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編集者はクリエイターでなくてもいい

編集者とは、雑誌や書籍を編集する者のことだ。僕自身もその編集者なわけだが、編集者が持つ能力は、けっこう現代社会のあらゆるところで必要とされてきているなと感じている。

そこで、編集者の仕事を紹介しながら、その本質的な役割について書いてみたいと思う。

「集めて編む」のが編集の仕事

まずは、雑誌や書籍を制作するのに関わる人を紹介したい。本はざっと以下のようなクリエイターたちとチームを組んで完成させる。

ライター(または著者)/文章を執筆する

デザイナー/誌面のデザインする

カメラマン/装丁や誌面の挿図などの写真を撮影する

イラストレーター/装丁や誌面の挿図、地図などを制作する

ほかに、内容に誤りがないか確認する校閲者や、印刷、DTP、書店での販売、広告営業、広報などの本には多くの人が関わっているが、本を作るという点では、この4人のクリエイターたちが大部分を占めている。

じゃあ、編集者は何をしているのかというと、それぞれクリエイターたちからあがってきたものを、売れる本(多くの読者に届く本)をひとつにまとめあげる。文字通り「集めて編む」のが編集者の仕事なわけだ。

編集者が持つ編集ポイント

僕は、本をまとめあげるのに以下の5つの編集ポイントをつねに持つようにしている。これは、編集者によって優先順位は違うと思うが、たぶんほとんどの編集者が似たようなことを考えているのではないだろうか。

1、 企画には、それまでに提示されていないような、新しい視点が入っているか。

2、 企画に対し、文章やデザイン、写真、図がきちんと読者に伝わるような構成や表現になっているか。

3、 想定している読者にとって、わかりずらい構成や表現になっていないか。

4、 締め切りに向けて、情報に間違いがないよう十分に確認ができているか。

5、 自分がその本を読んで、おもしろいと思えるか。

この5つの編集ポイントのうち、1がムチャクチャ大事で、編集の仕事は、ほぼここで決まる。企画の切り口とか編集方針というものだ。

さらにああ2〜4については、1で決めたこと(編集方針)によって判断できることで、さらには編集のテクニックでも精度を上げることができる。

さまざまな編集者がいるワケ

5については、これまで、編集者の仕事としては1とともに大事なこととされてきた。僕も少し前は、その通りだと考えていたけど、いまはチョッチ違うなって思ってる。

5は、1〜4とは違い、個人個人の感覚に委ねられる趣向のようなものだ。だから、これがひじょうに厄介で、色々なところでエラーを生む。本作りで多くの誤解や無駄、ストレスが生じるのもこれによることが多い。

僕自身は、出版社に勤務した経験はなく、出版社(版元)から、編集部分を専門的に請け負う編集プロダクションに勤め続けている。いわゆる「編プロの人」だ。

実際に仕事をする際には、版元に担当編集者に確認をとりながら、ライターやデザイナーなどを束ねて本を制作している。わかりやすくいえば、編集部分のみの下請けだ。

だから、いろいろな版元編集者を見てきた。

熱意をもって編集に入り込んで本を作ろうとする人もいれば、いくつもの仕事をかかえているのか、丸投げの人もいる。

編集プロダクションから、別の編集プロダクションに仕事をまわすこともあって(孫請け)、そこでは、自分以外に編集プロダクションの編集者とたくさん仕事をした。

言われたことを淡々とやる人もいれば、どんどん提案をしてくれる人もいて、何を大事にしているかによって、編集者もいろいろあるということをつくづく感んじる。

頼もしい編集者とは

そんななか、一緒にやっていて頼もしいと思う編集者は、2〜4で迷わせない「コンセプトを提示できる人」である。

こういう人は、クリエイターの仕事に対しての敬意がある。前提として、クリエイターが出したものを信頼している。だから、何か意見をいうとすれば、そのもののが良いかどうかではなく、コンセプトに沿っているかどうかで判断してくれる。

逆にやりにくいのは、すぐに「おもしろくない」という人。つまり主観的判断をする人ということなのだが、こういう人に限ってディテールの修正の指示もあいまいなことが多く、さらにたいてい何度も調整を入れてくる。

それもそのはず。編集方針が見えないから、こちらも無数にある方法から、これかもしれないという方法を探してやっている。だから、的を外すことが多い。まるでギャンブルだ。

それは、追い込まれて必死に考えた先に、良いものが見えてくる、という昭和的精神論に由来しているのだろうかわからないが、働き方改革が叫ばれる中、最初から自分のイメージする中でいいものを出させることができた方が、よっぽど生産性が高いのではないか。

そういう人は、クリエイターの仕事に対する敬意がなく、単なる作業者だとみている。クリエイターにクリエイティブな部分を任せていないわけだから、やってる方に不満が募る。

現代の編集者がやるべきこと

編集現場で起こる問題は、「こっちの方がいいとおもったので、やってみた」とか、「こういうことじゃないから、やり直し」みたいな行き違いによる余計な仕事の発生がほとんどだ。つまり編集方針が定まっていないから起こる。編集をブラックな職業にしているのも、原因は、だいたいこれだ。

現代の頼れる編集者に必要なのは「編集方針を元に、改善点をロジカルに語れること」だと思っている。それによって、多くのクリエイターたちが迷うことなく、最大のパフォーマンスを発揮し、最短でゴールに向かうことができる。

そこに、好きか嫌いか、おもしろいか、おもしろくないかは存在しない。これが、編集作業の中で、なによりも大事なことだと思っている。お互いを認め合った上で、ゴールにどう詰め寄って行くか。

その上で、ゴールテープを誰が切るかは、あまり重要なことではないと、と思っている。アンカーは、編集者でもいいし、著者でもいい。好き嫌いで決めてまったく問題ない。例えば、2案まで絞った表紙の案を、ツイッターとかで投票で決めたっていい。好き嫌いには、正解はないと思うし、そこまできたら、結果はそんなに変わらない。

それよりも、ある編集方針のもと、クリエイターがお互いの立場で力を発揮して作りあげたものの方が、よっぽど重要だ。

そうすれば「こっちの方がおもしろいのに」という、満たされない承認欲求によって、本来やるべき仕事に集中できないという、ムダも排除できる。

編集者はクリエイターではない

現代の信頼される編集者は、強固な編集方針のもと、プロの仕事に敬意を払いながらも論理的に説明できる人だと思っている。

編集者は、最初の編集方針を決めるまでは、クリエイターであっていいんだけど、それ以降は、クリエイターではなくてもいい、むしろクリエイターじゃない方がいい。なぜなら、あくまで編集者は、クリエイターがいて成り立つ仕事だからだ。

強く太い企画と編集方針を立て、それ以降はクリエイターにリスペクトしてまかせる。クリエイターに最大限にその能力を発揮させ、プロジェクトを完結させる。

いやー書いておいてなんだが、編集者って、すごい。こんな人材がいたら、どんな業界でもマネージメント部門に欲しがるだろうなぁ。

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