祝勝会トナメってもう飽きたよね?

1 はじめに

 みなさんこんにちは、えりぞうです。

 タイトルがまた過激なのはすみません。こうでもしないとレビュー数が増えないのです。それにしても多いですよね、祝勝会トナメ。今日は○○さんの祝勝、明日は××さんの祝勝、とアミューズメントカジノ界隈では、それこそ毎週どこかで誰かのお祝いがされている訳です。

 今回はその祝勝会トナメについての本質問題点を解説していきます。

 また店舗の方から、「余計な事言うな。放っておいてくれ!」なんて声が聞こえてきそうですが、これは重要な事なんです。
 地球と月を往復する宇宙船を拾ったとして、月との往復はその宇宙船の構造がわからなくても可能ですが、もし火星まで行きたいとなった時には宇宙船の仕組みを理解して改造できないといけませんよね。
 それと同じでこの記事では、祝勝会トナメの本質を理解してその先のマーケティングに繋げていく事が目的です。どうぞお付き合いください。

2 祝勝会トナメの起源と黎明期

 まず祝勝会トナメの生い立ちを見ていきましょう。
 僕の記憶の中で最も古い祝勝会トナメ8年ぐらい前の六本木にあるミリオンフェスタで、shopmakerさんという有名なプレイヤーがWSOPEで準優勝された時のお祝いで開催されました。(もっと遡った情報がありましたらご指摘ください)

 その後、何年か時が経ち、2013年頃に僕が企画サポートしていた東京dePOKERで、当時の常連プレイヤーが海外やJOPTなどで結構活躍されていた事をきっかけに祝勝会トナメを多く企画する事になった訳です。
 当時、東京dePOKERマネージャーのカツマさんとはこんな感じの会話でした。
 「○○さんが海外で優勝したから祝勝イベントやろうか」
 「いいですね。みんな呼んでパァ~ってやってその後に近くのお洒落な個室借りて打ち上げやりましょう。」
 「トナメ参加費いくらぐらいにする?」
 「多分○○さんの周りのプレイヤーは安い金額じゃ満足できないでしょうから8,000円ぐらいでいいんじゃないですかね?」

 と、こんな感じで祝勝会トナメというよりかは、祝勝イベントの中にトナメと打ち上げがセットになって、みんなでお祭りしようみたいなノリでした。勿論、運営継続の為に利益はある程度計算してます。けど、利益ありきなビジネスライクではなく、金額設定や内容など、どうすればお客が盛り上がるか、そういう観点でのみ考えていた訳です。
 勿論、祝勝会イベントは毎回の大盛況。シャンパン開けたり、優勝プレイヤーにマイクを持たせてスピーチしてもらったり、その間色々と野次が飛んだりと、ドンチャン騒ぎ。・・・・かと思えば、トーナメント中はみんな真剣にプレイする。という、大人の嗜み的な雰囲気があった訳です。

 このような形で、祝勝会イベントは東京dePOKERの中で機軸イベント的な位置づけとして機能し始めるようになっていきます。幸いにも東京dePOKERのプレイヤーは上手な方が多かったので、数ヶ月に1回はそういうイベントを組み込めたのも大きかったと思います。
 ただ、この頃私とカツマさんは全くもって知る由もありませんでした。まさかこの祝勝会トナメがとんでもない金脈で、それを掘り当ててしまったが故に東京圏のトナメイベントの企画トレンドを大きく変化させてしまった事を・・・。

3 営業方法の変遷

 当時、東京dePOKERの祝勝イベントは企画や、各プレイヤーへの営業活動を当然の如く運営側が行っていました。ご来店頂くお客に直接アプローチしたり、LINEやツイッターでつながっているお客に営業チャットを送信したり、HPやツイッターで宣伝したり、とまあいつもと変わらない普段の営業活動だった訳です。
 そうやってしばらくの間は東京dePOKERやたまにアキバギルドなどで祝勝イベントを行ってきてそれなりの成功を収めていきました。

 そして時は少し経ち、2016年。この頃には運営している店舗の多くが祝勝会トナメを開催するようになります。このあたりから少しずつ祝勝会トナメの営業方法に変化が生まれるようになってきます。
 まず、それまで同様の運営主体の営業方法では集客に苦労するようになってきました。つまりは多くの店舗で祝勝会トナメをやっているからプレミア感がこの頃から既になくなってきた訳です。
 東京dePOKERも例に違わず苦戦し始めます。祝勝会と称したトーナメントで10人ぐらいしか集客できない事態も発生します。この頃に祝勝会トナメは最初の限界を迎えていました。
 「(ああ、もう祝勝会じゃ客を呼べないな。よっぽどの大きなタイトルの優勝じゃない限りは厳しいかな)」

