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金融工学

< 金融工学 >

このサイトで取扱おうとしているのは、金融工学の内、Quants Financeと呼ばれる分野です。Quants Financeとは、一言で言えば、ミクロ的な金融商品の価格計算の方法を探求している分野です。マクロ的なポートフォリオ理論では、様々な投資家のリスク指向をベースに、「リスクプレミアムを含めた期待リターンが均衡する価格」として証券の価格が決まるという考え方です。それに対し、Quants Financeでは、個別の金融商品ごとに、キャッシュフローの期待値の現在価値を、主観的で投資家ごとに異なるリスクプレミアムを考えずに、客観的なパラメータだけで求めようとするものです。

株式や債券といった現物証券の価格は市場で決まりますが、それらを対象資産とするデリバティブズの価格は、基本的に次の式を使って求めます。 

金融商品の価格=∑CashFlowi(Ti)×Probability(CashFlowi)×DiscountFactor(Ti)金融商品の価格=∑���ℎ�����(��)×�����������(���ℎ�����)×��������������(��)

金利スワップのように、各CashFlowi���ℎ����� が確定的と見做せるものは、Probability(CashFlowi)=1�����������(���ℎ�����)=1 として現在価値を計算するだけです。一方、オプションのように、CashFlowi���ℎ����� の発生が確定的で無い場合は、そのCash Flowの発生確率を掛けて期待値を計算し、その現在価値が価格になります。Quants Financeはまさに、このDiscount Factor と発生確率 の導出方法を探求している分野です。

< ”実務で使える”とは >

Quants Financeの理論をもとに導出されたキャッシュフローの発生確率やDiscount Factor使って、実際に金融商品の価格を計算したり、リスク量を計測したりするには、

  1. キャッシュフローの発生確率や、Discount Factorを計算するアルゴリズムを、プログラムでコンピューター上に実装すること。

  2. Cash Flowの金額と時期を、取引慣行や個別契約に従って、正確に計算すること

の2点が必要です。

この2点に重点を置いた日本語の解説があまり無かったので、主にそこに注力したサイトにしたいと考えています。

従って、想定しているAudienceは、実務でこれからデリバティブズのトレーディングやリスク管理の業務に携わろうとしている人です。従って、スワップやオプションといったデリバティブズの基本的な知識は既に持っておられるという前提です。オプションモデルから価格計算のアルゴリズムを導出するには、数値解析、確率解析、線形代数などの知識も必要になりますが、その辺は、その分野の専門書やインターネットサイトを参考にして下さい。私自身、数学の専門家ではないので、詳しい解説はその方面の専門家の方におまかせします。ここでは、数学的に厳密な証明をするのではなく、極力、直感で理解できるような解説につとめます。

< サイトの構成 >

サイトを、基礎編、上級編、実務編に分けました。

基礎編は、金融工学における最も基本的な概念である“金利”からスタートし、金利の期間構造、スワップ、オプション、リスク量の計測について、基本的な概念を解説しています。

上級編と実務編は、これから順次アップしていきます。

上級編では、様々なイールドカーブ構築方法や、オプションモデルについて、Short Rate ModelやLibor Market Modelについて、さらにクレジットデリバティブズについても解説できればと考えています。

実務編では、オープンソースとして公開されているQuantLibを使って、Quantsモデルをプログラムに実装する方法について解説したいと考えています。QuantLibは、高度なオブジェクト指向プログラミングの手法を取り、金融商品、イールドカーブ、オプションモデル、計算アルゴリズムなどを抽象化したClass Libraryを提供しており、そこで提供されている部品(オブジェクト)を組み立てるだけで、様々な金融商品の価格計算が可能になります。また、日数計算方法や、休日の取扱いなど、実務での取引慣行もオブジェクトモデル化されており、そのまま実務でも使えるClass Libraryになっています。但し、内容を理解するには、C++、解析、線形代数、商品知識について、ある程度高いレベルの知識が必要です。

具体的な項目は、左側のサイドバーにある目次を参照して下さい。未定稿の部分もかなりありますが、月に1~2件のペースで埋めていく予定です。

最後に、このサイトでは日本語訳が固まっていない専門用語や概念や人物名は、基本的に英語をそのまま使っています。例えば、CalibrationとかVolatility Smile/SkewとかStochastic Volatilityとかは、英語のまま使うようにしています。下手に日本語にしても意味が判りにくくなるし、英語で馴染んだ方が、今後、英語の文献を読む時に楽になると思います。実際にネットで手に入る金融工学に関する文献のほとんどが英語なので。

2019年2月

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