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「君が僕を知ってる」 〜2つの関係性〜

ラッキーラクーン誌に2003年から連載され、後に1冊にまとめられたエッセイ&写真集「忌野地図」。
ロック好きの人ならRCの清志郎さんの?と、タイトルで思い至る一冊だ。
著者は、ラジオ構成など手掛ける作家と、ミュージシャンを主に撮影するカメラマン。
本の内容は、忌野清志郎さんの歌を取り上げて、一曲づつにエッセイと写真で綴られ、構成されている。
では、歌の世界を表現したもの?
いやいや、違う。
著者はそうではないという。
畏れ多くて出来ない。
そりゃそーかも。そして、歌との関係性を表せていたら嬉しいという。
なので、この一冊の中の一編について、私もエッセイと写真の関係性を考えてみた。

「君が僕を知ってる」2005年の8月に掲載された一編。
テキストを読むと、内容は他のテキストに比べて直接RCのキヨシローとチャボの2人のことに触れられ、著者から見た2人の関係性と取り上げた今回の歌「君が僕を知っている」の歌詞の世界の関係を結びづけている。
歌詞を読むとこれは恋愛の歌だと思われるが、ライブのステージではキヨシローとチャボの掛け合いで「わかっていてくれる」と畳み掛けるように繰り返される。
あたかも、この2人が互いにわかり合っていると、歌っているかのように思える。
そしてその掛け合いを、2人は楽しんでいたんだと思わせるように、RCの解散後も同じステージに2人が立つといつも歌われていたという。
著者はそれに感銘を受けているように、綴られている。

このテキストに用意された写真は、窓辺にある木製のテーブルに、2つのマグカップが俯瞰で写っている。
その横には、カバーがはずされ、z表紙の角が少し折れ曲がった文庫本。

私がこの「忌野地図」を手にしたのは2020年のことで、これを読んで思い出したのは最後の忌野清志郎ロックンロールショー日比谷野音で歌われた「君が僕を知っている」だった。
チャボと一緒に歌っていたのは、カメラマンの友人であるロック歌手。
ーーーーきっと、チャボはこの曲で掛け合いをやりたかったんだろう。ーーーー
と、そんなことを思った。
チャボとキヨシロー。
必ず歌ったという、「君が僕を知ってる」。
2人の掛け合いを、まるで再現するかのような。
そんな風に思えた。

たぶん、「忌野地図」の「君が僕を知ってる」の写真にそんな意味合いはないというかもしれないけれど、カメラマンとその友人の関係性をも込められた写真のように私には思われた。カバーのはずされた文庫本がRCの誰かを示すのなら、私の思い込みでしかないのだが。
カメラマンの友人で、文庫本を傍から離すことのない人といえば彼しか思い浮かばなかったから。
「君が僕を知ってる」
それは、きっとカメラマンとその友人にも当てはまる歌なのかなと。
この一枚の写真には、そんな関係性も込められているのかもと。

“何から何まで君が わかっていてくれる 僕の事すべて わかっていてくれる“

出典 引用 「君が僕を知ってる」作詞作曲:忌野清志郎 編曲:RCサクセション 椎名和夫
       発売元:(株)キティレコード アルバム「EPLP」より      
      「忌野地図」著者 大内幹男 岡田貴之 発売元:株式会社バースデイズ
「忌野地図」でタイトルが「君が僕を知ってる」となっているのでこちらを採用しました。

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