お客様は神様か――カミは選べない
サービス業にとって「お客様は神様」です。
多分、異論はあると思います。日々クレーマーを相手にしている方々からしてみれば、何ふざけたこと言ってるんだということになるのかもしれません。でも、ちょっとだけ聞いてください。お客様はカミでなければならないのです。
まず第一に、人間はそれでも付き合いを選ぶことはできたり、疎遠になることはできますが、神は選べません。ましてや、神を疎ましく思ってぞんざいに扱ったら、どんな罰を受けるか知れません。だから、アイツらは神なんです。
次に、これが重要なことなんですが、すべての神が幸福をもたらす存在ではないのです。
破壊や災いをもたらす神もいます。一般的に神は荒魂、和魂のように二面性を持っているとされています。
我々人の子は、「カミおろし」のように、神を招くことはできるかもしれません。ただし、その要請に応じ、良き神が下りてくるとは限りません。荒ぶる神が下りてくることだってあるんです。そういうわけで、我々は良き神なら長くとどまっていただけるようもてなして迎え、悪しき神ならお帰りいただくよう促すしかないのです。
ほら、お客さんと同じでしょう。
ニコニコしている人がいきなり切れることがあるところは、神の持つ二面性にも似ています。
カミというのは、オニ、モノ、タマと並列される人ならざるもののことをいうのだそうです。
折口信夫によると、カミは本来「畏しいもの」なのだとか。畏しいというのは、「かしこみ、かしこみ、物申す」の畏むの形容詞ですが、「脅威を感じるさま、恐ろしい」という意味が第一義になります。
そう、神とは人智を超えた脅威を感じる存在のこと。
人間の常識の枠を超えたアヤツらは、既に人外の領域。
そういう意味を含めて、お客様は神なのです。
そんなカミは、――どちらかといえばモノやオニに近いと思いますが――人形(ヒトガタ)に写して川に流しやってしまいたいよ。
当然、その川の行きつく先は海などではなく、人ならざるものが棲まう異界でございます。
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