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水島新司 御大の功績

「ドカベン」や「あぶさん」でお馴染み、野球漫画の神様こと水島新司さん。

今年も野球殿堂候補に選ばれたが、選出にはならなかった。プロ野球ファンとしては非常に悔しい。野球漫画の頂点であり、数々のプロ野球ファンやプロ野球選手、そしてプロ野球を志す子供たちに夢を与え続けた。その功績は本当に大きいのではないだろうか。

あぶさんが107巻、ドカベンはシリーズ累計205巻で幕を閉じた。100巻超え作品を2つも世に送り出す漫画家は未来永劫出てこないのではないだろうか。恐らくアンタッチャブルレコードであろう。

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何と言っても漫画を通してあれだけ野球、そしてパシフィックリーグを広めた人は他にいない。圧倒的人気を誇った高校野球漫画のキャラクターたちを、当時人気のなかったパシフィックリーグに入団させたのだ。

1994年のドラフト会議。10球団から指名が入った山田太郎。それを差し置いて王監督と長嶋監督が惚れ込んだ岩鬼正美。野球引退を表明していた殿馬を6位で指名した仰木マジック。あえて絶対的正捕手の伊東勤がいる西武に山田太郎を入団させてファンの心を揺らした。山田清原のクリーンナップやイチロー殿馬の1,2番コンビも実現。王監督と岩鬼の絡みや、日ハム不知火ロッテ里中の人気争い。

このバランス感も最高に絶妙である。
漫画を通じてたくさんのパリーグの選手やコーチに光を照らしてくれた。

95年のオールスター(プロ野球編3~5巻)は非常に興奮した。あのドカベンのキャラたちがプロのリアルなユニフォームを着て、高校時代に神奈川県大会で死闘を行った横浜スタジアムのダイヤモンドを守っているのである。

9回裏、マウンドにはロッテ里中、キャッチャーは西武山田、セカンドにはオリックスの殿馬、サードにはダイエーの岩鬼。ライトにはイチロー、センターには秋山、そしてファーストには清原がいる。対するセリーグはヤクルトの古田や飯田、広島の野村謙二郎、そして中日立浪に代打で巨人の落合、そして松井秀喜。

まさに夢だ。現実のスターと漫画の中のスターの競演が実現しているのである。それ以来長きにわたって「あぶさん」と「ドカベン」をプロ野球界に映し出してくれた。

プロ野球選手の「肖像権」が問題とされるようになった平成時代。1995年にはプロ野球電波肖像権委員会が、漫画からも肖像権料を徴収すると決定。以来、漫画に実在の選手を出すと、年間数十万円を払わなければならなくなった。

この時、水島新司さん「だけ」は、プロ野球の人気アップに長年貢献してきたという功績から、肖像権料を免除された。しかし、それも「2年間の猶予」という条件付き。猶予期間が切れた97年からは、水島さんも、お金をとられる対象となったそうだ。

ちなみに、当時のスポーツ紙の記事では、生前の「ドカベン」香川伸行さんが、こうコメントしている。「水島先生に承認料を? そりゃないでしょう。逆に機構側が宣伝料をお支払いしてもいいくらいですよ」(日刊スポーツ1997年5月16日付)

現在のセパ変わらずお客さんで溢れる様になった一端を担ったといっても過言ではない。

そしてファンと共に成長していった漫画でもある。ついにあの里中とさっちゃんが結婚かあ~なんて浸ったものだ。徳川監督の主賓の祝辞にも感動した。(スーパースターズ編29巻)

プロ野球編1巻にて山田太郎のプロ初打席で対戦した工藤公康も、スーパースターズ編31巻のDeNA工藤になるまで現役を続けた。ちなみにどちらも工藤が三振に打ち取っている。その間15年。そう、ドカベンとプロ野球界は共に歴史を歩んできているのだ。

いつの日か近い将来、ドカベンのキャラクターと共に野球殿堂入りをする水島新司 御大の姿が見たい。

#ドカベン #漫画 #プロ野球 #水島新司

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