 なんていう諦観したムードがある中、とある3つの祝勝会イベントが状況を一変させます。
 それは2016年5月に東京dePOKERで行われた野崎さんの祝勝会トナメと、2016年7月に池袋ギルドで行われた荒井さんの祝勝会トナメ、そして2016年9月に同じく池袋ギルドで行われたkopaさんの祝勝会トナメでした。
 ご存知ない方にも説明致しますと、お三方共アミューズメントポーカー界では有名人で、野崎さん荒井さんは共にJOPTの放送解説を務めた事のある方々です。そして、kopaさん超スタMASTERSと呼ばれるビッグトーナメントの主催者で、ハンターサイト関係者ではなく一般人としての立ち位置でポーカー業界の発展に尽力してくださっている方です。
 これだけ影響力のある方々なら、店舗側からだけじゃなくてお三方からもそれぞれの友人や仲間に声をかけるだけで絶大な効果がありました。
 そしてその結果、3つの祝勝会は大成功を収めます。野崎さんの祝勝会では50人を超える参加荒井さんの祝勝会ではそれまでの歴代祝勝会の人数の中でレコードとなる68人kopaさんの祝勝会はそれを更に超える80人ものプレイヤーの参加を誘致させる事ができました。

 この事件とも言える出来事は当時の界隈に激震が走りました。なにせオワコン化していた祝勝会トナメが、営業方法を変える事によってまるで色あせた幼虫から綺麗に脱皮した蝶のように生まれ変わったのですから。
 このあたりから祝勝会トナメは、全ての店舗において運営主体の営業方法からプレイヤー主体の営業方法へと変わっていったのです。これが枯れた金脈の奥にあるパンドラの箱で、そこから多くの業(カルマ)を産み落とす事になろうとは誰も気づかず。

4 プレイヤー主体の営業方法の功罪

 先述した通り、祝勝会トナメはその営業方法の変化によって息を吹き返す事に成功しました。さすがにお三方程の人数は呼べないまでも、安定した参加人数をキープできるようになった訳です。
 勿論この営業方法は他の店舗も追随していきます。こうして祝勝会トナメの格式は、その優勝したトナメの規模感より、その優勝したプレイヤーの影響力の方にシフトしていく形になります。そしてこの流れが多くのしがらみや人間関係のもどかしさを発生させていくのです。

 プレイヤーからプレイヤーを誘うと言っても、そのプレイヤー間の友好関係には勿論差があります。ここでは『友人』『仲間』『知り合い』の3つに分けて考えていきます。
 先述したお三方は顔が広いですから、友人仲間だけでその祝勝会トナメの限界人数のキャパシティを超えてしまう事ができます。しかし当たり前ですが全員がそうではありません。普通の一般人レベルに当てはめると、友人なんてよくて4~5人仲間まで広げてもよくて20人くらいが関の山です。という事はまだまだ会場キャパシティまでには程遠いから知り合いにも声をかけていかないといけない訳です、ツイッターDMを使って。

 さて、こういったツイッターDMを受け取る『知り合い』はそれをどう感じるでしょうか。
 「(うーん、○○さんからの招待かぁ。この日は違う店舗に行こうと思ってたんだよなあ。別に行ってもいいんだけど、テーブルで会話できる人がいなかったら嫌だなあ。まあでも断っちゃうと次にどこかで会った時に気まずいしなあ。ちょっと金額見てみようか。・・・い、10,000円!いやあ、ちょっと高いよ。何か適当な言い訳作って断ろうかな。あ、でもそれだと予定していた店舗に行けない・・。)」
 このような葛藤がしばらく続き、中々返信をできないでいるのです。これはかなり陰キャ寄りな考えで極端ですが、これに近い思いをした人は多いのではないのでしょうか。

5 祝勝会トナメの本質

 店舗から営業メールや営業LINEなんてなんの躊躇もなく断れるし、なんなら既読無視だって普通です。しかしそれが優勝した人から「優勝して祝ってもらう事になりましたのでお越し頂けますか」なんて言われたらそりゃ知り合いレベルでも中々断れないですよね。これには、結婚式の招待状が来たのにそれを断るのに似たような罪悪感みたいなものを感じてしまうのです。

