Self Linernotes - with Dan(SlothPhantomMoth)
グラインダーの皆さんこんにちは。ESAGOYA Recordsの原田です。
昨年末に自分のソログラインドとスウェーデンの友人Danの新しいバンドでSPLITを出したのですが、メールのやり取りの一部がミュージシャンの対談みたいになったのでここに纏めて公開します。
自分と同じように一人で制作をやってる方、こういうのでどんなやり取りをしてるのか気になる方、暇すぎて読み物の一つでもないと気がふれるという方は是非読んでみてください。それではどうぞ
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<Date 11/25/2021~12/27/2021>
<Y:Yosuke / D:Dan >
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Y:お疲れ~。Takafumi Matsubaraの新譜聴いた?
D:聴いたよ。最高だ。でもレーベルから買うには送料が高すぎ…。
Y:あー、ウチもディストロする予定だけど送料エグいよね。
こっちは明日久々にライブやるんだよ。グラインドじゃない。普通のロックバンドだけど。
D:へー、いいね。グラインドばっかやってたらダメだよ笑 あとクリス(WOOAAARGH Rec)から連絡あったよ。彼がテープのリリースをやってくれるとはね。正直こんなことになるとは思わなかった。
こっちはSlothPhantomMothの曲をあと3曲録るんだ。本当に奇妙な曲だよ。
Y: もう次の曲作ってんの?Järnbördも活動してて忙しそうだね。新しいアルバムが出たらウチでも入荷したい。
D:Järnbördの新譜は来年で、紹介してくれたブラジルのCÄBRÄNEGRÄとのスプリットだよ。
Y:おおお、CÄBRÄNEGRÄ!あの話まとまったんか。しばらく連絡取ってないけど元気かな~。
D:SlothPhantomMothの新しい音源はどうしたらいいのかよくわからん。3トラック、4分と数秒...。ボーカルはまだない。まあストレスもないけど笑
Y:完成させて何かのボーナスとして残しとけば?
ところで。今回のSPLITって提案したの8月末なんだけど、10月中旬で10曲揃えてくれたよね。提案したタイミングって曲はもうあったの?
D : いや、作ったのはその話をもらってからだね。SlothPhantomMothでは今までにない方法で作曲したくてドラムのパターンから始めたんだ。どんな感触のパターンにするかということを話し合って「曲の出だしに90年代のNapalm Deathっぽいビートがあったらかっこいい」「ここはSuffocatonっぽいスラムビートがあったらかっこいい」とかそんな感じで。それで10曲分くらいのリズムパターンが書かれた紙を元に録音した。退勤後に2晩でレコーディングしたよ。奇妙なやり方だろ?笑
Y : そうね。でも奇妙がいいんだよ。一般的な作曲は他の人に任せよう。
その方法は想像力が要るね。真似しようかな。
D : ギターの録音はシンプルでストレートなハードコアのリフに聴き応えと弾き応えのあるリフを組み合わせて面白い曲を作りたいと思ったんだ。
よくあるのは4回、8回、12回とリフを使うことだけど、僕らはそうせずに1回だけとか、3回とか7回とか、そういうリフを多用して曲の中に奇妙なフィーリングを作り出したんだ。で、典型的なヴァースとコーラスのリフがない。そうすることで曲がより面白くなると思うんだ。僕がベースも弾いてて、リフの音数が多いからベースラインはシンプルにした。
Y : スウェーデン語の曲がいいよね。土着的な感じするし。
D : Ronnie(from Pyramido)はヴォーカルでいい仕事をしてくれた。歌詞のパターンはリフの後に付けられてて、典型的なヴァースやコーラスがないから構成が奇妙に感じられるかもしれない。繰り返すけど、変なのがいいんだよ笑 まあ、だから、伝統的な方法で作曲された曲はないんだ。
H.D.V.はどうやって作曲してんの?
