ヨーグルトのメディアで、ヨーグルトのことはほとんど書かずシェフのことを書かせてくれたヨーアカの皆さんに感謝したい
ヨーグルト好きによるヨーグルト好きのためのコミュニティ「みんなのヨーグルトアカデミー」(以下、ヨーアカ)のWEBメディアで「わたしをささえるもの」というインタビュー連載が始まった。
ヨーグルト好きのシェフや料理人の仕事観に触れるインタビューシリーズで記念すべき第1回は、東京に6店舗の「ブリアンツァグループ」を展開するイタリアンシェフ、奥野義幸さんに出ていただいた。
WEBでは、先輩の編集者・ライターであるサトタカさんこと佐藤貴子さんが執筆する「突撃!隣のヨーグルトごはん」という世界各国の珍しいヨーグルト料理を紹介する連載や、鮨専門サイト「すしログ」を運営しつつ、国内外の料理を20年以上食べ歩いている大谷悠也さんのヨーグルト料理店の紹介のほか、ヨーグルトレシピやおすすめのヨーグルトショップなどの紹介ももちろんある、ヨーグルトの総合サイトといえる内容である。
そんななか、僕が書かせてもらっているのは、ヨーグルトのことを直接的に書いているわけでもない、むしろシェフや料理人の人生観や人柄、考えていることなどを主題に話を進めるインタビュー記事である。
いわゆる情報誌のようなトレンドを追う雑誌でも、必ずあった巻頭にエッセイやインタビューがに似ているといえばいいだろうか。
本日、初めてのインタビュー記事が公開され、記事一覧に奥野シェフの顔写真が並んだヨーアカを見ると、トレンド情報だけでなく、業界人・識者、つまり人を紹介している企画が加わったことで、メディア全体の奥行きになったのではないかと感じている。
月に1回のペースで、ヨーグルト好きなさまざまなシェフ・料理人の「ささえるもの」を聞きながら、シェフ・料理人として大切にしていることやヨーグルトへの想いを言語化してもらおうと思っている。
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企画が生まれる過程は、じつはヨーアカでエッセイとして書かせてもらっている。
連載のお誘いをいただいたヨーアカのみなさんとの最初のミーティングで、はっとさせられたことが企画のきっかけだったわけですが、じつは、この企画を通してくださったのも、ヨーアカのみなさんでした。
僕は、2回目のMTGで次のような企画案を出しました。
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「旅とヨーグルト、シェフ」
世界を旅して、各国の料理を食べてきた料理人が、旅先で出会ったヨーグルトを紹介する。旅の思い出を語るほか、旅をもとにした異国情緒あふれるヨーグルトレシピを提案してもらう。
「わたしをささえるもの」
ヨーグルトを健康などを意識して食べ始めると、冷蔵庫にあるのが当たり前になり、切らすことがなくなる。常に身近にある存在になる。「ヨーグルト=わたしをささえる」として、シェフが支えられているもの(師匠、スタッフ、家族など)の思い出を話してもらいながら、支える存在が一流シェフにさせたというようなヒューマンストーリーで、シェフを紹介する。
「わたしの朝時間」
ヨーグルト=朝のイメージがあります。日々過酷な日常をすごすシェフだからこそ、良い朝時間を過ごしているはず。おすすめの朝食(もちろんヨーグルト)やこだわりの朝時間の過ごし方を聞く。働く人向けの企画。
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置きに行った企画(読み返すと異様にダサい)が2つに挟んで、自分がやりたい企画を置くという、気弱なプレゼンを見せたなかで、ヨーアカのみなさんは、ばっさりと「どこかでみた企画」「出来あがりが見える」と、辛辣なご意見をいただく。
そのなかで、「わたしをささえるもの」は、「料理人の代弁者である江六前さんにやってほしい企画」と言ってもらい、2回目のMTGで企画がすんなりと決まった。
すごくうれしかった。
英語もできないから、海外のシェフにインタビューもできない。料理の知識もないから料理そのものに対しての考察もできない。いわゆる食のライターとしては、専門性がない僕は、「シェフ・料理人の考え方」をとにかく伝えることにだけを強振し続けてきた。
もちろん、ちょっとしたテクニックで海外シェフのインタビューも、料理の解説もかけるくらいではある。だけど、基本的には「料理の向こうに人を見つける」ということしかできないと思ってやってきた。それをヨーアカの方々は見てくれていたことが、とにかくうれしかったのだ。
ヨーグルトのことを書かなくてもヨーグルトのメディアでシェフのこと、しかもヒューマンストーリーを連載で書かせてくれる寛容なヨーアカの皆さんに感謝しかない。
だからこそ感謝しているだけでは意味がなく、「わたしをささえるもの」が、他のヨーアカの企画のコントラストになって、ヨーグルトに対するメディアの奥行きを与えられればいいと思う。
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百花繚乱のメディアに、それぞれに多様なコンテンツがあると思うが、個人的には、全体でみたときのコンテンツの奥行きは必要だと思っている。もっと平易にいえば、企画のレンジの広さとでも言おうか。
人と人との会話でも、用件だけを伝えあっているならメールなどの文字で十分だ。なんなら「了解!」のスタンプで最低コストでやりとりはできる。
リアルな会話のなかには、ノイズのような、雑音のような、本筋とは関係ない話が起こる。それによって、相手への理解が深まり、信頼(時には不安もある)が生まれて、生涯のパートナー(友人や恋人だけでなくビジネスでも)になることもある。
オウンドメディアには、「わたしをささえるもの」のような脱線しても戻ってくる企画が大事になるのではないかと、僕は考えている。
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