その他の特殊なコスト(バイバック・コストキッカー・コストなど)を支払ったとき、あるいは特定のモードを選んだときにのみ対象を必要とする呪文は、それ以外の場合には対象を取らないかのように唱えられる。呪文が可変の数の対象を取る場合プレイヤー対象を宣言する前にいくつの対象を取るのかを宣言する。同じ「target」の語で示される中で(日本語版では、「[性質]N個(または[性質]N個)」としてまとめられている中で)、同じ対象を複数回選ぶことはできない。複数の対象群がある場合、同一のプレイヤーオブジェクト、あるいは領域を(条件を満たしているなら)それぞれで1回ずつ対象に取ることができる。選ばれたプレイヤーオブジェクト領域はその呪文対象となる。(それらが呪文対象となったときに誘発する能力はこの時点で誘発する。この呪文が唱えられ終わるまで、その能力スタックには積まれない。)

例:「クリーチャー2体を対象とし、それらをタップする/Tap two target creatures.」という能力があった場合、同じクリーチャーを2回対象にすることはできず、適正な対象2つが必要である。一方、「アーティファクト1つと土地1つを対象とし、それらを破壊する/Destroy target artifact and target land.」という能力があった場合対象群は2つあるので、アーティファクト・土地1つを2回対象にすることができる。

601.2d 呪文によって、プレイヤーが1つ以上の対象を含む複数のオブジェクトプレイヤー効果(ダメージカウンターなど)を分配したり割り振って置いたりするとき、プレイヤーはどう分配するかを宣言する。その各個の対象に、最低限(ダメージカウンターなどを)1つは分配しなければならない。

601.2e プレイヤーはその呪文総コストを決定する。通常、そのマナ・コストだけである。追加コスト代替コストを持つ呪文や、支払うべきコストを増減させる効果、あるいは他の代替コストを使えるようにする効果も存在する。コストには、マナの支払い、パーマネントタップパーマネントの生け贄、手札カード捨てる、などが含まれる。総コストとは、マナ・コスト、または起動コスト代替コスト(rule 601.2b で決定したもの)に、すべての追加コストコストの増加分を加え、コストの減少分を引いたものである。コストの増減を計算した結果として総コストマナ部分がなくなった場合、それは{0}として扱う。{0}未満に減少することはない。この計算後、総コストを直接変更する効果が適用され、総コストが「固定」される。この後で効果総コストを変更しようとしても、何の効果もない。

601.2f 総コストの中にマナの支払いが含まれる場合、そのプレイヤーマナ能力起動する機会(rule 605マナ能力〕参照)を得る。マナ能力コスト支払う前に起動する必要がある。

601.2g プレイヤーは全てのコストを任意の順に支払う。一部分だけ支払うことは許されない。支払うことのできないコストは支払えない。

例:マナ・コストが{3}{B}でクリーチャーを1体生け贄に捧げる追加コストを持つ《死の爆弾》を唱える。ここで、あなたの黒の呪文プレイするためのコストを{1}減らす効果を持つ《雷景学院の使い魔》をこの追加コストとして生け贄に捧げた場合呪文総コストは実際に支払いが行われる前に「固定」されているので、《死の爆弾》のコストは{3}{B}になることはなく、{2}{B}となったままである。

601.2h rule 601.2a から rule 601.2g で示された手順が完了したら、その呪文は唱えられたことになる。呪文が唱えられたこと、あるいはスタックに置かれたことによる誘発型能力は、この時点で誘発する。その呪文コントローラーがそれを唱える前に優先権を持っていた場合、そのプレイヤー優先権を得る。

601.3. 呪文の中には、唱えるときに通常そのコントローラーが行なうこと、つまりモード対象の選択などを、そのコントローラー対戦相手に行なうように指定するものがある。こういった場合対戦相手はその呪文コントローラーが通常行なうのと同じタイミングでその選択を行なう。

601.3a 選択を行なえる対戦相手が複数いる場合、その呪文コントローラーがどちらの対戦相手に選択を行わせるかを決める。

601.3b その呪文が唱えられるときに全てのプレイヤーに同時に何らかの行動をさせる場合呪文コントローラーが先に行い、その後でその他のプレイヤーが行なう。これは rule 101.4 の例外である。(#ターン順で、というのが落ちているっぽい)

601.4. コストを変える呪文を唱えたり能力起動したりしても、既にスタックにある呪文には影響しない。(#「と能力」を残す場所が間違っている模様)

601.5. プレイヤーは、唱えることが禁止されている呪文を唱え始めることはできない。

601.5a 何らかの効果によって、プレイを禁止されているカード裏向きに唱えられ、裏向き呪文が禁止されていない場合、その呪文裏向き唱えることができる。rule 707裏向き呪文パーマネント〕参照。

https://mjmj.info/data/obsolete/CompRules/CompRules_j.6000.html

現在のルールの601.2eにあたる、唱えた呪文が適正かチェックするルールがまだありません。代わりに、601.5で不正な呪文を唱えることは禁止され、ただし裏向きの呪文(変異とIllusionary Mask)だけは例外が与えられています。

