【MTG】重厚デッキと《不屈の古樹》

 入れるべきか入れざるべきかで言うと、だいぶ入れざるべきカードの話。
 《不屈の古樹》というカードがある。

 4マナ2/10の能力を持たない、いわゆるバニラ・クリーチャーである。
 まだ神話レアのない時代にレアとして収録されており、正気を疑いたくなるのだが、同じローウィン・ブロック(ローウィン、モーニングタイドの2セットからなる塊をブロックという)に《包囲の塔、ドラン》がいたため、アンコモン以下にしてしまうとリミテッドが壊れる可能性を考慮したのだろう(そもそもタフネスの高すぎるカードはリミテッドを膠着させるという理由でサイズを小さくされたり収録されなかったりしがちだが)。

 この《包囲の塔、ドラン》のパワーではなくタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振るという能力は後にメカニズム化され、何故かDCGであるMTGArenaでだけ重厚/Backboneという名称がついている。
 この重厚の影響下にあるクリーチャーはパワーではなくタフネスで戦闘ダメージを与えるようになるため、2/10である《不屈の古樹》は実質10/10として振舞う。4マナ10/10ということは、5マナ10/10である《ギガントサウルス》よりも1マナ軽いということだ。一見すると強そうに見える。

 しかし、《不屈の古樹》が現在使用可能なフォーマットはモダン以下のため、4マナでバニラの10/10がさほど強い環境ではない。4マナで実質10/10というサイズそのものは魅力的だが、2人対戦で使用するには力不足であると言わざるを得ない。
 現在のMTGにおいて、《不屈の古樹》が活躍できる場所と言えば、多人数戦であるEDHが最も可能性が高いだろう。全体的に環境が2人対戦と比較して遅く、単体除去も飛んできにくい。
 ではこの環境で《不屈の古樹》が活躍できるかと言われると、状況による、と言わざるを得ない。
 1枚制限で構築をしなくてはならないEDHでは、カード1枚の価値が大きいため、4マナ実質10/10バニラ以上の働きをしない《不屈の古樹》は評価が分かれる。
 さすがにサイズが大きいため、戦闘面では非常に頼もしく、3人を殴り倒すには、やや悠長とはいえ10点の打点は驚異的である。
 反面、バニラであるため、劣勢時に盤面をひっくり返す能力はなく、トップ・デッキしたときに残念な思いをしがちだ。
 4ターン目に最速で出せたときはそのサイズで戦場を蹂躙してくれるが、終盤には引きたくないというジレンマを《不屈の古樹》は抱えている。
 全体除去が飛び交う卓だったりすると終盤引いても結構嬉しいと思えることもあるが、それはレアケースだろう。
 とはいえ、4マナ実質10/10を戦場に送り込み、その圧倒的な打点を叩きつける体験が楽しいのは確かなものだ。ドロー・ソースを採用する、《ツリーフォークの先触れ》のような限定的なサーチで早期に持ってくる、あるいは、高いタフネスを参照するカードを併用し、終盤に引いても意味があるようにする。《不屈の古樹》の強みを活かしたり、弱味を消す方法はいくつもあるだろう。
 TCGという、デッキのカードを自分で選ぶゲームだからこそ、《不屈の古樹》の価値は自分で決めなくてはならない。
 残念なタイミングで引く印象が強いとはいえ、4マナ2/10というスペックは唯一無二なので、《不屈の古樹》はこれからも採用するだろう。
 そしてもし上位互換が出たとしても、それの2枚目として《不屈の古樹》を採用するかもしれない。それほど、《不屈の古樹》には可能性を感じているのだ。

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