【EDH・統率者】重厚デッキとバニラ・クリーチャー【MTG】

 MTGには「パワーではなくタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振る」メカニズム、通称、重厚/Backboneが存在する。
 この能力の影響下にあるとパワーではなくタフネスで戦闘ダメージを割り振るようになるため、1マナ0/4のクリーチャーが実質4/4として振舞う。

2つ目の能力を起動しなくても実質4/4になる

 MTGには時折、パワーを能力で上昇させるためにタフネスがマナ・コストと比較して妙に大きいクリーチャーが出てくるため、重厚はそのようなクリーチャーと相性が良い。

こういうやつ

 このような大きなタフネスで殴ることの快感を一度でも覚えてしまうと、とにかくタフネスの高いクリーチャーを採用したくなってしまう。
 しかもEDHは100枚のデッキを1枚制限で組むのだから、誰も見たことのないタフネスの高い生物を入れ放題だ。
 特にバニラ(能力を持たない)・クリーチャーはタフネスだけ妙に高い生物が多く、思わず採用したくなってしまう。

4マナ実質7/7

 しかし、それは良いことなのだろうか?
 カードの抜き差し自由なゲームで人の採用カードにケチつけてんじゃねえよ(うろ覚え)、とスターライト・マナバーンの主人公に言われそうだが、タフネスが高いからという理由だけで採用すると悲しいことになるのではないかと個人的に思っている。
 例えば、《鋤引きの雄牛》というカードがある。

 1マナ0/4のクリーチャーなので、重厚の影響下であれば1マナ4/4として働くが、他に能力を持たない。……タフネスが高いからと、入れるほどの強さがあるだろうか?
 2人対戦での1マナ実質4/4は結構な圧力だ。5回殴ればライフを削り切れるし、2枚目も横に並べば8点の打点となる。
 しかし4人対戦のEDHでは各対戦相手のライフは合計120点であり、1人あたりも40点と2人対戦の倍だ。更には重厚デッキが通用するレベル帯では殴り合いが発生する、即ちクリーチャーが戦場に展開されることが多い。
 そのような環境では4/4を超えるクリーチャーが並ぶのも普通で、2人対戦の時にあった迅速に対戦相手のライフを0にできるという優位性も薄れる。
 初手、あるいは1ターン目に引ければ、平均的な重厚デッキでなら3ターン目には殴り始められると思うが、1/99を狙って初手に引ける方法はイカサマ以外存在しない。中盤以降、大型のクリーチャーが並ぶ頃に引いたところで、トークン同然のバニラ・クリーチャーでは1マナとは言えやや頼りない。
 そう、デッキが大体99枚である以上、バニラ・クリーチャーではよほどの高タフネスでない限り力不足なのだ。
 例えば、先に挙げた0/17の《怒り狂う島嶼、キャリクス》などは、フレンチ・バニラと言っても差し支えないほど地味な能力しか持っていないが、重工の影響下であれば実質17/17のクリーチャーである。さすがに4マナで17/17というサイズは驚異的であり、エルドラージにも勝るとも劣らない。そのため、ほぼバニラとはいえ、いつ引いても嬉しいカードだ。
 しかし1マナ0/4の《鋤引きの雄牛》のようなカードでは、中盤以降、引いても嬉しくないことが多い。何かしらの能力を持っていればそれが役に立つことはあるかもしれないが、《鋤引きの雄牛》はバニラ・クリーチャーだ。
 なんなら最初に挙げた割と能力モリモリな《装甲アルマジロ》でさえ、その能力を活かせる構築をしていないならやや力不足だと感じる。
 そもそもEDHは多人数戦であり、大きな打点を作り上げるならともかく、2人対戦のようなクリーチャーを並べてそのままビートダウン、という手段は至難の部類だ。
 特にアグロ戦略はよほど引きが良くない限り成立せず、2人対戦における重厚デッキの動きは限りなくアグロに近い(正確にはコンボ+アグロというアグロの下位互換)ため、EDHと相性が悪い。
 そのため、2人対戦の時には採用できていたバニラ・クリーチャーよりも、アドバンテージを稼げるクリーチャーを採用した方が良いのだ。

2人対戦だと悠長+サイズが小さいけどEDHだと有用

 多人数戦であるEDHは1枚のドローが貴重で、その枠をバニラ・クリーチャーで潰してしまうと、対戦相手3人に大きく水をあけられてしまう。更には大事な場面でバニラ・クリーチャーを引くと、そのカードに対しての殺意というか、敵意も抱いてしまうかもしれない。そのような悲しいことが起こらないためにも、高タフネスのバニラ・クリーチャーを採用する際は、そのカードをいつ引いても後悔しないか? を問いかけるべきだ。
 MTGはどんなカードを採用しても良いゲームだが、デッキに採用できるカードの枚数には限りがある。その貴重な枠をわざわざ能力を持たないバニラ・クリーチャーで埋めるのはややリスキーな行為だ。
 もちろん、重厚デッキを使うからにはタフネスの高いクリーチャーを採用したくなると思うが、それは能力を持っているカードでも十分できることである。
 思い入れのあるカードだとか、明確にシナジーがあるだとか、そういった採用するに値する明確な理由があるならば採用すべきだし、その方が楽しいは当然だ。
 しかし、1マナ実質4/4や4マナ実質7/7になるからという表面上の理由だけでバニラ・クリーチャーを採用すると悲しいことになるかもしれないということだけは覚えておいてほしい。

 ちなみに筆者は大事な場面で《不屈の古樹》を引いてちょっとだけ殺意が湧いたことがあります。

いや弱くはないんだけど引いたタイミングがね……。

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