【EDH・統率者】《包囲の塔、ドラン》と《夜明けの司祭》【MTG】

 役割を埋めるという点では優秀だけどオリカというにはパワーの足りないカードの話。
 《包囲の塔、ドラン》を統率者に据えたデッキを作っていて、ループ・ジャンクションのコンボと相性が良いのでは? と以前教えてもらってから、ずっと搭載している。
 このコンボの中核をなすカードの中に《ダールの降霊者》というクリーチャーがいる。

 ループ・ジャンクションは《ダールの降霊者》のように呪文や能力の対象になるとタフネスが上昇するクリーチャーを、0マナで起動できる能力や0マナで装備できる装備品で対象に取って無限にタフネスを上昇させるという動きが核だ。
 この無限に上昇するタフネスを《価値ある理由》などの生け贄にしたクリーチャーのタフネス分ライフを回復するカードでサクッて莫大な量のライフを確保するのがループ・ジャンクションというデッキのコンボである。
 この無限タフネスコンボ、《包囲の塔、ドラン》を統率者にしていると、タフネスで戦闘ダメージを与えられるようになるため、生け贄にせずとも、上昇したタフネスを打点に変換でき、1人を殴り倒せる。

 しかし統率者戦は4人対戦のため、1人を殴り倒したところで他2人からのヘイトが上がって勝てないことも多い。
 そして3マナと軽いとはいえ、《包囲の塔、ドラン》を戦場に出していなければならない都合上、順番次第では対戦相手もクリーチャーを戦場に出していて、攻撃がブロックされて通らないこともある。
 回避能力を持たせる方法もデッキに搭載してはいるが、結局のところ殴り倒すのは1人が限界であるという事実は変わらない。
 ただ、《ダールの降霊者》の能力はその例外である。
 《ダールの降霊者》以外のタフネス上昇役は自身が呪文や能力の対象になったときにタフネスが上昇するが、《ダールの降霊者》のみ、自軍のクレリックが対象になったとき、そのクリーチャーのタフネスを上昇させる。
 《ダールの降霊者》自体がクレリックのため、当然自分自身でも誘発するが、それ以外のクレリックを対象にしても誘発してくれるのだ。つまり、《ダールの降霊者》以外にクレリックを2体用意すれば3人殴り倒せる。
 ただ、元のループ・ジャンクションのコンボがカードを3枚(タフネス上昇役・無限対象役・無限タフネス活用役)必要としていたのに、更にクリーチャーを2体用意するというのはあまりにも現実的ではない。5枚使ってブロッカーが立っていれば不成立の殴りコンボは少々無茶が過ぎる。
 どうにかもう少し数を減らせないだろうかと考えていたところ、《ヴィズコーパのギルド魔道士》を見つけた。

 3マナでクリーチャー1体に絆魂を持たせる能力と、3マナでこのターン自分がライフを得るたび各対戦相手が同量のライフを失う能力を持っている。
 《包囲の塔、ドラン》が立っている状態で、このカードで無限にタフネスが上昇したクリーチャーに絆魂を持たせ、得たライフ分、ライフを失わせる能力を起動すれば、ブロックされようがされまいが無限に上昇したタフネス分のライフを得て対戦相手全員を倒すことができる。ループ・ジャンクションのコンボに1枚加えただけで全員をほぼ確実に倒せるのだ。
 更に言えば《包囲の塔、ドラン》ではなく《価値ある理由》のようなサクッてタフネス分のライフを得るカードを使うなら戦闘する必要もない。
 どちらにせよパーツが揃えば対戦相手が倒せるというコンボの発見に満足感を覚えていた。
 しかし、何度か回してみるとクリーチャーで殴るプランの安定性が欠けていることに気づく。

