【EDH・統率者】《アテナイの教師、ソクラテス》の可能性【MTG】

 悪用できない見た目通りの性能をどうするかという話。
 《アテナイの教師、ソクラテス》というカードがASSASSIN'S CREEDとのコラボセットで発表された。

実在する歴史上の人物

 ASSASSIN'S CREEDはプレイしたことがないのだが、史実の人物を扱うゲームのようで、そこから実在したソクラテスがカードとしてデザインされている。まさかイジンデンでもないのに、歴史上の人物の名を冠するカードを買うかどうかを迷う時代が来るとは思わなかった(イジンデンにソクラテスはまだいないっぽいけど)。
 さてそのソクラテスの能力を見ていくと、防衛と、アンタップ状態である限り呪禁を持っている。この辺りは当時としては保守的とされる(らしい)思想を表現しているのだろうか。加えて、(実在の)ソクラテスの特徴である、対話をモチーフとした能力を持ち、これが《アテナイの教師、ソクラテス》としてのメインだと言える。
 この能力、クリーチャー1体を対象とし、それが与える戦闘ダメージを軽減し、そのクリーチャーのコントローラとダメージを与えられるはずだったプレイヤーが軽減されたダメージを半分(切り捨て)に等しい枚数のカードを引く。
 ダメージ軽減に関して「次に与える~」という書き方ではなく、「戦闘ダメージを与えるなら」となっているので(能力の対象にしたターン中であれば)二段攻撃や追加戦闘などに対応している点は偉い。
 ただ、カードを引くプレイヤーがあなた(つまり自分)ではなく、いわゆる防御プレイヤーになっているため、自分が殴られているなら殴ってきたクリーチャーのコントローラーと自分が引き、自分が攻撃しているなら自分と攻撃先のプレイヤーが引くという挙動なので、基本的に悪用ができない。
 ソクラテス的対話という名前の通り、対話を持ってお互いの知識を深めるというフレーバーなのだろう。論破してくれ。
 一応、《覆いを割く者、ナーセット》のようなドローを禁止する常在型能力や《オークの弓使い》のようなドローに反応する常在型能力があればただ引かせるに終わることはないが、そう言ったドロー反応系カードはそもそも単体で強いのでわざわざ《アテナイの教師、ソクラテス》と組み合わせずとももっと良いカードが存在する。
 また、引く枚数も戦闘ダメージの半分(切り捨て)なので5点を軽減してようやく2ドローと言った具合だ。ダメージも受けないし、起動コストもソクラテス本人のタップだけと軽いので致し方ないところか。
 基本的には多人数戦で誰かと協力してドローしようねと言った具合のカードで、どうにか悪用できないか……と考えていたところ、大雑把に言って攻撃プレイヤーと防御プレイヤーがカードを引くという挙動であることに気づく。
 それはつまり、多人数戦であるEDHの場合、勝手に他人の戦闘に割り込んで戦闘結果を滅茶苦茶にした挙句、両者にドローをさせることができるということだ。《アテナイの教師、ソクラテス》の能力はプレイヤーに戦闘ダメージを与えることで機能する能力なのでブロックしてしまうと意味がないが、防御プレイヤーに交渉すればそのクリーチャーをブロックすることはないだろう。攻撃プレイヤー側もドローできるならソクラテスに干渉してくる可能性は低い。
 この戦闘結果をコントロールできる挙動こそが、《アテナイの教師、ソクラテス》の真価なのではないだろうか。勝手に他人同士を対話させる自称ソクラテス。
 また、ピンポイントな話をすると、能力の対象にしたクリーチャーのコントローラーと防御プレイヤーがカードを引くので、《雇われの剛力、スライサー》のような勝手に各プレイヤー間を飛び回るクリーチャーを《アテナイの教師、ソクラテス》の能力の対象にすることで無力化することができる。特にスライサーが誰かの統率者であったなら、統率者ダメージを受けることなくドローもできるという優秀な対策カードと化す。スライサーのオーナー以外に攻撃されたときに能力を起動すればスライサーを除去するためのカードを(その時点でスライサーをコントロールしている)対戦相手に引いてきてもらうこともできるぞ!
 とはいえ、《アテナイの教師、ソクラテス》はそれを主軸にして戦うにはやや辛い性能をしている。アンタップ状態であるかぎり呪禁を持っているため除去には強いのだが、0/4というパワーのなさに加えて防衛を持っているので、打点としては一切期待できない。更にはタップ能力ということもあり、1ターンに1回しか起動できないため、大きな1体の打点には強いものの、小さな複数体の打点に弱い。
 また、ソクラテス的対話の能力をうまく使うには結構な政治力や判断力が求められるだろう。相手の高打点をいなしてドローしたは良いものの、コンボパーツを引かれて戦闘後メインで負けましたでは悲しい。
 ともあれ、特定の二者をドローさせるという能力と戦闘ダメージを軽減する能力の複合は珍しいものであることには違いないので、政治力に自身がある方は《アテナイの教師、ソクラテス》を使ってみてはいかがだろうか。

 ちなみに白青緑を含む防衛持ちのクリーチャーと言えば《策略の龍、アルカデス》に採用できるのが常であるが、個人的には《アテナイの教師、ソクラテス》の3マナ0/4は重い上に打点として小さく、アルカデス自身がドローできるので入れない方が良いとまではいわないが入れ得というほどでもないということを記しておく。

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