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一生使える「アンガーマネジメント」の基本(ゲスト:戸田久実氏)

フライヤーが主催するオンラインコミュニティflier book laboでは、さまざまな会員限定サービスを提供しています。その魅力をちょっとだけ体験していただける無料のランチタイムセッションが、2024年6月6日に開催されました。

ゲストスピーカーは、オンライン講座「flier book camp」で講師を務めてくださる戸田久実さんです。戸田久実さんが7月より担当する講座は、題して「怒りとの上手な付き合い方を学ぶ「アンガーマネジメント」実践講座 」。

今回のセッションでは、株式会社フライヤーで「flier book camp」企画運営を担当する久保彩のファシリテーションで、プログラムの内容を先取りしてご紹介いただきました!

【スピーカー】
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 代表理事 戸田久実 氏
株式会社フライヤー 執行役員CCO 久保彩 氏


アンガーマネジメントとは
怒りと上手に付き合うための心理トレーニング

久保彩氏(以下、久保)
本日のイベントは『一生使える「アンガーマネジメント」の基本』というテーマですが、まず最初に「アンガーマネジメントとは何か」というところからお伺いしてもよろしいでしょうか。

戸田久実氏(以下、戸田)
アンガーマネジメントとは、一言で言うと怒りと上手に付き合うための心理トレーニングです。「あの時あんな怒り方しなきゃよかった」「あのタイミングで怒っておけばよかった」など、怒りで後悔しないことを目指すものになります。
アンガーマネジメント=怒らないようにするためのものと勘違いされている方も多いのですが、実はそんなことはないんです。怒る必要のあることとないことの線引きができて、怒る必要があると判断したら適切な怒り方ができる、というように怒りと上手に付き合える状態を目指していきます。

久保:「怒り」って感情の中でもすごく強いものですよね。理性的だった人も急に変わってしまったり、普段の自分ではないような言動をしてしまって後悔したり、ということがあると思うんですが、本当に怒りの線引きができるようになるのでしょうか。

戸田:初めてアンガーマネジメントの講座を受ける方にもそのような質問をよくいただくのですが、できるようになります。ただし、例えば今日このセミナーを聞いたからといって、明日から急に変わるということは期待できません。先ほど「心理トレーニング」という言葉を使いましたが、日々アンガーマネジメントのトレーニングを意識して実践していくことが大事です。筋トレとかダイエットと同じですね。本を読んだだけでは痩せないし、日々コツコツ努力していった結果、体重が減るという効果を得られるわけなので。

久保:ダイエットという言葉が出ましたが、「どうして食欲のコントロールはできるのに、怒りのコントロールは難しいんでしょうか?」という質問をいただいております。

戸田:怒りって私たちにとって身近な感情だと思うんですが、そもそも怒りがどんな感情か理解している人って結構少ないんです。理解していないものを上手く扱うことってできないですよね。
また、ダイエットでも「明日からやろう」と漠然と思っているよりも、何ヶ月後に体重何kg、こういう体型になりたいという目標設定をして、具体的にどんな行動をしていくかという計画を立てると実践しやすくなると思います。怒りに対してそのように取り組んだことってほぼないと思うんです。

久保:確かに「怒りたくない」という極端な理想を描いている気がします。

戸田:怒りは人間にとって自然な感情なので、「怒りたくない」「怒りという感情を持ちたくない」というのも不自然だと思っています。そもそも怒りとはどんな感情なのか、ということを理解して紐解く。そして私はこの感情をどう扱っていったらいいんだろうという行動計画を立てていく、ということが一番の近道だと思います。

怒りを感じるのは悪いことではない

久保:なるほど。では怒りとはどういう感情なのか、を詳しくお伺いできればと思います。

戸田:先ほど怒りは人間にとって自然な感情だとお話しましたが、怒りを感じなくなったら、その他の嬉しい、悲しいなどの感情もなくなってしまう可能性が高いと言われています。だからまずは怒りって感じていいんだ、怒ってもいいんだという認識を持つことが必要です。
怒りという感情を表現したことで、本気度や真剣さが伝わったり、何かが変わったりという経験は皆さんあるんじゃないかと思います。だから怒りを感じるのは悪いことではなく、それに振り回されないこと、適切な使い方や表現をすることが大切という認識を持ってほしいです。それと、怒りには「防衛感情」という役割があります。

久保:自分自身を守るための感情ということですね。

戸田:そうですね。心と身体の安心・安全が脅かされそうになったら、怒りを持って対応するという本能があります。例えば駅や職場の階段を降りている最中に、後ろから走って降りてきた人にぶつかられて危うく落ちそうになったら怒りますよね。または、ご自身の大事な価値観を否定されたり、自尊心が傷つくようなことを言われたりしたら、それも怒りを覚えると思います。
また、私たちが怒りを感じる時は、自分の「べき」が破られた時だとアンガーマネジメント協会では伝えています。

久保:「こうあるべき」の「べき」ですね。戸田さんが普段様々な方とお話する中で、どういう「べき」が多い・少ないというような傾向はあるんでしょうか?