 クリーチャーで殴る場合、《ヴィズコーパのギルド魔道士》の能力は1つ目と2つ目の両方を起動する必要がある。合計して6マナだ。
 統率者たる《包囲の塔、ドラン》、殴りに行くためにあらかじめ戦場に出ていなければならないタフネス上昇役のマナ・コストは勘案しないとしても、無限に対象に取る役と《ヴィズコーパのギルド魔道士》はコンボを警戒させないために手札に抱えておきたい。
 そうなると無限に対象に取る役は最低1マナ、《ヴィズコーパのギルド魔道士》は2マナだが、そこに各種起動型能力の6マナを合わせて9マナとなる。9マナも払うのは結構厳しい。しかも《ヴィズコーパのギルド魔道士》本体のマナ・コストと2つの起動型能力には色マナが含まれるため、《ヴィズコーパのギルド魔道士》に関連したコストだけでも、支払うコストは合計で(2)(W)(W)(W)(B)(B)(B)になる。3色デッキでダブル・トリプルシンボルはそれなりに捻出に苦労することが多い。
 かといって無限対象役と《ヴィズコーパのギルド魔道士》をあらかじめ出しておくと怪しまれるし、《ヴィズコーパのギルド魔道士》がいなくとも無限タフネスが成立してしまっているので、気づかれればただでは済まないだろう。

 何か、殴りプランを補助できるものが必要だと感じた。
 翻って、殴らない通常の(ループ・ジャンクションの)プランのほうを見ていると、戦闘を介さずサクッてライフを得るため、構造がシンプルなことに気づく(だからこそループ・ジャンクションという形になったわけだが)。
 タフネス上昇役・無限対象役・ライフ回復役という3点が揃った時点で大量にライフを得られ、そこに《ヴィズコーパのギルド魔道士》の2つ目の能力を加えるだけなので、奇襲性が高い。なんなら無限にライフを得たらあとから《霊気貯蔵器》でも引っ張ってきて50点ビームを撃てば良いので《ヴィズコーパのギルド魔道士》すら必要ではない。
 ライフ回復役もインスタントであったり、土地であったりと干渉されにくいものが多いので安定している。
 更に《ヴィズコーパのギルド魔道士》の1つ目の能力の起動を必要としないため、殴りプランと比較して単純に3マナ軽い。
 しかしこの動きを主軸にしてしまうとそれはもう《包囲の塔、ドラン》でなくとも成立する動きなのでどうにか殴りプランも成立させたかった。
 殴りプランとそうでない通常のプランを比較したとき、ネックになるのは《ヴィズコーパのギルド魔道士》の1つ目の能力の起動の有無だ。
 この3マナのギャップをどうにか埋められれば殴りプランも現実的になるのではないか? と考えた。

 そこで再び注目したのが《ダールの降霊者》の能力だった。
 自軍のクレリックが対象になるたびに誘発するのなら、絆魂を持っているクレリックをあらかじめ戦場に出しておけば《ヴィズコーパのギルド魔道士》の1つ目の能力を起動する手間が省ける。
 《包囲の塔、ドラン》のデッキに入れて怪しまれないためにパワーよりタフネスの方が高いクリーチャーで、3マナのギャップを埋めるためにできればマナ・コストも2マナ以下が良い。
 その条件で検索したところ、見つかったのが今日の主役、《夜明けの司祭》である。

ようやく登場

 1マナ以下のクリーチャーは1/1と、あからさまに何かのコンボに使うのだと察せられてしまう正方(P/Tの左右の数値が同じ)のクリーチャーばかりで、3マナ以上になると結局《ヴィズコーパのギルド魔道士》の1つ目の能力を起動しているのと大差がなくなってしまう(先に出しておけるという違いはあるが)。
 2マナ以下でパワーよりタフネスの方が高く、《包囲の塔、ドラン》の固有色のクレリックはこの《夜明けの司祭》しか存在しなかった。
 ……う~ん、フレンチ・バニラ(能力を持たないことを意味するバニラ・クリーチャーほどではないが、簡単なキーワード能力1つしか持っていないクリーチャーのこと)かぁ。
 確かに条件は満たしているのだが、実際に見てみるとカード・パワーが足りないのではないかという不安が拭えない。
 《包囲の塔、ドラン》に入れるカードとして何もおかしくはないので戦場に立っていても怪しまれず、隙あらばタフネスで殴って3点ライフ回復できる上にコンボ・パーツにもなると考えるとけっして弱いわけではないのだが、優秀というにはやや語弊がある。あまりにもシンプルなカード・デザイン故だろうが、どうにも頼りになる感じがしないというのが第一印象だった。