707.4. 裏向きで唱えられるオブジェクトは、スタックに積まれるよりも前に裏向きになるので、その呪文特性を見る効果はその裏向き呪文特性だけを見ることになる。(そのカード表向きの時の特性ではなく)それらの特性を持つオブジェクト唱えることに適用される効果や禁止は、このオブジェクト唱えるする際に適用される。

https://mjmj.info/data/obsolete/CompRules/CompRules_j.6000.html

リーア当事者の肝である現601.3eにかなり似通ったルールです。ここで重要なのは、変異で唱える場合、それはスタックに積まれる前に裏向きになり、代替の特性を持つということです。(スタックに積んでから裏にしたら表がバレバレなので当たり前なのですが)

また、元祖代替の特性を持つカード、分割カードのルールについても注目しておきましょう。

708. 分割カード

708.1. 分割カードでは、一枚のカードに2組の表が存在する。分割カードの裏は、通常のマジックのカードと同じ裏になっている。

708.2. スタック以外の領域にあるときは、分割カードは二組の特性と2つの点数で見たマナ・コストを持つ。呪文スタックにあるときは、唱えられている側の特性だけが存在し、他方の特性は存在しないものとして扱われる。

708.3. それぞれの半分ごとに異なるマナ・シンボルマナ・コストに含む分割カードは、スタックにあるときを除いては多色として扱われる。呪文スタックにあるときは、そのプレイされている側のだけが存在する。

https://mjmj.info/data/obsolete/CompRules/CompRules_j.6000.html

ここではまだ、どちらの側を唱えるかを決めるタイミングが特に決められていません。

ワールドウェイク:分割カードのルール変更

翌年の2010年2月、ワールドウェイク発売に際しての総合ルール更新です。

708.2a プレイヤー分割カード唱える 場合、そのプレイヤーはその分割カードスタックに置く前にどちらかの半分を選ぶ。唱えられている半分だけがスタックに置かれるものとして扱う。

https://mjmj.info/data/obsolete/CompRules/CompRules_j.6300.html

708.2a
This new rule states that if a player casts a split card, that player chooses which half to cast before putting it onto the stack.
(私訳:この新ルールは、プレイヤーが分割されたカードを唱える場合、そのプレイヤーはどちらの半分を唱えるかを選んでからスタックに置く、というものである。)

Janualy 2010 Update Bulletin(Internet Archive)

分割カードのどちらを唱えるかは、スタックに置かれる前に行う、ということが明確化されました。

テーロス:授与の登場

さて、時を進めて2013年9月、テーロスにて、新たに代替の特性を持つカード群が登場します。

授与です。「ちょっと待って!授与と当事者カードはルールが違うんじゃない?」という人がいるかもしれません。そうなのです。

702.102. 授与/Bestow
702.102a 授与は2つの常在型能力を表す。1つは授与を持つカードスタック上にある間に作用する常在型能力、もう1つはそれがスタック上に置かれている間と戦場に置かれている間の両方で作用する常在型能力である。「授与[コスト]/Bestow [cost]」は、「あなたはこのカードを、これのマナ・コスト支払うのではなく、[コスト]を支払って唱えてもよい。」および「あなたがこの呪文授与 コスト支払うことを選択したなら、これはオーラエンチャントとなり、エンチャント(クリーチャー)を得る。」を意味する。これらの効果は、この呪文解決される時点で不適正な対象対象としていたか、またはこの呪文がなったパーマネントが外れるかのどちらかが起こるまで残る。授与 コスト支払う 場合rule 601.2b および rule 601.2e-g の代替コストの支払いに関するルールに従う。

https://mjmj.info/data/obsolete/CompRules/CompRules_j.20130927-0.html

授与は、クリーチャー・エンチャント呪文として唱えた後、唱える際の選択601.2bの間にエンチャント─オーラに特性を変化させる能力として登場しました。

そのため、クルフィックスの預言者の能力で、瞬速を持つかのように唱え始めてから、オーラ呪文に変化させることができました。

マジック・オリジン:混乱の始まり

2015年7月、マジック・オリジン発売に際しての総合ルール更新で、上記のクルフィックスの預言者との相互作用を訂正するためにルールが変更されました。

601.2a 呪文唱えることを示す場合プレイヤーはまずそのカード(あるいはそのカードコピー)を元の領域からスタックへと動かす。それはスタックの一番上にあるオブジェクトとなる。これはそのカード(あるいはそのカードコピー)のすべての特性を持ち、そのプレイヤーがそのコントローラーとなる。呪文は、打ち消されるか解決されるか、あるいは効果によって他の領域に動かされるまでスタックにとどまる。示した呪文唱えることが適正かどうかは、この時点では確認されない。

601.2e これまでの宣言に基づき、ゲームはその示された呪文が該当するタイミングのルール(カードタイプに基づくものを含む)や呪文唱えることを許可したり禁止したりする効果に基づいて適正に唱えられるかどうかを見る。示された呪文が不正だった場合、ゲームはその呪文唱えることが示される直前の瞬間に戻る(rule 717不正な処理の扱い〕参照)。

https://mjmj.info/data/obsolete/CompRules/CompRules_j.20150717_0.html

601.2 and subrules
I made some tweaks to the procedure of casting a spell or activating an ability. It basically boils down to the proposal of the spell, including making all necessary choices such as modes and targets. Then the game checks to see if what you've proposed is legal. Finally, assuming the spell is legal, you calculate and pay costs. In practice, not much is changing. Bestow gets a little easier to figure out. For example, if an effect stops you from casting creature spells, you can still cast one as an Aura. There are some strange cases with things like split cards or flash that become a bit clearer as well.
(呪文を唱えたり能力を起動したりする手順について、いくつか調整を加えた。基本的には、モードや対象など必要なすべての選択を含む呪文の提案に集約される。その後、ゲームはあなたが提案したものが合法かどうかをチェックする。最後に、その呪文が合法であると仮定して、コストを計算して支払う。実際には、あまり変わりません。授与は少しわかりやすくなりました。例えば、クリーチャー呪文を唱えられなくする効果があったとしても、オーラとして唱えることはできます。分割カードやフラッシュのような奇妙なケースもありますが、それも少し明確になります。)

