【EDH・統率者】《転置のビヒモス》と重厚デッキ【MTG】

 オリカというべきか天敵というべきか迷うという話。
 《転置のビヒモス》というカードがある。

 モダンホライゾン3の統率者デッキに収録されている新規カードで、4マナ2/9と低パワー高タフネスのスタッツをしている。
 MTGには「パワーではなくタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振る」メカニズム、通称、重厚/Backboneというものがあり、重厚の影響下において《転置のビヒモス》は実質4マナ9/9という破格のスペックを誇る。
 そして当然ながら《転置のビヒモス》は4マナ2/9のバニラではなく、能力を持っており、戦闘開始時に好きな数のクリーチャーのパワーとタフネスを入れ替えることができる。
 通常であれば、《転置のビヒモス》が殴れる時に9/2になって殴りに行け、ということなのだろうが、先述の通り、重厚を用いればタフネスを2にするリスクを冒さずに済む。
 ではこの能力が重厚デッキでは腐るのかというと、そうでもない。壁・クリーチャーでもない限り、重厚デッキに採用されるクリーチャーはかなりの割合でパワーが1以上ある(バニラよりも能力を持っているクリーチャーを採用した方が勝ちの目が拾いやすいという持論から能力持ちの高タフネスクリーチャーを採用するとこうなりがち)ので、重厚にするカードが戦場になくとも、最悪《転置のビヒモス》によってタフネスを打点に変換することができる。つまり、追加のクリーチャーを重厚にするカードのように扱えるということだ。
 特にこのP/T交換能力は《包囲の塔、ドラン》で威力を発揮する。

 《包囲の塔、ドラン》のクリーチャーを重厚にする能力はコントローラーを問わず、すべてのクリーチャーが影響を受けるため、対戦相手がパワーよりタフネスの高いクリーチャーをコントロールしていても《転置のビヒモス》で弱体化させることができる(大抵は2/3とか4/5とかで誤差レベルだと思うが。個人的な体験から言えば、2/5の《秒刻みのオベカ》を実質5/5にしなくて済む)。あるいは、《包囲の塔、ドラン》同士のミラーマッチでも優位に立てるだろう。宝くじの1等当たるより確率低そう。
 欠点としては出しにくさと、能力の表裏一体さか。
 《転置のビヒモス》は色を持たないカードだが、無色マナシンボルを2つも使うため、無色マナを出せるマナ源が必要だ。《太陽の指輪》は大抵のデッキに入っているだろうが、それ以外の無色マナの生成源は意識して入れないと思ったより入らない。《転置のビヒモス》はフィニッシャーというよりはテンポ良く出せたら強いタイプのカードなので、4マナが出せる時点で無色2マナを確保しようと思うとマナ基盤の取捨選択が難しい。
 特に最も相性が良い《包囲の塔、ドラン》は3色デッキなので、実質4色デッキのようになってしまうだろう。
 能力の表裏一体さに関しては、見ての通りである。パワーとタフネスを入れ替える場合、パワーが0のクリーチャーは入れ替えられると当然、状況起因処理で死亡する。先に挙げた《包囲の塔、ドラン》のP/Tは0/5であり、決して《転置のビヒモス》で対象に取ってはならない。
 つまり《転置のビヒモス》のコントロールを奪われたが最後、自分のパワー0のクリーチャーを虐殺するクリーチャーと化す。
 コントロールを奪われそうであれば出さなければ良いのだが、9/2のクリーチャーとして真面目に運用しようとするプレイヤーの存在は否定できない。エルドラージを統率者に据えているデッキと当たったなら、《転置のビヒモス》の可能性を考慮して除去の打ちどころを考えたい。
 さらに言えば、パワーが0であることが多い壁・クリーチャーを多用する《策略の龍、アルカデス》と《転置のビヒモス》の相性は最悪なので、味方の《転置のビヒモス》は頼もしいが、敵の《転置のビヒモス》は不倶戴天の仇敵である。
 味方であればオリカのように働き、敵であれば天敵のように働く《転置のビヒモス》の評価は難しい。ともあれ、味方として使う分には面白い性能をしているので、非防衛型の重厚デッキを使っているのなら採用してみてはいかがだろうか。

 ちなみにP/Tの入れ替えは他のカード(や+1/+1or-1/-1カウンターなど)による修整よりも後(一番最後)、に行われるため、例えば何らかのカードの能力や効果で+0/+1修整を受けている0/5のクリーチャーのP/Tを入れ替えると、5/1になるのではなく、+0/+1修整を受けた0/6の状態でP/Tが入れ替わり、6/0となって死亡する。
 《転置のビヒモス》を例に取れば、9/2になったあとにパワーへの修正を掛けても遡って2/9の状態にパワーへの修正を掛けてからP/Tの入れ替えが行われた状態になるので注意したい。

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