【日記】間違い電話受付タナカ

私の携帯番号は呪われている。
とにかく間違い電話が多い。
その間違い電話は私の統計上2パターンあるとがわかっている。
1つめのパターンは、知らないクリニックの電話番号が、私の携帯番号と似ているらしく、間違えてくる人が多数いるということ。
大体はお年寄りが間違えて電話を掛けてくる。
それも困った様子で、
「ああ、やっと繋がった。今おたくの前にいるんだけどまだ扉開かない?」とか、
「次回の予約なんだけど…」とか、
一人一人に私はそのクリニックでは無いと答えるものの、電話番号を間違えているという現実の理解に苦しむ患者さんが多い。
「◯◯クリニックに掛けてるはずなんだけど…」と。
「申し訳ないですけど、ちゃんと確認して◯◯クリニックに電話してもらえませんか?」
と、答える。
1番最初の「おたくの前にいるんだけど…」の電話の時は、ゾワっとしたのを覚えている。
まだそれが間違い電話とは分かっていなかったので、我が家に知らない人が来て、そして玄関の前に立っているのかと思ってしまった。それも、初対面ではない、慣れた口調だったから、あれ?親戚の誰か?とだいぶ混乱した。

2つめのパターンは、
以前この番号を使っていた人のおかげで、定期的に無数の知らない人から電話が掛かってくる。もうかれこれ5年ほどこの問題を抱えている。
いや、向こうからしたら今まで同じ相手にかけていたはずなのに突然、知らない人が電話に出るという不思議なことが起きていると思っているだろう。

「はい、もしもし。」
「あ、よしみちゃん?」
「…笑。違います。」
「え?よしみちゃんじゃないのォ?」
「はい、田中と申します。」
「よしみちゃんに電話をかけたんだけど…。こちら、モチヅキです。」
「ちょっと知らないですね。」
「あなたは誰ですか?」
「わたしは田中です。」
「そうですか。ごめんなさいね。」
「いえいえ、失礼いたします。」

という電話。
恐らく、よしみという人がこの携帯番号を昔使っていてなんらかの理由で解約しこの番号を手放し、私が契約した時にたまたまこの番号を引き継いだということなのだろうか。よしみという人は新たな携帯番号を入手したたタイミングで周りの人たちへ新しく取得した番号をアナウンスすれば良いものの、数名のアナウンスされていない人たちが、私からの塩対応を受ける羽目になっている。可哀想だ。
私がよしみでないことを一度伝えても、同じ人が、よしみと信じてまたかけてくるケースもありうんざりだった。

「はい、もしもし。」
「あ!よしみィ〜?今どこにいるの〜?」
「どちら様ですか?」
「あれ?よしみじゃないの?」
「違うんです。そのよしみさんから新しい携帯番号教えてもらいましたか?」
「あっれー。じゃああなたはよしみじゃないのね?」
「はい。田中と申します。失礼いたします。」
よしみじゃなくてごめんなさい。
そりゃ期待には応えたいが、私はどうしたってタナカなのだ。知らぬよしみになりきることも出来ない。

この人へは、よしみ目的の電話に迷惑していることを伝えた。すると、よしみに伝えておくと言ってくれた。なかなか気が効く人だ。
電話を切る時に、よしみへの電話で迷惑をかけてしまったことを謝られた。そして、迷惑電話をしたかったわけでは無いことを理解して欲しいと言われた。少し私が怒ってしまったから、電話越しのよしみ関係者はとにかく謝罪をしてきた。でも、よしみ関係者は無数にいるのだよ。私の煮えたぎるこの気持ちは収まることはないだろう。

よしみコールは減ることはなく、1件1件よしみでは無いことを説明して、申し訳ないけれど着信拒否するしかなかった。

今ではよしみコールは減ったけれど、私の着信拒否リストはえげつない量になった。
私の推測だが、恐らくよしみは営業の仕事をしていたんだと思う。
その仕事が続いてるかどうかはわからないが、もしも営業職を辞めたのなら、その時に使っていた携帯電話は解約する、だから、この番号にかけてくる人たちはよしみのお客さんだったかもしれない。勝手な妄想だけれど。
よしみコールをしてきた人たちは、よしみから買った商品に関しての問い合わせだっただろう。色々と聞き出し、その会社のコールセンターなどに問い合わせてみたらどうかという案内ぐらいなら私には出来そうだが、その後に頼られても困るし、パターン1もこなさなければならないので、しなかった。私は冷たい人間だ。
かかってくる知らない番号の電話は、自分への用事でなく、全く知らないよしみへの用事で、そんなことで自分の携帯電話が繰り返し鳴るのは、不思議な感覚だったし、知らない番号=よしみコールもしくは、◯◯クリニックになってしまっている。
電話越しでもいいから、よしみや◯◯クリニックへ私の努力をたっぷりと語ってやりたいものだ。

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