今の時代だからこそオススメする車輪の再発明
ソフトウェア世界の一部の人たちには「車輪の再発明をするな」という信仰があります。
もちろん、プロダクトコードで、車輪の再発明をする場合、注意深くなるべきです。せっかく既存の素晴らしいもの(大抵の場合はOSS)があるのに、わざわざ車輪の再発明をすると、メンテナンスリソースの分散が生じるからです。
とはいえど、既存の素晴らしいものには、既存の面倒なしがらみがあることもしばしばです。OSSの良さは、気に入らなければ自由にforkできることです。これはOSSの寿命を事実上無限にすることもできるものです。
ただ、今回の記事で主張したい理由は別のものです。
今の時代
何かのゲームに自信がある人でも、Twitterで「オレは最強の○○ゲープレイヤーだ」とツイートするなんてことはできません。世界大会で優勝するようなチャンピオンでもなければそのようなツイートをしても、失笑を買う、反感を買う、クソリプが付く、スルーされる、生暖かく見守られるなどという寂しいことになります。
※世界大会で優勝するような人でも最強を名乗るかというとそうでもないでしょう。次の大会で最強のままいられるか?というと大変です。
Twitterを見ると、ゲームプレイで飯を食ってるプロもいれば、超絶技巧をYoutubeにアップロードする音楽関連の人もいますし、大学教授や、様々なジャンルのスゴイ人ばかりです。
SNSが流行るより前ならば、「オレは最強だぜ!(店のトップ)」「オレは最強だぜ!(学校のゲーム大会の優勝者)」くらいの人は星の数ほどいました。
ソフトウェア開発でも全く同様です。狭い範囲でなら少しでも自信を持てたのに、今の時代GitHubやQiitaその他、自分の実力と、世界最高峰の実力の差が分かる機会が増えてしまいました。
僕はこれはあまり良くない側面があると思っています。
何かを上達する為には、猪突猛進で「オレTUEEEEEEE」くらいの気持ちを抱いている方が良い時もあります。その後で鼻っ柱を折られて、そこからまた立ち上がるようなこともあるでしょう。
・ 今のインターネットは、あまりにも最高峰が可視化されすぎていて、「これから」という人の意欲をそぎすぎている
車輪の再発明
車輪の再発明は、ソフトウェア開発シーンで特に非難されるものです。
「広く受け入れられ確立されている技術や解決法を知らずに(または意図的に無視して)、同様のものを再び一から作ること」を意味する。
新たな付加価値が何もないものを作成するのにコストをかけることから、皮肉的なニュアンスで用いられる。再発明を行ってしまう理由としては、「既存のものの存在を知らない」「既存のものの意味を誤解している」といったことが挙げられる。主にIT業界、とくにSEやプログラマの間で良く用いられる。
たとえば、論文を書くとき、マーケティングで新商品を開発するときには、既存のリサーチは必須であり、新規性は何か、勝負を仕掛けられる根拠、そういったものが必要になります。
ところが、万事全てそれでいいかというと、僕は違うと思います。
どんなに世界でスゴイ人がスゴイことをしていても、車輪の再発明を恐れて、既存のものには手を付けない、せいぜい改良に手を出すというだけでは、ソフトウェア開発は停滞するでしょう。
僕も貴方もまだ世界の最高峰には勝てないかもしれませんが、ソフトウェア開発なんてまだ発展途上のものです。一昔前の常識が覆るということが毎年様々なところで生じています。
少しだけ鈍感になってもいいと思うのです。HRT(謙虚・尊敬・信頼)は忘れずに、でも世界最高峰や日本最高峰、あるいは日本のスゴイ人たちのことを忘れて、本当に自分がしたいこと、できそうなことをやってみるべきです。
車輪の再発明の利点
ちなみに車輪の再発明には利点があります。再発明する前よりも、車輪、つまり再発明する対象について、詳しくなれることです。
再発明をしてない、机上の空論のスゴイ人よりも、詳しいというと、ものすごく大きな利点があると思えませんか?
まとめ
今の時代はあらゆるジャンルで強い人、スゴイ人、そういった人が可視化されすぎています。これは人々の成長を妨げるものでもあります。
再発明を恐れないことで少しでも成長してみませんか?
「車輪の再発明をするな」なんて小賢しいことをいう人たちの言葉なんて忘れましょう。SNSのスゴイ人たちを見過ぎて車輪の再発明を恐れたりしないようにしましょう。
車輪の再発明には、その対象について詳しくなれるという大きな利点があります。
ソフトウェア開発のスゴイ人のスゴイ度は、たとえば格ゲーチャンピオンたちよりほどのスゴイ度ではないかもしれません。一部の人を除けば、スゴイ人として認識されている人にも、勝てる方法はいくらでもあるかもしれません。
今の時代、少しくらい鈍感になる方がいいでしょう。下手に日本や世界のスゴイ人たちばかりを見ていると、成長のチャンスを失います。猪突猛進で再発明をする人の方が、成長できる時代です。