 その印象が拭えず、代替手段を模索して思いついたのが、クリーチャーの多相化である。
 自分のクリーチャーに多相(すべてのクリーチャー・タイプを持つ)を持たせれば全員クレリックなのだから絆魂を持つ低パワー高タフネスのクリーチャーで代替できるのではないかと考えたのだ。幸い、その時点のデッキには低パワー高タフネスで絆魂を持つクリーチャーを何体か採用していた。
 しかしこの方向性は結局3マナのギャップを埋めるにいたらなかった。クリーチャーに恒久的に多相を持たせる(あるいはクレリックにする)カードは大抵4マナ以上で、最も軽いと思われる《ルーン刻みの鍾乳石》も合計コストは3マナだった(無色である分、ギャップは多少埋まっているが)。

 しまいには《鏡の精体》の採用まで考えたが、そこまでして無理に多相にすることもないと理性が語り掛けてきたので素直に従った。

正方にするなら《包囲の塔、ドラン》である意味はない

 そもそも無限タフネスからの殴りプランを成立させたいためだけに多相にするカードを採用するのは、《包囲の塔、ドラン》というデッキのコンセプトを歪めかねない。結局、フレンチ・バニラである《夜明けの司祭》を採用した方がデッキを変に歪めないのだ。
 ただこの多相化というギミックの発想自体は悪くないと思っており、《ツリーフォークの先触れ》からサーチ可能な《ヴェリズ・ヴェルの盾》は2枚目の《夜明けの司祭》(のようなコンボ・パーツ)になる可能性を感じている。

多相を持っているのでクリーチャー・タイプ指定のサーチで持ってこれる

 ここまで長々と書いてきたが、《夜明けの司祭》は現状、ループ・ジャンクションを介したコンボのうち、殴りプランを補助するものとして適役だ。
 《ダールの降霊者》に加えて更に必要なカードが1枚増えているが、通常のプランとの3マナのギャップを埋めるのに適した適度な性能のクリーチャーで、先出ししても怪しまれず、コンボが揃っていない状態でも戦闘に参加するだけで最低限の働きはしてくれる。
 この、コンボ・パーツでもあるがそれ以外の働きもできるというのは枠が限られている統率者というフォーマットでは大事なことだ。
 それに極論、世の中の99%以上のPWは《包囲の塔、ドラン》に入るクリーチャーの精査などしたことがないはずなので、《夜明けの司祭》を見たところで「そんなフレンチ・バニラを入れなきゃいけないデッキなんだな……」と思うのが大半で、コンボ・パーツでもあることなど思いもしないだろう。その隙を突き、コンボを決めてやるのだ。
 もっとも、コンボが決まることは少なく、大抵は《金屑ワームの鎧》を装備して大型絆魂クリーチャーとして活躍しているが……。

《夜明けの司祭》が1/9になる

 ともあれ、《夜明けの司祭》は自分が今握っている《包囲の塔、ドラン》デッキの足りない部分を補ってくれている。
 このように都合の良いカードをオリカ(オリジナル・カード)と呼ぶ風潮もあり、オリカと呼んでも良いのかもしれないが、それにしては《夜明けの司祭》はシンプル過ぎる気がして、どうにも呼べない。
 いつか《夜明けの司祭》よりも能力を盛った2マナ以下で低パワー高タフネスのクリーチャーが来てくれればそれがオリカとなるので、いつかそう呼べるカードが来ることを祈りたい。
 あるいは、これから先、コンボを決めるたびに信用が上がっていって、《夜明けの司祭》がオリカと呼ばれる日が来るかもしれないが。

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