601.5
We've deleted this rule that says you can't begin to cast a spell that's prohibited from being cast. The legality check now happens at one defined point, according to the changes to rule 601.2. Technically, you can begin to cast a spell whose been named for Meddling Mage, for example, but you won't get very far before the game detects this illegal action and backs up. In practice, nothing really changes.
(唱えることが禁止されている呪文を唱え始めることはできないというこのルールを削除しました。ルール601.2の変更に従って、合法性のチェックは定められた1つの時点で行われるようになりました。厳密には、例えば《翻弄する魔道士》で指定された名前を持つ呪文を唱え始めることはできますが、ゲームがこの違法な行為を検知して後退するまでにはそう掛かりません。実際には何も変わりません。)

Magic Origin Update Bulletin(Web Archive)

601.5が廃止され、呪文を唱え始める際はそれが適正化はチェックされず、601.2eにてそれが適正な呪文か判定されるようになりました。これにより、《クルフィックスの預言者》で唱えたクリーチャー呪文がオーラになってしまったら、601.2eで不正として巻き戻されます。また、《翻弄する魔導士》で指定されている呪文も唱え始めることができますが、同様に601.2eで弾かれます。

おそらく多くの人はこのイメージで当事者カードを捉えているのでは無いでしょうか。実際この時点ではそれで正しいのですが、ここからルールの穴埋めが始まります。

戦乱のゼンディカー:呪文を唱える事に対して厳しくなる

2015年10月、戦乱のゼンディカー発売に際して、再度ルールが変更されます。

601.2. 呪文唱えるとは、やがて解決されてその効果が発生するよう、それを現在ある場所(通常は手札)から取り、スタックに積み、コスト支払うことである。呪文唱える、という中には、その呪文を示す(rule 601.2a-d)ことと、コストの決定と支払い(rule 601.2f-h)が含まれる。呪文唱えることは、以下の手順を踏む。その呪文を示している間に決定される情報に基づいて唱えられなくする効果以外に、その呪文を適正に唱えられなくするものがあるなら、この手順を始めることはできない(そのような効果rule 601.2eに示すチェックの際に考慮される)。呪文唱える途中のどこかの時点でプレイヤーが手順を完了できなくなったら、その呪文唱えることは不正である。ゲームはその呪文が示される直前の瞬間まで巻き戻される(rule 717不正な処理の扱い〕参照)。

601.2e ゲームはその示された呪文が適正に唱えられるかどうかを見る。示された呪文が不正だった場合、ゲームはその呪文唱えることが示される直前の瞬間に戻る(rule 717不正な処理の扱い〕参照)。

https://mjmj.info/data/obsolete/CompRules/CompRules_j.20150926_1.htm

601.2 and 601.2e
We improved the rules for casting a spell in the last update, so some interactions based on how or from where you could cast a spell were clearer. For example, most players thought Prophet of Kruphix would affect a spell with bestow cast as a creature but not one cast as an Aura. Now that's true! The way it breaks down is you propose the spell you're going to cast, meaning you make choices like which half of a split card you're using, how you're going to pay any alternative or additional costs, and so on. Then the game checks to see that the spell you've proposed is legal. Then you determine and pay costs. Simple, right?
(我々は前回の更新で呪文を唱えるルールを改善し、呪文を唱える方法や場所によるいくつかの相互作用がより明確になった。例えば、ほとんどのプレイヤーは《クルフィックスの預言者》はクリーチャーとして唱えられた授与の呪文には影響するが、オーラとして唱えられた呪文には影響しないと考えていた。今はその通りだ!つまり、分割されたカードのどちらを使うか、代替コストや追加コストをどのように支払うか、などの選択をする。その後、ゲームはあなたが提案した呪文が合法かどうかをチェックします。その後、コストを決定して支払う。簡単でしょう?)
The problem was a very strict reading of the rule said that the only time the game checked anything was after you proposed a spell. You could just propose whatever you wanted and the game would eventually stop you. Well, that could work, right? Not really. For example, there was nothing (other than common sense, but who's counting?) stopping you from proposing casting the fourth card of your opponent's library. You'd put that card on the stack, find out it was illegal to cast it, and the game would rewind. Fun way to look at everything, right? So I adjusted some verbiage to account for this.

