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T04:ホー・ツーニェン

《旅館アポリア》

綿密なリサーチに基づき、作家ならではの視点で選ばれた構成要素が場所の必然と相まって唯一の空間を作り出す。音響と振動は擬似体験というよりは、外側から当時の狭い世界観(思想)を揺るがす存在の表象か。悲劇の外側にこそ問うべきものがある。それを考えることの重要性を思う
(10/15 ふう)


戦時中の日本人の被害性と加害性についての作品。喜楽亭の歴史から始まり、横山隆一や京都学派まで出てきてインテリな内容で全ては理解できなかったが、脳汁ドバドバな感じが良かった。 喜楽亭が心配になるくらい震えるのも良かった。
(10/5 河原行三@あいトリ楽しいbot)


作品は世界の窓、だからたとえ現実を扱っていても自分は安全圏にいるのが普通だが、それを打ち砕いてくる稀有な作品。何だよ散華って、と何度も呟いてしまった。詩/修辞は、芸術は、思想は時に真実を覆い隠すのに使われる。
(10/1 なお)


「波」「風」「虚無」までは、繰り返しの多いフッテージと引用テキストとの関係が曖昧で、魅力は引用元自体でしかないと思わされるが、対の「子どもたち」で突如全てが立体的にリンクする。あの送風機は建物を揺らす風でありプロペラであり映写機でもあった。
(9/28 カスホ)


ツェーニン の 旅館アポリア は評判どおり圧巻
この場所である必然性と顔無き人々の高いメッセージ性、12分×7と長いが惹きつけられる
【顔の無い子が"無"に塗り潰す】

④-1と④-2の間で双方を併せ見るのが楽しかったが、他に誰もやってなかった…
(9/21 虎之介)


喜楽亭の建物が歪み難題にうごめく。戦場と日常の狭間はどこにあるのだろう。
魂を留めておきたいものたちにとって呪われたくない。荒魂を鎮魂しないことには、五体腐乱して、故郷に帰えらせなかったのか。
(9/17 月探偵 満月飛地)

喜楽亭でシンガポール出身のツーニェン「旅館アポリア」、かつてここに泊まった特攻隊員や太平洋戦争について、小津安二郎作品の登場人物の顔だけを隠した映像を引用しながら語る。そこには小津への敬意と批判の両方がみてとれる気がした
(9/15 annakariina 安中里衣奈)


畳に座して撮ったようなアングルの小津映画が暗がりの中で地続きになる。囁き声のスピーカーのそばで微細な音ズレを味わう。足早に見ていい作品ではない。
(9/11 かしゅらって)


地域の文脈・歴史的文脈・会場との文脈を生かした再現不可能な展示という意味では、過去4回を含めても、個人的にベストといいたい傑作。
(8/21 武藤隆)


豊田の喜楽亭が評判通りすごかった。
日本建築の部屋を移動しながら12分の映像を7箇所体験するので、1時間半以上かかる大作。
映像の引用や処理の仕方、声優の重層的なナレーションとささやき声、波・風・虚無を表す特殊効果に圧倒される。
(8/16 HANAMI Tadashi)

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ホー・ツーニェン
1976年シンガポール生まれ
シンガポール拠点
1965年に独立するまで、彼の出身地であるシンガポールは、19世紀は英国領であり、太平洋戦争中は日本の軍政下に置かれていた。彼は、歴史の記録や伝承を丹念にリサーチし、アジア全域にまたがる複雑な物語を美しい織物のように紡ぎ出す。その作品からは、単一的な視点を越えた、多層的なアジアの歴史が透けて見えてくる。映像、インスタレーション、サウンド、演劇といった従来のジャンルを自由に横断しつつ展開するその世界観は、壮麗さや優雅さをまといつつ、虚構と真実の間で「正史から抜け落ちた物語」を亡霊のように蘇らせる。彼の語りによってめくるめく変化をとげる歴史が、時に暗く、時に妖艶に観る者を魅了し、現代につながる近代以降のアジアの問題に光を当てる。

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