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自然栽培入門

この記事は「これから自然栽培を始めたい」、または「自然栽培がどんなものか学びたい」という方に向けて、自然栽培の始め方と手順をまとめた入門書として作りました。

自然栽培には(有機JAS法のような)明確な定義はありませんが、少なくとも

1.肥料を入れない
2.農薬を使わない

という2点を必ず守るべきルールとして、その上でどうやって農作物を栽培すれば良いのかという点について解説します。

著者について

2011年に自然栽培の農園「ナチュラルハート」を開業して10年になる農家です。

自然栽培を初めて学んだときに、従来の農業の常識に全く囚われない新しい考え方に強い衝撃を受け、自分がやる農法はこれしかないと決意しました。

以来、多くの失敗や試行錯誤を繰り返しながら畑の土をコツコツと育て、今では慣行栽培にも負けない立派な作物が収穫出来るようになりました。

この記事はそんな私の10年の経験から得た知識、思考、ノウハウをまとめたものです。

これから自然栽培を志す方がこの記事を読むことで、最短距離で自然栽培の成功に近づくことが出来るように、1つ1つの農作業について解説します。

自然栽培を始める前に必要な心構え

自然栽培

この作物は自然栽培で育てました」と胸を張って言うためには、私は以下の4つの条件を満たす必要があると考えています。

1.畑に肥料を入れない(化学肥料、有機肥料、堆肥を問わず)
2.畑や作物に農薬を撒かない
3.育苗時にも肥料や農薬を使わない
4.除草剤を使わない

初めにお断りしておきますが、この4つの条件を守りながら作物を育てるのは容易ではありません。

もちろん初めから何らかの作物は収穫出来るでしょうが、最初の頃は小さかったり、虫喰いだらけだったりするかもしれません。

私の場合は自信を持って販売できるような農作物が収穫出来るようになるまで6年間かかりました。

畑の土質や気候など、様々な違いがあるため同じとは言えませんが、それでも数年単位の時間が必要だと考えておく必要があります。

もし道半ばで辛くなって畑に堆肥や有機肥料を入れてしまえば、その分だけ自然栽培の成功は遠のくということを覚えておいてください。

つまりこれから自然栽培を始めようと考えている方には、上に挙げた4つの条件を自然栽培が成功するまでやり抜くという覚悟を持って頂きたいと思います。

その覚悟を持てた方は、是非この先を読み進めてください。私が10年間で得たものを出来るだけ細かく、理由を交えながらお伝えします。

その前に1つだけお断りしておきますが、この記事は一般的な農法について基本的な知識を持った方を対象として書いています。

つまりこの記事は自然栽培の入門書であり、農作物の栽培を一からお伝えするものではありませんのでご注意下さい。

道具の準備

自然栽培だからといって特別な道具が必要なわけではありません。
皆さんの畑の規模や行う農作業に応じて必要な道具を準備してください。

ここでは参考に私が普段使っている道具を挙げておきます。
・鍬(くわ):畑を耕したり畝を立てたりする。
・レーキ:畝を成形するために利用。
・のこぎり鎌:雑草の管理に利用。
・収穫ばさみ:主に果菜類の収穫に利用。
・包丁:主に葉物類の収穫に利用。

その他については以下の記事を参考にしてください。
https://nheart.net/nf-tool/

畑を耕す

畑を耕すと土が柔らかくフカフカになります。すると主に次のような効果が生じます。

・種の発芽が良くなる。
・土中に酸素が供給されやすくなる。
・雨水が土中に染み込みやすくなる。

自然栽培では作物を元気に成長させるために、以下のように畑を耕します。

1.全体を深く粗く
2.表面を浅く細かく

全体を深く粗く

初めに全体を深く粗く耕す理由は、土の粒がある程度粗い方が土中の空気や水の流れが良くなるためです。土中にたくさん酸素が供給されると有益な土中微生物も活性化しますし、作物の根の生長にも良い影響があります。

表面を浅く細かく

次に表面を浅く細かく耕す理由は、種の発芽がよくなるためです。種は小さいので上にある土が粗くて重いと発芽率が低下する原因になります。そこで土の表面数センチは種が発芽しやすいように、細かく耕すのが発芽率を上げるコツです。

私の場合は初めにトラクターを使い、畑全体を深さ30cmほどの深さで粗く耕します。粗く耕すためには、ロータリーをゆっくり回転させながら早めに走行するのがコツです。

次に畝立機を使って種を蒔く畝部分を、5~10cmほどの深さで細かく耕します。

これらの機械を使わない場合は、次の手順で畝を立てると良い畝が作れます。

1.鍬や三つ叉(備中鍬)を使って全体を深く粗く耕す。
2.鍬を使って畝の横の土を、薄く削りながら畝の上に盛る。
3.表面をレーキでならして畝を成形する。

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