【MTG】《肥えた緑甲羅》の可能性

 《肥えた緑甲羅》というカードがある。

パワーをタフネスに詰め込んでくれませんか

 ブルームバロウで現れたカードで、5マナ4/6到達の海亀である。
 土地を10個以上コントロールしている限り自分のクリーチャーに+2/+2修正を与える能力と、自身やタフネスがパワーよりも大きいクリーチャーを戦場に出すたび、ライブラリー・トップを見て、土地ならタップインし、そうでないなら手札に加える能力を持つ。
 パワーよりタフネスの方が高いクリーチャーをいっぱい出して土地もいっぱい出して全体強化して勝とうね、というデッキの方向性を決めるタイプのレアである。
 ライブラリー・トップを見て土地なら出し、それ以外なら手札に加えるという能力は《とぐろ巻きの巫女》辺りから《有翼の叡智、ナドゥ》まで青緑の能力という印象だったが、緑単色で持っているのが珍しい。誘発条件が低パワー高タフネスのクリーチャーを戦場に出すことなのでクリーチャー由来のドローならセーフということだろうか。
 このタフネスの方が高いという誘発条件から、「パワーではなくタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振る」メカニズム、通称、重厚/Backbone向けのカードか!? と一瞬思ったものの、P/Tが4/6であることから別にそんなことはなく、1/2とか2/3でパワーが上がるクリーチャーを入れてどうこうする普通のデッキに入るべきカードとしてデザインされていることが窺える。
 もちろん、スタンダードの重厚デッキで使えなくもないが、スタン落ち後の(もしかしたらスタン落ち前の現在も)主要な重厚デッキはおそらく《侵入者の放逐》で対戦相手の盤面を一方的に吹き飛ばすタイプのデッキであろうことが想定されるので、パワーの高い《肥えた緑甲羅》との相性が悪い。

パワー4の亀を生かそうとすると大抵のクリーチャーが生き残ってしまう

 EDHや下環境でも大体やることは同じなので、5マナという重さも相まって、採用の余地は少ないと思われる。
 5マナで2/7とか、0/10だったらなぁと思いつつも、《肥えた緑甲羅》が非常に興味深いデザインをしていることも確かだ。
 1つは先述の通り、パワーよりもタフネスの方が高いクリーチャーを戦場に出すことで誘発する能力を持っていること。このような誘発条件をデザインしたということは、低パワー高タフネスのカードの存在を意識しているということだ(重厚デッキを意識しているかは非常に怪しいが……)。
 この手の誘発条件が《肥えた緑甲羅》をはじめとして増えてくれれば、その中にはいずれ重厚デッキと相性の良いカードが現れるかもしれない。
 もう1つが、海亀であるということだ。
 1マナ0/5の《神盾の海亀》、4マナ0/6でクリーチャーを重厚にする《床岩の亀》など、重厚デッキに採用されうる低パワー高タフネスのクリーチャーは最近、海亀になりつつある。

こいつの存在は意識されてそう(希望的観測)

 この流れを汲んで《肥えた緑甲羅》がデザインされていると仮定すると、一応、これも低パワー高タフネスデッキ向けのカードということになる。
 このまま重厚デッキ向けのクリーチャーと言えば海亀という風潮になってくれれば、《魂の洞窟》のようなカードが多少は使いやすくなりそうなので、《肥えた緑甲羅》が海亀なのは評価できる点かもしれない(1マナのビーストと2マナの人間・ならず者と4マナのリバイアサン・カニが強すぎるからそこまで海亀に染められるかは怪しいけど)。
 そして確かに、重厚デッキはクリーチャーを重厚にするカードが引けないとパワー0のクリーチャーを出すだけのデッキになりがちだ。
 その点、《肥えた緑甲羅》のリソースを増やす能力と、全体修整は、クリーチャーを出さなくてはならないが重厚にする置物も引かなくてはならないという、重厚デッキの弱点を埋めていると言えなくもない。
 パワーが4と重厚デッキに採用するには高すぎるのも、5マナという重さから単体で勝つことのできるフィニッシャーと考えると理解できなくはないデザインである(そもそも5マナが重いとか、重厚にする能力さえあればパワー4もいらないとか、突っ込みどころはあるが)。
 スタン落ち後に想定される主要な重厚デッキは白緑で、全体的に打点が小さい。もしかしたら、《肥えた緑甲羅》はその点を埋める存在になるかもしれない。
 事前にカードが公開された時点で色々文句を言っていても、いざ使ってみたら思ったより良かった、ということは今まで散々繰り返したので、《肥えた緑甲羅》もその類の可能性がある。
 ローテーションが起こる以上、どんな変化が起こるかわからないのがスタンダードなので、《肥えた緑甲羅》が良い変化をもたらしてくれることを祈り、ブルームバロウが訪れるのを楽しみにしたい。

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