I am proud to report that this oversight affected zero actual games of Magic. I checked.
(問題は、非常に厳密にルールを読むと、ゲームが何かをチェックするのは呪文を提案した後だけだということだった。何でも好きなものを提案し、最終的にゲームに止められるのだ。まあ、それはうまくいくだろう?そうでもないんだ。例えば、対戦相手のライブラリーの4枚目のカードを唱えることを提案するのを止めるものは何もなかった(常識以外に、誰が数えてるんだ?あなたはそのカードをスタックに置き、それを唱えることが違法だとわかり、ゲームは巻き戻される。面白い見方だろう?だから、これを考慮するためにいくつかの文言を調整した。
この見落としがマジックの実戦に影響を及ぼしたことはゼロであったことを報告できることを誇りに思う。私は確認した。)

Battle for Zendikar Update Bulletin(Internet Archive)

なんとマジック・オリジンのルールでは、「君のライブラリーの一番上から4枚目のカードを唱えるよ!おっとこれは唱えられない呪文だった!巻き戻すね!」というプレイが適正だというのです。そんな馬鹿なと思う人がいるかもしれませんが、古来からホワイト・ライトニング、おにぎりシュート、フェイズ・ゼロなどルールの隙を悪用しようとした例は枚挙に暇がありません。ということで太線の部分が追加されたのですが、非常に分かり難く、何度か翻訳し直されたのですがそれでも分かり難いと思うので原文と私訳を混ぜたものを張ります。

A player must be legally allowed to cast the spell to begin this process,
ignoring any effect that would prohibit that spell from being cast based on information determined during that spell’s proposal. (Such effects are considered during the check detailed in rule 601.2e.)
(この処理を開始するためには、プレイヤーはその呪文を唱 えることが法的に許可されていなければならない、 その呪文を示している間に決定される情報に基づいてその呪文を唱えることを禁止するような効果は無視する。(そのような効果はルール601.2eで詳述されているチェックの際に考慮される)。)

https://media.wizards.com/2015/docs/MagicCompRules_20150926.pdf

呪文を唱え始めるには、ルールに許可されていなければならないという前提が必要となりました。これにより、スタックに置いてから唱えられるかどうか判断する、という事は不可能になりました。
《翻弄する魔導士》や《ガドック・ティーグ》などの効果は「その呪文を示している間に決定される情報に基づいて唱えられなくする効果」に当たり、無視して唱え始めることはできますが、示された呪文が不正なら601.2eで弾かれることに変わりはありません。

異界月:例外の設定

2016年7月、異界月発売に際しての総合ルール更新で、前回の更新でサポートできていなかった呪文についてのルール追加が行われました。

601.3. プレイヤーは、ルールや効果によって唱えることが認められていない限り、呪文を唱え始めることはできない。呪文を示し終わったあとで唱えることが認められなくなった場合、その呪文唱えることは不正であり、ゲームはその呪文唱えることを示す直前の瞬間に戻る(rule 719不正な処理の扱い〕参照)。

601.3a 効果によって、プレイヤー代替コスト追加コストを支払った場合呪文瞬速を持つかのように唱えることが認められている場合、そのプレイヤーはその呪文瞬速を持つかのように唱え始めることができる。

601.3b 効果によって、プレイヤーが特定の特性を持つ呪文瞬速を持つかのように唱えることが認められている場合、そのプレイヤーはその呪文を示している間にその特性を持たせるための選択をしてもよい。選択によってその特性を満たせる場合、そのプレイヤーはその呪文を唱え始めることができる。
例:オーラ呪文瞬速を持つかのように唱えてもよい、という効果があるときに、授与を持つクリーチャーカード手札に持っていた場合授与 能力代替コストによってその呪文オーラ呪文になるので、この呪文瞬速を持つかのように唱え始めることは適正である。

https://mjmj.info/data/obsolete/CompRules/JPN_CR_20160722.html

601.3
A new rule that codifies some exceptions to the process of casting a spell. For the vast majority of spells, casting it is pretty easy. First, a rule or effect must allow you to cast the object in question. The rules have the cards in your hand covered, and effects such as the one created by the flashback mechanic can let you cast cards in other zones. With me so far? Great.
(呪文を唱える過程におけるいくつかの例外を成文化した新ルール。大半の呪文については、唱えるのはとても簡単である。まず、ルールや効果によって問題の対象を唱えることができなければならない。通常のルールは手札のカードをカバーし、フラッシュバックのような効果は他の領域のカードを唱える様にできる。ここまでは一緒?いいね。)

Some effects allow you to cast a spell as though it had flash under certain conditions, usually if an alternate or additional cost is paid. The problem is you don't choose to pay that cost until after you've already started to cast the spell. This creates a logical paradox. In order to start casting the spell, you need to take an action after you've started casting the spell. Complicating matters are bestow and cards like Sigarda's Aid. In this case, you don't even know the spell you're casting is an Aura until you've started casting it.
(効果によっては、特定の条件下で、代替コストや追加コストを支払った場合に、その呪文が瞬速を持っているかのように唱えることができるものがある。問題は、その呪文を唱え始めてからでないと、そのコストの支払いを選択できないことである。これは論理的矛盾を引き起こす。 呪文を唱え始めるためには、呪文を唱え始めてからアクションを起こす必要がある。問題を複雑にしているのは、授与や《シガルダの助け》のようなカードである。この場合、唱え始めるまで、唱えている呪文がオーラであることすらわからない。)

We want this all to work as players would reasonably expect, so we built in structure to support that. Basically, if the process of casting the spell would yield information relevant to whether you can cast it or not, you can consider that information to get permission to start casting the spell. It necessarily has to peek into the future a bit, but that's fine. There is still a check at the end of the process before you pay costs to make sure what you've proposed is still legal.
(我々は、プレイヤーが合理的に期待するとおりにこのすべてが機能することを望んでいるので、それをサポートする構造を組み込んだ。基本的に、呪文を唱える過程で、その呪文を唱えられるかどうかに関連する情報が得られるなら、その情報を考慮して呪文を唱える許可を得ることができる。必然的に少し未来を覗かなければならないが、それでも構わない。あなたが提案したことがまだ合法であることを確認するために、コストを支払う前にプロセスの最後にチェックがあります。)

