チューリップアンジェリケ(誕生花ss)
大きな、薄皮の重なりが、滴の形に膨らんで、私の頭上より少し上の方で弓なりに反り、空の藍色を透かしている。遥か遠くに一番星が輝き、私は時間を忘れていく。
透明な、花びらの形をしたそれに手を掛ける。あっけなく、薄い薄いその皮が剥がれた。風より軽いそれは、微かに弾力があり、齧るとほのかに甘かった。薄氷のような、氷砂糖のような冷感が、掌に心地良い。剥がれた皮の下には、また皮がある。透明な皮が透明な皮に無限に重なり、大きな花の内部には何があるのか知れない。私は次の皮に手を掛ける。