Y : あー、多分大勢の人と同じようにまず思い浮かべることからなんだけど、僕の場合は一曲のアンサンブルの全てを頭の中で作るよ。各パート全部。ちょっとしたキメとかブリッジとかオーバーダブとかも全部込み。
D : ほー、マジか。
Y : だから電車でもトイレでも作曲できる(笑) で、曲ができたらDAWで形にするんだけど、まあワンマンだし。メンバーとエンジニアで一緒に録音すれば完璧なはずでも一人で作ろうとするとめちゃくちゃショボく感じるってのはよくある。何年もこうやって作曲してるから今ではあまりにも想像と違うって事にはならないけど。
D : それも想像力かな。
Y : そう。でも、+αの要素として脳内の段階ではどうなるか予想がつかないギミックを必ず入れる。面白い要素は絶対的に自分の想像の外にあると思う。で、好きにやれるのはいいけど、残念なことにライブはできん(笑)
D : ああ、スプリットの曲は本当に素晴らしいと思うよ。moogのパートが好き。でもワンマンバンドって呪われてるよ...ハハ。
とはいえ、多くのバンドがワンマンからスタートしてるからね。もし自分の音楽的なビジョンを共有できる正しい仲間を見つけたらフルバンドになるかもしれない。そしたらライブすればいいよ。ステージにmoogがあったら最高でしょ。
Y : メンバー探しHELL大変ですわー。
D : 世界でも有数の大都市に住んでんだからなんとかしなよ笑
でも大変だよね。気が合う相手じゃないと演奏するのも楽しくないし、音楽も良くならないからね。
バンドで演奏するのは魔法みたいなもので、他のミュージシャンと一緒に奇妙なアイデアを得ることができるし、ミュージシャンとして成長することができるし、なによりとても楽しい。
Y :そう。他の人にアイデアをぶつけるのは素晴らしい。
僕は頑固者で自分の曲を細部まで提示した通りに演奏するよう強要するクセがあるんだけど、ここ数年でそのやり方だと自分が思っているほどいいものにならないって気づいたんだよね。
ところで、さっきNapalm deathとSuffocatonの名前が挙がったけど、他にリファレンスにしたバンドってある?
D : Brutal truthとDiscordance Axis。曲の構成やアレンジがとてもダイナミックで奇妙だし、リフが最高。あとTerrorizerのWorld downfallのアルバムかな。古典的なデタラメのないグラインドコアで、僕が初めて聴いたグラインドアルバムの一つだよ。本当に最高。大好きだ。
Y : JoakimとRonnieは普段どんなの聴いてんの?僕は最近Pyramidoを知ったんだけど、彼の声いいね。
D : Ronnieは大の音楽好きで膨大なレコードのコレクションを持っているハードコアフリークだ。好きなバンドはPropagahndi。
JärnbördのドラマーでもあるJoakimは大のデスメタル・ヘヴィメタルフリークで、Judas PriestやIron Maidenなどのクラシックバンドを掘り下げてて、全てのデスメタルバンドについて知っているんだ。ハハ。僕はこのバンドで一番グラインドコア好きだと思う。
日本の新しいグラインドコアもチェックした方が良いかな?Mortalized, C.S.S.O, G.B.N, Vivisection, S.O,Bとかの昔からのバンドと、 FRIENDSHIP, PALMは本当に好きだよ。実は何年も前にドイツでC.S.S.Oのメンバーの一人に会ったこともある。
Y : いいね~!PALMは今年何回もライブ観に行ったよ。最近の関東のバンドだと、ライブを観て良かったのは... GUEDE, loxe, MESTIERI, Shapeshifter, 六根, Only the last song, leechとかかな?でもまだまだいるよ。
D : BCリンクありがとう。新しいバンドがどんな感じかは知っておきたいんだ。LeechとOnly the last songが特に良いね。
Y : SlothPhantomMothはライブやんの?前にインタビューした時にアンダーグラウンドのバンドがやれる会場が少ないって言ってたけど。
D : そう、この小さな国には会場も少ないし、エクストリーム・ミュージックのためのシーンもほとんどない。もし長いツアーをやりたいならドイツとかに行かんとね。スプリットをリリースした後、何かオファーがあればいいんだけど。
それはそれとして、洋輔にインスピレーションを与えたバンドやアーティストは?