Eldritch Moon Update Bulletin(Internet Archive)


総くずれは追加コストを支払うことで瞬速を持つかのように唱えることができますが、ソーサリー・カードをインスタント・タイミングで唱えることのできるルールは無いので唱え始めることができません。

シガルダの助けはオーラ呪文を瞬速を持つかのように唱えることを許可しますが、授与は唱える時点ではオーラでは無いので唱えることができません。
これらの矛盾に対応するため、それぞれの例外が設定されました。
これらで唱え始めた後に、追加コストを支払わない選択をするなど不正を行ったなら、601.2eによって巻き戻されることになります。

基本セット2019:さらに厳しくなる

2018年6月、基本セット2019の発売に際してのルール更新で、呪文を唱える際のルールがさらに厳密化されます。

601.2. 呪文唱えるとは、やがて解決されてその効果が発生するよう、それを現在ある場所(通常は手札)から取り、スタックに積み、コスト支払うことである。呪文唱える、という中には、その呪文を示す(rule 601.2a-d)ことと、コストの決定と支払い(rule 601.2f-h)が含まれる。呪文唱えることは、以下の順番で以下の手順を踏む。プレイヤーがこの手順を始めるには、その呪文を適正に唱えられる必要がある(rule 601.3 参照)。呪文唱える途中のどこかの時点でプレイヤーが手順を完了できなくなったら、その呪文唱えることは不正である。ゲームはその呪文が示される直前の瞬間まで巻き戻される(rule 721不正な処理の扱い〕参照)。

601.3a 効果によって特定の性質を持つ呪文唱えることが禁止されている場合、そのプレイヤーは、その性質を変えうるような選択をその呪文を示している間にすることを考えてもよい。それらの選択によって、その効果がそのプレイヤーがその呪文唱えることを禁止しなくなるなら、そのプレイヤーはその効果を無視してその呪文唱え始めてもよい。

例:プレイヤーが「あなた対戦相手点数で見たマナ・コストが偶数の呪文唱えられない。(0は偶数である。)」の能力を持つ《虚空の選別者/Void Winnower》をコントロールしているとき、その対戦相手マナ・コストが{X}{R}{R}である《とどろく雷鳴/Rolling Thunder》を唱え始めることができる。これはXの値の選択によって、その呪文点数で見たマナ・コストが奇数になることがありうるからである。

601.3b 効果によって特定の性質を持つ呪文瞬速を持つかのように 唱えることが認められている場合、そのプレイヤーは、その呪文の性質を変えうるような選択をその呪文を示している間にすることを考えてもよい。それらの選択によって、その効果が適用されるようになるなら、そのプレイヤーはそれが瞬速を持つかのようにその呪文唱え始めてもよい。

例:オーラ呪文瞬速を持つかのように 唱えてもよいという効果があり、手札授与を持つクリーチャーカードがある場合授与 呪文代替コストを選ぶことでその呪文オーラ呪文になるので、瞬速を持つかのようにその呪文唱え始めることは適正である。

601.3c 効果によって、プレイヤー代替コスト追加コスト支払った場合呪文瞬速を持つかのように 唱えることが認められている場合、そのプレイヤーはその呪文瞬速を持つかのように 唱え始めることができる。

601.3d 呪文が特定の条件を満たした時にのみ瞬速を持つ場合、その条件を満たしているなら、そのコントローラー瞬速を持つかのように 唱え始めることができる。

https://mjmj.info/data/obsolete/CompRules/JPN_CR_20180608_0.html

601.2 and 601.3a

The first of these two rules handles how to begin casting a spell. It got some big changes back in the day to support Void Winnower. If the card has an even converted mana cost, but you can make the spell have an odd converted mana cost (most likely by choosing an odd value for an X), you should be able to cast it. This meant that "can't cast" effects had to be dodged somehow.
(この2つのルールのうち最初のルールは、呪文を唱え始める方法を扱う。《虚空の選別者》をサポートするために、このルールに大きな変更が加えられた。そのカードのマナ・コストが偶数であっても、その呪文のマナ・コストが奇数になるようにすれば(たいていの場合、Xに奇数を選ぶことで)、その呪文を唱えることができるようになる。つまり、「唱えられない」効果は何らかの方法でかわす必要があったのだ。)

601.2 did that, but the new text wasn't quite doing exactly what we intended. That "dodge the can't" clause was a very important rule and it didn't deserve to be one clause in a wall of text, especially since the narrow space didn't let us use the right words to express what it needed to. That never really mattered until Squee got stuck on Ixalan. (Totally not canon.)
(601.2はそれを実現したのだが、新しい文章は私たちが意図した通りになっていなかった。特に、狭いスペースでは必要なことを表現するのに適切な言葉を使うことができなかったからだ。スクイーが『イクサラン』で行き詰まるまでは、そんなことはどうでもよかった。(完全にカノンではない)。)