戸田:何が多い・少ないというよりも、抽象的な表現になっていることが多いですね。よくあるのは「ルールを守るべき」「マナーを守るべき」など規則に関わるものが出てくることが多いです。しかし、マナーと言ってもとても幅が広いので、そのうちのどんなことをどれだけ守ってほしいのかというのは本当に人それぞれなんです。それを相手との共通認識にするための言語化が大事なんですが、自分自身もそこまで明確になっていないという人が多いと思います。

「べき」の境界線を明確にする

戸田:「べき」の境界線を明確にするために、アンガーマネジメントのトレーニングの一つである「思考のコントロール」というものがあります。1番の「許せるゾーン」は100%OKの理想的な状態で、ここに当てはまるのであれば怒りは全く感じないという範囲。2番の「まぁ許せるゾーン」は多少イラっとしますが許容できる範囲。この2番がとても重要で、1番しかないと、そこに当てはまらないことが次々に出てくるのでイライラしがちになります。「せめてこうだったらOK」という範囲を設けてほしいです。3番の「許せないゾーン」は許容できない範囲なので、ここに当てはまるのが怒る必要のあることです。

ご自身の大事にしている「べき」という価値観において、1〜3番がそれぞれどこからどこまでなのかというのを皆さんには考えてほしいと思っています。

久保:以前戸田さんにお話を伺った時に、この3つの境界線を明らかにした上で、許容できないことについては相手にリクエストとして伝えるという言葉がとても印象的でした。

戸田:そうですね。一般的に怒ることに対してのハードルを高く設けている方が多いと感じます。怒るというのは感情的に言うことで、怒ったら人間関係を壊すのではないかというようなイメージがあると思います。怒りを感じる時というのは自分の「べき」、理想や願望などが破られた時なので、相手に対して「今後はこうしてほしい」というのをリクエストとして伝えてほしいと思います。

久保:例えばリクエストを伝えた時に、相手が反論や拒否をしてきたらどうすれば良いのでしょうか?

戸田:他人がどう判断して動いてくれるかまではコントロールできないので、コミュニケーションのゴールを「自分のリクエストを知ってもらうこと」に変えることも時には必要だと思っています。コントロールできる範囲とできない範囲を見極めて、できないと思ったら「これ以上イライラしないために自分ができることって何だろう?」と考えて行動の選択をすることも重要なポイントです。

アンガーマネジメントは、怒りから解放されるメソッドではなく、怒りと上手に付き合うための心理トレーニングなので、どうにもならないことへの怒りとも時には付き合っていかなければなりません。それを必要以上の不毛な怒りにせずに、その都度適切な行動を選べるようになってほしいと思います。

自分の感情や価値観に向き合う4ヶ月間

久保:今回、4ヶ月の講座でアンガーマネジメントを実践していくわけですが、最後に講座の意義やポイントについてお伺いしてもよろしいでしょうか。

戸田:本日、久保さんとアンガーマネジメントについて色々と語ってきましたが、これを講座では限られた人数の中でグループワークなども入れながら進めていきます。皆さんそれぞれが意見を共有し合うことで新たな気づきや相乗効果も生まれると思います。
4ヶ月かけて、ご自身の怒りを上手く扱えて、建設的な判断や行動が選べるようになる状態を一緒に伴走しながら目指していきたいと思っています。

久保:ありがとうございます。DAY1前には「アンガーマネジメント診断」という自分の怒りのタイプを動物で例えてくれる診断を受ける予定になっています。いきなり自分の核に向き合うというよりは、少し客観的になるところから入れるというのが今回の講座の面白いところかなと思います。

戸田:これまで多くの皆さんのアンガーマネジメント研修を担当していますが、ありがたいことに多くの方から「とても生きやすくなった」「パートナーや周りとの人間関係がスムーズになった」という声をいただいております。今回の講座を通して、多くの方がそうなれば良いなと思っております。


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戸田久実(とだ くみ)
アドット・コミュニケーション株式会社 代表取締役
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 代表理事

立教大学文学部卒業後、株式会社服部セイコー(現セイコーグループ株式会社)にて営業、その後音楽業界企業にて社長秘書を経て2008年にアドット・コミュニケーション株式会社を設立。
民間企業、官公庁の研修・講演の講師の仕事を歴任し、登壇数は4,000 回を超え、指導人数は25 万人に及ぶ。
著書は、『アクティブ・リスニング』『アンガーマネジメント』『アサーティブ・コミュニケーション』『アンガーマネジメント怒らない伝え方』『アドラー流たった1分で伝わる言い方』など多数。中国、韓国、タイ、台湾でも翻訳出版され累計25万部を超える。

久保彩(くぼ あや)
株式会社フライヤー 執行役員CCO(Chief Customer Officer)
カスタマーエンゲージメントDiv ゼネラルマネジャー

大学卒業後、大手メーカーにてシステム開発の企画・開発・PJマネジメントに携わる。その後、総合系コンサルティング・ファームで大手企業の新規事業/新規サービスの企画・立上・展開を担いながらMBAを取得。2020年よりフライヤーの新規事業担当 執行役員に就任。読書の新しい価値を追求するコミュニティflier book labo、本から深く学ぶflier book camp企画運営責任者。
2023年1月よりカスタマーサクセス責任者兼務。
2024年3月よりCCO就任。

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