Y :ああー、えーと、改めて考えてみるとなんだろね(笑) グラインドコア聴き始めたきっかけは間違いなくMortalizedだけど、その前にAt The Gates - Slaughter Of The Soulを聴いたのがエクストリームミュージックの入口だったかな。
あと日本のハードコアで、例えばPALMやSLANGやTerror Squadはそれぞれスタイルは違うけど明らかに自分の音楽を形成した要素の一つだと思うし、別ジャンルだけど上原ひろみやヒイズミマサユ機みたいな強烈なクリエイティビティを持ってるミュージシャンも好きだよ。
D :へー。ヒイズミマサユ機って人の曲、面白いね。
Y : あ、そうそう。別件だけど昨日Good Guys Go Grindに初めて連絡したよ。Alexanderがすぐに返事してくれて「昨日Danから聞いたばかりだ 」って(笑)なんて偶然だ(笑)
D : らしいね(笑) GGGGを知ってるとは思わなかった。スプリットのポストやレビューが出たら知らせるよ。
もうすぐクリスマスだから最近親戚との付き合いとかプレゼント買ったりとかしてんだけどクソ退屈。メンバーは街から離れていくし...ただ曲を作ってリハーサルしたいだけなのにな、ハハ。
Y : 日本ではなぜかクリスマスは恋人と過ごす習慣が定着してるよ。昔からの情報操作の賜物だ。僕は妻と1月に3歳になる息子と一緒に過ごすよ。
そうだ。今年の頭にRxCxの件でインタビューしたとき「息子はもうすぐ2歳になります」って言ったけどあれから1年後にこういうことになってるとはね笑
そういえばRxCxのみんなは?
D : 不思議な習慣だね。まあ、高価なおもちゃで子供を甘やかすための日って感じかな(笑) でもおかげで仕事から解放されるのは嬉しい。
RxCxのメンバーとは何度か簡単に会っているだけなんだ。ドラマーはEntrailsもやっててリハーサル場から300kmも離れたところに住んでる。シンガーはしばらく前に赤ちゃんのシャツを買ったってところだ。来年の夏の終わりに地元でフェスをやるように言われててもう少し曲を書くつもりだから、来年はRxCxのスプリット/EP用の素材を録ろうかな。ESAGOYA RecordsとHDVは来年どうすんの?
Y : レーベルは新しいリリースを続けるよ。来年頭にAgathoclesに在籍していたMatiasがやってるベルギーのグラインドコアBarrenのコンピを出す。リリースに関しては積極的にやっていこうと思ってるからRxCxで何かあったら言ってよ。
H.D.V.は最近作曲してないけど今回のSPLITのために作った曲がまだあるし、過去に一時期だけ配信してた曲のリメイクもしたいと思ってるから来年も誰かと一緒にSPLIT出そうかな。
D :今Barren聴いたけどこのコンピはクールだね。初めて聴いたけどベルギー/オランダのバンドだってのはわかる。ボーカルのアレンジやフレーズからして。
Y : へー、僕はEU/スカンジ/USかと時代性くらいしかしか意識してなかったな。
D : ベルギーとかオランダの言語って英語や北欧圏とは語感が違うから聴けばわかるよ。
Y : なるほど。それより、アレだ。ここ何日か日本では連日ヨーロッパでまたCOVIDが広がってるってニュースが流れてる。色々気をつけてな。
D : ああ、そっちもね。僕の計画では所属してるどのバンドでもやることはたくさんある。そして家族の世話をして、仕事もして...。
そしてTHE HILLS ARE DEAD RecordsとRed Truth productionsからの "Tystnadsallergi "のテープ・バージョンも素晴らしいものになりそうだ。VINYLかミニディスクでリリースする話も来ちゃったりしたら最高だね(笑)
<Text by yosuke harada>