二輪車に乗れません

私は自転車に乗れません。

なかなかの年齢になった今でも…。


私が小学校低学年くらいの頃

2つ上の姉は既にスイ〜スイ〜と

自転車を乗りこなしていました。



「あんたも練習すれば乗れるよ〜」



励ましの言葉を姉からもらうたびに

『自転車に絶対乗るんだぁ〜』と

自分に言い聞かせてきました。



近所の公園で練習しようか…

いやいや、人の目が気になる…

そうだ!伯父さんの家に行こう!



近所の伯父さんの家は、庭が広くて

人の目が気にならないという好条件!


「おいちゃん、自転車の練習ここでさせて〜」


伯父さんは快く「いいよ〜」と言ってくれて

練習場所として何度もおじゃましていました。



…しかし。



いつまで経っても私はバランスを取りきれないのです。

補助付きの自転車なら安心して乗れますが…。

いざ補助を取ると、全く乗れませんでした。


自転車の後ろを支えてもらいながら

少しずつ…

少しずつ前に進みます…

支えを離された瞬間に、こける。


この繰り返しで、全然乗れる気がしませんでした。



挙げ句の果てに



庭の植木に勢いよく突っ込んで

クモの巣まみれになってしまったり…


ブレーキの掛け方もままならず

目の前の壁に見事に激突してしまったり…



そんなある日のこと…私はふと思いました。



『もう…乗れなくても…良くないか?

乗れなくても…生きていける!うん。きっとそうだ。』



そう思った日から、自転車の練習をやめました。


『伯父さんありがとう。』



私は、自転車に乗れなかったけど

大きくなったら四輪の車に乗るから大丈夫!


自転車に乗れない言い訳を、都合よく考えてしまいました。



あれから数十年…

今でも自転車には乗れません。



姉には二人子供がいます。

子供たちに姉は、事あるごとにこう言うのです。


「りくゆとちゃんは、自転車乗れんのよ〜」


それを聞いた子供たち…


「え?うそ?!本当に乗れんのん?」



自転車ネタになると、私はいつもイジられます。

それはもう、クスクスと笑われます。

だからその度にこう言っているのです。


「ねっ!自転車乗れんでも、今生きていけてる♪

だから全然大丈夫!問題ないんよ〜(笑)」


最初は恥ずかしいと思っていましたが

いつしか開き直って『それが何か?』みたいな

余裕な顔をしてやり過ごすようになりました。



そんな私が、車の免許をとりに

自動車学校に行った時だけは

自転車に乗れない事を悔やみました。


二輪講習というものがあったのです。

バイク…絶対に乗れないやつです。


講習が始まり、担当の先生のもと

バイクに乗らなくてはいけなかったのです。


『いやいやいや…無理だ』


そう思った私は、バイクのエンジンの掛け方から

アクセル・ブレーキなどの説明までは聞いたものの

いざ乗るという状況になると、身体がガチガチに硬直しました。


そして、ゆっくり前進…とその時!


思いっきり右ハンドルを回しすぎて

一瞬前輪が勢いよく浮いてしまったのです。


それと同時に、先生がすぐさま気づいて

私の前に止めに入りました。


先生:「ハンドルゆるめなさい!!」

私:「わかりません!」



その後…


恥ずかしいとは思いましたが、先生に正直に話しました。

「すみません…自転車にも乗れないです…」


この時ばかりは恥ずかしすぎて泣きました。

一緒に講習に参加していた人たちの冷ややかな視線に

その場から逃げたくなりました。


でも、まだ講習が終わるには時間がある…。


先生は、「あっちのスペースで座って見ていなさい」と

休憩所から見学するように指示してくださいました。


私は、とぼとぼと落ち込みながら、休憩所に向かいました。

そこに行くと、もう一人先生がいて、お菓子を渡されました。


「乗れん人は、無理して乗らんでいいとよ。

ほら、これでも食べて元気出しなさいねぇ。」


私は何だか分からないけれど、救われた気がしました。


『そうだ!無理しないでいいんだ!

この度は、ご迷惑をおかけしました…』


申し訳なさと、感謝の気持ちと、恥ずかしさが

ごちゃ混ぜになって、複雑な思いとなってしまいました。


この時が二輪にふれた最後…18歳でした。


それからかなりの年数が経過した今でも二輪車には一切乗れません。

でも、生きていけてるからそれで良いかなと思っています。



私の二輪車にまつわるお恥ずかしいエピソードでした。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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