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おおうなばら

おとなになったら、

おとなになったら みんな みーんな、
おおうなばらに でてゆきます。

おおきな おふねに のってゆくもの、
ちゅうくらいの おふねに のってゆくもの、
ちいさな おふねに のってゆくもの、
からだひとつ およいでゆくもの。

みんな いろんなほうほうで
おおうなばらを わたってゆく。

みーんな めざすは「ゆうとぴあ」
でもどこにあるのか だれもしりません。

あっちに かすかに みえていた
あの おおきな たいりくをめざして、
ちょっときゅうけい たちよったしまも、
きづけば「ゆうとぴあ」かもしれません。

「ゆうとぴあ」はだれにでも、
ちがうすがたで みえるんだ。
だから ひとにきいても だめ。
じぶんいがいには わからないんですって。

みんな めを こらして さがして、
みんな それぞれ できるほうほうで、
じぶんの しんじた すきなほうほうで、
どうにかこうにか すすんでゆきます。

なかよしあのこは おおきなおふねにのってった。きっぷをとるの たいへんそうだった。

とおりすがりのおにいさん ちゅうくらいのおふね のりごこち わるかったみたい。いまだとさけんで おおきなおふねに とびのった。

だいすきなひと たいせつななかまと ちいさなおふねをせっせかこいで あたしにはもうみえないくらい とおくとおくにいっちゃった。

てづくりいかだのあいつらは とちゅうでいかだがこわれても ちからをあわせてしゅうりして あきらめないで こぎつづけたよ。

すいすいおよぎがじょうずなかのじょは やすむまもなく さかなのように じゆうだった。

あたしはねえ、あたしはねえ、
えっと、うんと、あの、

どうやってここまできたかしら

ここは

ここはどこかしら
みんなどこかしら

おふねにものらず、およぎもせずに、
うきわでぷかぷか。

うきわでぷかぷかしているみたい。

おかしいな、あたしも いっしょうけんめい
すすんでいると おもってたのに。

こっちが あたしの「ゆうとぴあ」だと
ずっとずっと おもってたのに。

しらないうちに しおのながれにながされて、
「ゆうとぴあ」だってみえなくなって、
かもめもいない おきまできちゃったみたい。

どっちにいったらいいのかも、
どっちにいきたいのかも わからないで、
そらとうみだけ ここにある。

だれかいませんか

だれかいませんか

さんさん はりきる おひさまのした、
ぴかんと ほほえみかける おつきさまのした、
あさがきても よるがきても、
ぷかぷか、ぷかぷか、ぷかぷか、ぷかぷか。

おつきさまの ふぁっしょんしょー
なんどかたちをかえたって、
おひさまの かーてんこーる
なみだのたび あんこーるしてみたって、
ひざしはあつく、うみは つめたいまんま。
ああ こかげのやわらかなこもれび こひしい。

いっそ うきわなんて てばなして
このつめたいうみのそこで
このまま ねむってしまえるような
いくじがあればよかったや。

もうやめたいあがりたい。らくになりたい。
あたたかいだいちで ずっと ねむっていたい。

だれかいませんか

ぱちゃりぱちゃり、
なみは かぜがはこんだ こもりうただ。

ゆらりゆらり、
(なにもわからない)
ここはだれもいない おおうなばら。

(なにもわからない)
あたしだけが ゆれている。

しづかに、しづかに、
ひとりぽっち。

めいでい、めいでい。

あたしだけがゆれている。

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