The details behind the interaction of Squee, the Immortal and Ixalan's Binding were weird, unintuitive, and not at all what the rule was meant to be. So, I unweirded it. I removed the clause about avoiding "can't cast" effects from 601.2, created a new 601.3a to handle that, and made that new rule more airtight. To get around a "can't cast" effect, you need to show that a choice made during the first few steps of casting the spell can cause the spell itself to change in such a way to no longer be prohibited.
(《不死身、スクイー》と《イクサランの束縛》の相互作用の背後にある詳細は奇妙で、直感的でなく、ルールの意図するところとはまったく違っていた。そこで、私はそれを非奇妙なものにした。私は601.2から「唱えられない」効果を避けるという条項を削除し、それを扱うための新しい601.3aを作り、その新しいルールをより強固なものにした。「唱えられない」効果を回避するためには、呪文を唱える最初の数ステップの間に行った選択によって、呪文自体が禁止されなくなるような変化を引き起こすことができることを示す必要がある。)

(Remember, if you do get around the "can't cast" like this but then don't actually make that choice, 601.2e still stops you.)
(このように「唱えられない」を回避しても、実際にその選択をしなかった場合、601.2eは依然としてあなたを止めることを覚えておいてほしい)。

Core Set 2019 Comprehensive Rule Changes(Internet Archive)


《不死身、スクイー》は、追放領域から唱えられる能力を持っています。《イクサランの束縛》は、それが追放したカードと同じ名前の呪文を唱えることを禁止します。では《不死身、スクイー》は唱えられるでしょうか?
追放領域にある《不死身、スクイー》を唱える際、「その呪文を示している間に決定される情報に基づいて唱えられなくする効果」である《イクサランの束縛》の効果は無視して唱えられ始めます。601.2eは不正に唱えている呪文を止める役割を果たしますが、この時点ではスクイーは追放領域に存在せず、イクサランの束縛によって追放されたカードと同じ名前の呪文は存在しないのでスクイーは合法な呪文となります。

この奇妙な相互作用を防ぐため、601.2から「その呪文を示している間に決定される情報に基づいて唱えられなくする効果は無視できる」という分は削除されました。これにより、スクイーはスタックに移動させる事が不可能になるので、イクサランの束縛が機能するようになりました。

それに伴い、新たな例外ルールも追加されました。《虚空の選別者》はマナ総量が偶数の呪文を唱えることを禁止しますが、マナ・コストにXを含む呪文のマナ総量はX次第で奇数にも偶数にもなるので、その選択により回避できるようになります。

これで改めて、
・呪文をスタックに置くためには適正なルールが必要
・スタック上で特性を変化させることのできるカードは、呪文を唱えることを禁止する効果から逃れることもできる。(あくまで禁止する効果を無視できるだけで、適正なルールがない呪文は唱えられない)
・瞬速を持つかのように唱えられることに関しては、例外が設定されている。
という事が明示されました。

エルドレインの王権:当事者カードの登場

2019年10月、エルドレインの王権発売で当事者カードが登場し、さらに唱える際のルールが現在とほぼ同じになりました。

601.3e ルールや効果が、カードカードコピー唱えるのが適正かどうかを判断するのに代替の特性群あるいは特性群の一部だけを参照するという場合、そのプレイヤー唱え始められるようになる前にそれらの代替の特性でそのオブジェクト特性を置き換える。

例:《ガラクの大軍》には、「あなたライブラリーの一番上のカードクリーチャーカードである場合あなたはそれを唱えてもよい。」という効果が存在する。あなたが《ガラクの大軍》をコントロールしていて、あなたライブラリーの一番上のカード変異を持っていてクリーチャーでないカードだった場合あなた変異 能力を用いてそれを唱えてもよい。

例:《イゼットの模範、メーレク》には、「あなたライブラリーの一番上のカードインスタントカードソーサリーカードであるなら、あなたはそれを唱えてもよい。」という効果が存在する。あなたが《イゼットの模範、メーレク》をコントロールしていて、あなたライブラリーの一番上にあるカードが《切り落とし》というインスタントの出来事を持つ当事者・クリーチャーカードである《巨人落とし》だった場合あなたは《切り落とし》を唱えることはできるが《巨人落とし》を唱えることはできない。あなたコントロールしているカードが《イゼットの模範、メーレク》でなく《ガラクの大軍》でライブラリーの一番上のカードが《巨人落とし》だった場合あなたは《巨人落とし》を唱えることはできるが《切り落とし》を唱えることはできない。
715. 当事者カード

715.1. 「当事者/adventurer」カードは、文章欄中に小さな枠のある、2組のカード枠を持つ。

715.3. プレイヤーは、自分が当事者カード唱えるに際して、そのカードを通常通り唱えるか出来事として唱えるかを選ぶ。

715.3a 当事者カードを出来事として唱え場合、それを唱えられるかどうかは代替の特性だけが評価される。

715.3b 出来事としてスタック上にある間、その呪文はその代替の特性だけを持つ。

715.4. スタック以外のいずれかの領域である間、また出来事でない状態でスタックにある間、当事者カードはその通常の特性だけを持つ。

https://mjmj.info/data/obsolete/CompRules/JPN_CR_20191004_1.html

601.3e
 分割カードと変異について、どの特性を持つのかを見る場合に異なるルールが存在していました。出来事が、これらのルールを再検討する機会になりました。これは変異には変更ではありませんが、分割カードでは参照する特性が変わる状況があります。特定のマナ・コストや色を持つ呪文を唱えてよいという場合、唱えようとする半分だけを見るようになります。《カーリ・ゼヴの巧技》で、《唯々》を唱えることができます(が、《諾々》は唱えられません)。

 とはいえ興奮しすぎないでください、続唱は点数で見たマナ・コストによってカードを探し、それからその見つけたカードを唱えるというものなので、《断片無き工作員》の続唱で《唯々 // 諾々》を唱えることはできません。《唯々 // 諾々》の点数で見たマナ・コストは8で、8は3よりも大きいので、続唱の範囲外です。

