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ていの創作小説

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自分の創作小説をまとめています。
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2020年11月の記事一覧

ガマズミ(誕生花ss)

 気がついたら、市内で一番高いビルの屋上に立っていた。毎朝、通勤バスの中から、あそこから…

てい
4年前

アザレア(誕生花ss)

 熱で朦朧とする頭に、ひんやりとした感触があった。目を開くと、坊っちゃまの手が、私の額に…

てい
4年前
1

ルピナス(誕生花ss)

 呼吸するたび、高密度の幸福が肺を満たす。天は高く、大地には美しい白色の花が咲き乱れてい…

てい
4年前
3

マネッチア(誕生花ss)

 私たちの一族は口から先に生まれてくる。比喩ではなく。母親の胎内で頭を下に準備万端整えて…

てい
4年前

ノースポール(誕生花ss)

 りん、りん、という音が、微かに、地面に張った氷の割れる小さな音の合間を縫うように、北の…

てい
4年前

ピラカンサ(誕生花ss)

「好き」と「大好き」の間には、途方もなく深く長い隔たりがある。さらに「愛する」なんて段階…

てい
4年前

ハエマンサス(誕生花ss)

 マユ君の家はここら一帯の地主で、先祖の代から裕福だったらしい。ぼくは物心ついてからというもの、マユ君には逆らうな、機嫌を損ねるんじゃない、と親から言いつけられてきた。祖父の代では、マユ君の家に米を納めなかった農家の田地が一晩で水を絶たれ、村八分にされ、虐め抜かれたと言う。そんな話を聞かされてきたから、いざマユ君に会ってみると拍子抜けしてしまった。 「ぼくん家の話を聞いてるんだろ」  小さな学校の、十数名しか使わない教室の隅っこで、マユ君は呟いた。入学早々、変に気を遣われるか

白バラ(誕生花ss)

 初めに贈られたのは、一本の白薔薇だった。行きつけの喫茶店の店員をしていた貴方が、他の客…

てい
4年前
1

ランタナ(誕生花ss)

 案の定、男は私を待っていた。退屈そうに街路樹に寄りかかっていたが、私を見つけると嬉しそ…

てい
4年前
1

カラスウリ(誕生花ss)

 男嫌いで有名なカラス先輩は、校内で男子とすれ違う度に顔をしかめ、露骨に避けようとする。…

てい
4年前

スターチス(誕生花ss)

 生前の凡ゆるデータを基に故人を仮想空間上に再現し、その言動をリアルタイムでシミュレーシ…

てい
4年前
2

コエビソウ(誕生花ss)

 美しい女性だった。それが死のうとしていた。  まず目に入ったのが赤いハイヒール。その高…

てい
4年前
2

アキレア(誕生花ss)

 その戦は酷かった。長期に渡った戦闘に民は疲弊し、周縁の土地は奪われた。病も流行り、この…

てい
4年前

クローバー(誕生花ss)

 貴方のために白詰草を敷き詰めました。ほら、貴方は白詰草の、特別な一葉を欲しがったじゃありませんか。ここから見渡す限り、全て貴方のための白詰草畑です。  こんなにどうやって敷き詰めたのかって、そりゃあ作ったのに決まっているじゃありませんか。貴方と私のために、この一面の白詰草全てを。試験管の中で調整するのも大変でした。  ええ、どうぞ探してみてご覧なさい。確か四つ葉も沢山紛れていたはずです。さあさあ、その中に分け入って、子どものように。採れた葉はこの籠に入れて、持ってお帰りなさ