見出し画像

子供の情景

サマータイムから
すっかり日照時間が長くなり、夏休みまであとひと月。
フランスは年度末だ。
5月は連休が続き、花が咲き乱れる中
あちこちでイベントがあり
子供達も浮き足立って落ちつかない。

そんな中、娘は6月に3回、
リサイタルを予定している。

今まで私達両親や友達、先輩達と
一緒に様々なコンサートに参加してきたが
ひとりで1時間近く弾くリサイタルは初めてだ。


TGVの中で

昨日は日帰りでパリに、
ピアニスト、クレール=マリール・ル・ゲ先生の
レッスンを受けに行ってきた。
エクソンプロヴァンスから列車TGVに乗れば
パリには3時間で着く。

このリサイタルでは
バッハ フランス組曲2番
ショパン 練習曲op.25-2
トゥリーナ ジプシー舞曲 セギリーリャ 
シューマン 幻想小曲集 飛翔
シューマン 子供の情景
シャブリエ スケルツォワルツ

という、なかなか大きなプログラムを用意している。

昨日は、
その中でも苦労しているシューマンの子供の情景を
見ていただいた。

子供の情景とはいうが
決して子供の目線で見た情景ではなく
大人が懐かしむ子供時代を描いた曲であるから
11歳の、まだ現役子供の娘には
難しくて当たり前よと言ってくださった。

いつもクラシック音楽のラジオを聴き
大人顔負けの本も読む娘が
どんなに背伸びをしても
まだ掴めないノスタルジーというものがある。

けれどこの曲は
きっと一生弾き続けてどんどん変わっていくのだから
今のあなたの世界で想像力を広げて弾いたらよいのよと
仰った。
それから一曲ずつ
ここは例えばママにおねがいおねがい、と
可愛いく一生懸命ねだっている感じ、
ここはもうすぐお友達との別れが迫って寂しい感じ、
など、娘の日々の暮らしに寄り添った
丁寧なアドバイスをいただいた。

娘の先生であるマルセイユ音楽院のヴェロニク先生は
作曲家の意図をとにかく大切に
一音一音に厳しくこだわって
深い音楽を作っていく。
8歳の時から見て頂いているが
娘を子供扱いしたことはない。
そこが大好き、なのでもあるが
昨日は優しいクレール=マリーさんにお母さんのような
目線で見てもらったことも良かったようだ。

決して褒められたわけではないのに
レッスンのあとは
がんばる!と、やる気をみせていた。
なかなか打たれ強い。 

もうすぐ小学校生活も終わり。
時々切なくなることもある。
ピアノの下で眠りたいと
マットレスや毛布を持ち込んで夜を過ごすほど
ピアノが好きでも、
11歳でひとりでリサイタルをするという重みに
押しつぶされはしないか、
母として心配になることもある。

できないかも、と泣くこともある。
しなくても良いよ、と言ってしまいたくなる。

それでも今の彼女にしか弾けない、
子供の情景が広がるのを
信じている。

帰りに立ち寄ったパッサージュ










この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?