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坂上の重鎮(115の坂が語ること#12胸突坂)

文京区には、115の名前がついた坂がある.
武蔵野台地の東の周辺部に広がるこの区には、本郷・白山・小石川・小日向・目白という 5つの台地が広がり、台地と谷を結ぶ坂には、江戸時代につけられた名前が今も使われている。

朝、根津神社まで散歩する時、この坂を上った先の内科に行くとき、胸突坂を通る。距離は約20mと短いが、傾斜は6度と結構な急坂である。
11月4日、の金曜日は朝から晴れわたり心も軽い。根津神社まで走ることにした。胸突坂の下までくると、坂に面したまだ築年数の浅い瀟洒な家から、登校するこどもたちが、ちょうど家から出てくるところだった。カラフルなランドセルを背負った子供たちの、「おはよう!」が響く。ほんの数人なのに、坂全体の明るさを1トーンあげるのに十分だった。見送られて子供たちが学校に行ってしまうと、また、静かな住宅街に戻った。

胸突坂を上りきると、先ほどとは対照的に古風な木造のお宅が二軒、向かいあって建っている。窓のガラスが組み込み式になっており、かなり古いようだ。丁寧に補修の手が入っていて、「このままの家に住み続ける」という主の思いが感じられる。坂の上から新しいファミリーを見守るような、二軒の冠木門のどっしりしたお宅の前を通るたびに、「今日もご健在」と安心した気分になる。

胸突坂の上に広が空は青く、きょうもきっといい一日になると確信して、根津神社にむかった。

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