ハエマンサス(誕生花ss)
マユ君の家はここら一帯の地主で、先祖の代から裕福だったらしい。ぼくは物心ついてからというもの、マユ君には逆らうな、機嫌を損ねるんじゃない、と親から言いつけられてきた。祖父の代では、マユ君の家に米を納めなかった農家の田地が一晩で水を絶たれ、村八分にされ、虐め抜かれたと言う。そんな話を聞かされてきたから、いざマユ君に会ってみると拍子抜けしてしまった。
「ぼくん家の話を聞いてるんだろ」
小さな学校の、十数名しか使わない教室の隅っこで、マユ君は呟いた。入学早々、変に気を遣われるか