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Human|イラストレーター 伊藤ハムスターさん

1月22日、イラストレーターの伊藤ハムスターさんのオリジナルカレンダーが届いた。2020年も3週間経っての到着。いかにもハムスターさんらしい。

動物のような、人のような。違いがあるような、ないような。男のような、女のような。年の差があるような、ないような。自分のようで、自分でない。ハムスターさん本人のようで、本人でない。

ハムスターさんのイラストには、パラレルワールドの時空がねじ曲がって、あなたやわたしが、動物や宇宙人、半人半鳥、天使も悪魔も、みんなごちゃまぜになったような世界です。

最近では、『こども六法』(山崎聡一郎、弘文堂)や『上馬キリスト教会ツイッター部の世界一ゆるい聖書教室』(MARO、LEON、講談社)など、ベストセラー本の装丁イラストなどを描かれているので、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

どうしてハムスターなんだろう?

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ハムスターさんとは、2019年に日本科学未来館で開催された「マンモス展」のオフィシャルプログラムの制作でイラストを描いていただくのがきっかけでお会いしました。

なぜハムスターなのか?」って、いちばん気になるところなのですが、実際には本人にお聞きしたことはありません。しかし、僕には一応、解釈があります。

ご本人にお会いした印象から、「すぐ小さな空間に入って、なにか熱中できることを一生懸命やりそう」な感じがして、見た目のハムスターっぽさというよりは、そういう雰囲気の近さから、名乗っているのかな、と。

その後も、ハムスターさんが食に興味があるということで、11月に開催した「CRAFTSMAN × SHIP」のイベントにも来てくださり、さらにクラフトマンのイラストまで描いてくださって、うれしかったなぁ。

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その後も、Twitterでキン肉マンの絵を送ったりして交流したりしています。

ハムスター的世界のルール

カレンダーが届いたという家からのLINEをもらい、うれしくて早速帰ったら開けてみた。ドキドキする感じ、なんかいい。

一応、Twitterで絵柄はあがっていたんですが、それでもインクののり具合や紙の選び方やその質感。全体のサイズ感など。ハムスターさんが細部まですべて選んだ作品だと思うと、作家性とクラフト性がダイレクトに伝わって、やっぱり嬉しい。

12枚のカレンダー。個性や人格が、外見に依存しないハムスターさんの世界観が、僕はすごく好きなんだなよなー。それと、イラストの中のキャラクターが、みんな何かに取り組んでいるところも好き。営みがあるのだ。

たとえば、10月のイラスト。七五三の家族写真なんだと思うんだけど、恐竜と鳥の親に、グレイとどら焼き(?)のきょうだい。いわゆる家族というものは、似たような共同体として描かれることがほとんどなのですが、あえてまったく違う存在によって家族が形成されている。

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これを関連性のない存在の集まりとするのか、見た目を超えて家族と認識するのかは、観る人に委ねられるが、おそらく多くの人は、このとても絶妙なバランスで作られた4人を、家族とみるだろう。では、家族は、いつから家族になるのだろうか

そこまで深読みする必要はないが、「家族の関係性とは何か」をとうぜん考えさせられる作品だ。

9月のワニのコーヒー浴のイラストも好きだ。これは、グラスの向こうのコーヒーの中に、氷とワニの尻尾が、白いインクですうっと表現されている。とくに、ワニの尻尾の根元の方が、コーヒーの中に消えていくような線の表現は、とってもナイーブで、ハムスターさんらしい。

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ハムスターさんの線は、ゆらゆらフラフラとまっすぐじゃなく蛇行していて、決まっていないように見える。恥じらいや迷い、意思や決意といった、すごく複雑な感情、「動物としてのハムスター」の存在に似た、存在する生物としての危うさ(存在の軽さ)のようなものが感じる一方で、線は太く大胆だ。

11月の食パンの背景の真っ赤な色もいい。ウサギがパンの耳に埋れているのだろうか。不思議な生き物が、パンの耳を食べながら動いているようにも見える。12月のウサギとハムスターのスノードーム恋物語もいい。

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多様な世界とは何かをイメージさせる作品たち

ハムスターさんのイラストの世界のなかの存在たちは、みんな自分と違う存在と関わりあっているのに、まったくそれを気にせずに食事をしたり、旅したり、相撲をとったりしている。

じつに豊かな多様性が広がる世界である。

猫と鳩が、キュウリとナスに乗っていたとしても別におかまいなし。「おめー、羽生えてるのおかしくね?」みたいなきとを猫はいわないし、ましてや宗教で争うこともない。

多様性とは、相手の個性を認めて尊重しようというようなものではない、と僕は思う。カレンダーのなかで、相撲を取ろうとするハムスターとカブトムシのように、相手の個性に対して無関心であることだと思う。ハムスターとカブトムシが、相撲の取り組みに集中しているように。または、本物のドーナツを頭にのせた天使と猫とペンギンのように。

人だろうが、動物だろうが、鳥だろうが、食べ物だろうが、架空の妖精だろうが、どんな存在であっても、ひとつの世界に描くことができる。それが、ハムスターさんの世界だ。

いつか、僕がいまやっているレストラン内リモートワーク「MAGARI」のイラストを描いてもらいたいんだよね。The Burnのカウンターの端に僕がいて、その隣から続くカウンター席には、ライオンや宇宙人、鳥、天使やカブトムシ、色んな存在がいて、話こんでる。

レストランが人の出会いのハブになって、そこから食の未来の未来が生まれる。編集者も料理人も、フォトグラファーもデザイナーも、国籍も年齢も、好きな食べ物もみんな違ってよくって、だからこそ、いろいろな人がいれる場所。そのイメージは、ハムスターさんが描く世界そのものなのです。

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