『エルドレインの王権』更新速報(総合ルール更新、オラクル更新)

601.3eが制定され、カードを唱えられるかという条件に対して代替の特性に置き換えて判断しても良いということになりました。
《カーリ・ゼヴの匠技》で《唯々//諾々》の唯々は唱えられるようになった、という事ですが、巧技サイクルは後述のオラクル変更前は下記のテキストでした。

「手札から~のカード1枚を唱えてもよい。」で唯々を唱える事が可能になったということで、手札で特性を変化させて参照するという事が分かります。

テーロス還魂記:授与のルール変更

2020年1月、テーロス還魂記発売に際してのルール更新で、601.3に少し追記され、授与のルールが変更されました。

601.3e ルールや効果が、カードカードコピー唱えるのが適正かどうかを判断するのに代替の特性群あるいは特性群の一部だけを参照することがある。その判断のためには、代替の特性でそのオブジェクト特性を置き換える。そのオブジェクトがそれらの特性を持つようになった場合に適用される継続的効果も考慮される。

702.102. 授与/Bestow

702.102a 授与は、それを持つカードプレイできるあらゆる領域にある間に働く常在型能力を表す。「授与[コスト]/Bestow [cost]」は、「あなたがこの呪文唱えるに際し、あなたはこれを授与された状態で唱えることを選んでもよい。そうしたなら、あなたはこれのマナ・コストではなく[コスト]を支払う。」を意味する。授与 能力を使って呪文唱えることは、rule 601.2b および rule 601.2f-h の代替コスト支払いに関するルールに従う。

702.102b 授与された状態で唱えられた呪文スタックに置かれるに際し、それはオーラエンチャントになり、エンチャント(クリーチャー)を得る。それは授与されたオーラ呪文であり、それが解決されてなるパーマネント授与されたオーラである。これらの効果は、その呪文パーマネント授与されていない状態になる(rule 702.102d-f 参照)まで残る。その呪文オーラ呪文なので、それのコントローラーエンチャント(クリーチャー)能力rule 601.2c によって定義されるその呪文の適正な対象を選ばなければならない。rule 303.4 参照。

702.102c 呪文授与された状態で唱えるとき、授与 能力によって変更された特性だけを参照してそれを唱えられるかどうかを決定する。

例:《上天の嵐》は「クリーチャー呪文唱えられない」という能力を持つエンチャントである。この効果は、授与を持つクリーチャーカード授与された状態で唱えられることを妨げない。

例:《ガラクの大軍》は、「あなたライブラリーの一番上のカードクリーチャーカードである場合あなたはそれを唱えてもよい。」という能力を持つ。自分が《ガラクの大軍》を出していてライブラリーの一番上が授与を持つクリーチャーカードだった場合、そのカードクリーチャー呪文として唱えることはできるが、授与された状態で唱えることはできない。

https://mjmj.info/data/obsolete/CompRules/JPN_CR_20200122_0.html

601.3e
 前のセットで、呪文を唱えるのが適正かどうかを判定するための「他のこれらの特性だけを考慮する」ルールの働き方に関して明確化するためにこのルールを追加しました。オブジェクトは適正さを見るときにその特性を見る、というのはつまり、それらの特性を持つオブジェクトに影響を及ぼす継続的効果は検討の一部として適用されるということです。個々の詳細を理解することができなかった人々が多かったので、ルールをわかりやすくするべきだと判断しました。これは機能変化ではなく、単なる明確化です。

702.102
 ここでこれが変更になりました! 当事者カードを扱っていて、分割カードや変異カードと似ているそれらを検証し、それらすべてを同種に扱うことに問題はないと考えました。授与カードは脇に置かれていましたが、そのカードをオーラとして唱えることが適正かどうかを決定する方法については同じにすべきだと考えました。そうなりました! 呪文の特性を変更する唱えている間の選択をどう扱うかという既存のルールがほとんどの相互作用をこれまで通りに働かせるので、これは非常に稀な状況においてのみ機能変化になります。

『テーロス還魂記』更新速報(総合ルール更新、オラクル更新)

授与のルールは当事者カードと同じになりました。これによって、「唱えている間の特性の変化」は連繋による文章変更か、Xの値によるマナ総量の変化だけになったため、601.3bは現状、架空の状況について述べているだけのルールとなりました。

601.3b 効果によって特定の性質を持つ呪文を瞬速を持つかのように 唱えることが認められている場合、そのプレイヤーは、その呪文の性質を変えうるような選択をその呪文を提示している間にすることを考えてもよい。それらの選択によって、その効果が適用されるようになるなら、そのプレイヤーはそれが瞬速を持つかのようにその呪文を唱え始めてもよい。
例:オーラ・呪文を瞬速を持つかのように 唱えてもよいという効果があり、手札に授与を持つクリーチャー・カードがある場合、授与 呪文の代替コストを選ぶことでその呪文はオーラ・呪文 になるので、瞬速を持つかのようにその呪文を唱え始めることは適正である。