 そう、それがこの祝勝会トナメの本質であり、今でもこの営業方法が続いている理由なのです。

 優勝者は、優勝したし店舗側に祝ってもらえるというので無償で他プレイヤーに営業をし、誘われた側は誘われた手前中々断る事ができず結局参加してしまう。そして営業力を持たずして集客をする店舗側、こういった構図が完成します。
 最初はまだそれでもよかった時がありました。当時はまだイベント自体も現在よりかは少なく、知り合い程度でも参加しようという気持ちがありましたから。

 しかし2018年2019年と年月が経過すると共にこういった祝勝会トナメビジネスは更に過熱していき、その数はどんどん増えていきます。増えていけばいくほどプレミア感はなくなっていく訳ですから、知り合いでも中々参加してくれなくなっていくのです。そうなると、もう優勝者1人だけを祝うという形では集客力が弱くなり、成り立たなくなっていきます
 そしてどうなったか、1人だけでは無理なので2、3人と集めて合同祝勝会という形をとっていくのです。

 祝勝会トナメの格式が、トナメ規模からプレイヤー影響力に変わり、そして次は物量戦へと変遷していくのです


 勿論ですが、ビッグトナメのメインイベントの優勝者なんて短期間にそう多くは生まれません。そうして、メインイベントだけではなくサイドイベントの優勝者や、2位3位の方まで一緒に祭られる形になっていくのです。
 サイドイベントまで含めると、JOPT1回だけでも10人以上の優勝者が輩出される訳ですからこれだけで3~4回は祝勝会イベントが可能になる訳です。 

6 祝勝会トナメビジネスはもう衰退している

 まずお断りしますが、ビッグトナメで数百人も出るトナメにもなると、サイドイベントであっても優勝は物凄い偉業である訳です。
 しかしながら、今までの流れを省みるとそういったサイド優勝の方々まで集めて合同祝勝会として祝うのは、ビジネス上そうならざるを得なかったと考えるのが自然でしょう。勿論、優勝者1人だけの祝勝会トナメは存在しますが、それはただ単に他に祝う事のできる優勝者が他に存在しなかっただけの事で、もし他に囲える優勝者がいたら必ず同じ会にアサインしてます。

 そうしてメインサイド問わず、ビッグイベントの優勝者の熾烈な争奪戦が店舗間で行われていきます。時には、同じ優勝者の祝勝会トナメを店舗別に2回行ったなんてケースもざらにあったり、祝勝トナメのサテライトまで開催される始末。サテライト通過したら下手したら全く知らないプレイヤーの祝勝会に出るのかって話です。
 しかしもう気がついていますか?こういう流れにあるという事は既に祝勝会トナメは斜陽にある訳です。決して今までの変遷は熟成する為に歩んできたプロセスではない事に気がついてください。

7 これから祝勝会トナメはどうなっていくのか

 現在の祝勝会のトレンドは物量戦です。とにかく可能であるなら沢山の優勝者を囲い、その人達をまとめて祝う形式です。
 そして金額感も一時期に比べて割とお手ごろになりました。プレミア感がないのでもう高い金額ではあまり勝負できないからです。

 さて、ではこれから先、祝勝会トナメはどうなっていくのでしょうか?

 まずどの店舗も深く考えず(失礼)とりあえず物量戦をしまくっていく訳ですからプレミア感なんて更に喪失していきます。自然と平場のトーナメントとの差がなくなっていく訳です。
 そうなるともうビジネス的な旨みはどんどん薄くなっていきます。そして祝勝会の企画にかける手間も少なくなっていっていずれはほぼほぼテンプレ化していきます。トナメ説明欄の名前だけ変えればOKみたいな。

 でもそれってもう本当に祝ってるの?っていう気持ちになりますよね。私としてはそっちの方に舵を切ってもらいたくないと思っていて、今まで通り優勝した人によって特色のあるトナメを続けてもらいたいと思っています。
 ではどうすればいいのか、それは喪失したプレミア感の代わりに新たな付加価値をつけてあげればいいのです。

 具体的にはって?それは私にもわからないし、仮にアイデアがあるとしてもこの無料記事では言わないですよ。でも、こうしてnoteも始めた訳なのでちょっと新しい祝勝会モデルを考えてみようかなと思います。
 もし思い浮かんだら事業者の皆様、是非買ってくださいね。

8 最後に

 記事のストーリー上、カットする事になってしまったのですが、祝勝会トナメに誘われた側じゃなく、誘った側も相当な苦労や苦心があったと思います。元々運営側だった立場として、こうした集客上のご協力までして頂いた事を深く感謝致します。ありがとうございました

それではまた。

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