https://mjmj.info/data/docs/JPN_CR_20230901_0.html

最新版でも授与のルールが古いまま載っているのはご愛敬です。

イコリア:巨獣の棲処:何でも唱える

2020年4月、イコリア:巨獣の棲処発売に伴うオラクル更新で、今まで「カードを唱える」と書かれていたカードがすべて「呪文を唱える」に変更されました。

 『エルドレインの王権』の当事者カードのメカニズムは、ルールの裏付けを持って文章的にごまかしてきたものに光を当てました。《ガラクの大軍》で「あなたのライブラリーの一番上のカードがクリーチャー・カードであるなら、あなたはそれを唱えてもよい。」と言っていたが、実際はそうではありません。変異で唱えるなら、アーティファクト・カードや土地・カードを唱えることができます。インスタントやソーサリーとして唱えるなら、当事者カードを唱えることはできません。実際に意味しているのは、「あなたはあなたのライブラリーの一番上のカードを、クリーチャー・呪文として唱えるなら唱えてもよい。」です。同様に、《ムル・ダヤの巫女》は、変異で唱えられる土地・カードでなくても、あなたのライブラリーの一番上から土地をプレイできます。

 授与に関するルールが『テーロス還魂記』で更新されたとき、呪文を見ているかカードにさまざまな修正付きで見ているかによる違いが生じる最後の境界状況が取り除かれました。その差がなくなったので、もっと誠実でわかりやすい表記に改めることにしました。これは既存のルールの相互作用を変更するものではありませんが、今まで気付いていなかったことに気付くようになるかもしれません。

『イコリア:巨獣の棲処』更新速報(総合ルール更新、オラクル更新)

これまで見てきた方には分かるように、これはスタック上のでの特性を参照するようになったわけではなく、スタックに移動させる=唱え始めるためにはインスタントやソーサリーの特性を持った状態で無ければならないという事を示しています。

結論

別の特性を持つカードは、スタックに置かれる前に呪文として唱えることが適正かの判断が行われる。そのオブジェクトがそれらの特性を持つようになった場合に適用される継続的効果も考慮される、という事は、常在型能力からの継続的効果が適用されるか否かが変化する事もあるという事である。
これらは当事者カードが登場した時点でルールとして整備されており、溺神の信奉者、リーアと当事者カードとの相互作用は未解決問題でもこのカードだけの例外でもなく、ルール上適正である。

ちなみにこの種の相互作用は溺神の信奉者、リーアが初めてではなく、エルドレインの王権発売前、モダンホライゾンの《レンと六番》の「あなたの墓地にありインスタントやソーサリーであるカードは回顧を持つ」とも同じ相互作用を持ちます。

また、《至高の者、ニヴ=ミゼット》の能力により、《火//氷》のどちらかはは再活で唱えることは出来ないが、《唯々//諾々》のどちらかは唱えることができるという問題も、同様の考え方で整理できます。

墓地の《火//氷》は再活を持っていますが、いざ唱える際に代替の特性とそこに適用される継続的効果を考慮した場合、《火》も《氷》も単色になるため、《至高の者、ニブ=ミゼット》の能力による継続的効果の適用外です。《唯々//諾々》の場合は逆になります。

以上、「呪文を唱える」というルールの歴史と相互作用の確認となります。お読みいただきありがとうございました。

お気持ち

長々と説明し断定しましたが、ぶっちゃけスタッフからの発言やMTGアリーナでの実装など「出来る」という結論から逆算しなければ自分では思いつけませんでした。特に授与の古いルールが残ったままな事や「代替の特性」がルール用語ではなく何に当てはまるのか良く分からないことは私を苦しめました。またこの問題が「変なルール」として扱われたままなのは、WotCがはっきり声明を出さないことも原因だと思います。
この問題が話題に上ったのは、イニストラード:真夜中の狩りでリーアが登場してからしばらくたってからのことです。

For Lier, it’s rule 601.3e, which says that for purposes of determining whether the card can be cast, look only at the Adventure characteristics. That makes it an ins/sor with flashback, and you’re good to go. Wait, one more tweet…
(リーアの場合、ルール601.3eで、そのカードが唱えられるかどうかを判断するために、出来事の特性だけを見る、とある。これでフラッシュバックを持つインスタント/ソーサリーになり、問題ない。待って、もう1ツイート...)
That said, that type of interaction is currently under review. Seems like Kess was made to allow Adventures, but maybe not for Lier. So we’re talking about it. #WotCstaff
(とはいえ、その種の相互作用は現在検討中だ。反体制魔道士、ケスは出来事のために作られたようだが、リーアはそのためではないかもしれない。だから話し合っているんだ。)

https://twitter.com/WotC_Matt/status/1449474160254615553

Matt Tabak氏はルールマネージャーを務められた事もある開発部メンバーです。また、当時はMTGアリーナのヒストリックでリーアと当事者カードが同居していたにも関わらず、出来事で唱える事は不可能でした。これにより、多くの人が未解決なルールの問題という認識を持ってしまったのではないでしょうか。実際は1ポスト目で言っているようにルールは適正で、意図していない相互作用というだけだったのでしょうが。結局この後Matt氏やWotCから特に声明が出ることもなく、半年後にひっそりとバグ修正としてアリーナでも出来事フラッシュバックができるようになりました。
至高の者、ニヴ=ミゼットと分割カードの相互作用に関しても、リリース・ノートに載せても良さそうなものですが記載されなかったため、混乱の原因になったのでは無いかと思います。
メルヴィンの駄文失礼致しました。

2024/01/02・・・エルドレインの王権の項の説明を補足しました。ドクター・フーで《過去へ帰還せよ》が追加されたりしたのでお気持ちを変更しました。

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