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竹からトイレットペーパーをつくるのは、何が難しいのか?(BambooRoll国産化への道のり #02)

竹でつくったトイレットペーパーの定期便「BambooRoll」を発売開始してからも、ずっと考えていたこと。それは、バンブーロールの国産化だ。日本の竹を使って、日本でトイレットペーパーの製紙ができないだろうか。

工務店「アトリエデフ」が「たのしく竹林プロジェクト」として実施していた竹林伐採に何度も参加して、伐採した竹を使わせてもらえないかと相談することにしたところまでを、前回の記事で書いた。

竹は、どうしたら紙になるのか?

そもそも、竹をどうしたら、紙にすることができるのだろうか。竹という原料についてはさておき、紙をつくる工程には、
1)パルプ化
2)調整
3)抄紙(しょうし)・加工・仕上げ

の大きく分けて3つの工程があるそうだ。

手漉き和紙をつくってみた経験がある人であれば、なんとなく「パルプ化」のイメージがつくかもしれない。紙となる原料を水に入れてどろどろの状態にして、枠に入れ、乾かすことで紙になる。ただ、それはあくまで、紙となる原料を使ったときの話だ。

紙が今よりもっと貴重なものだった時代には、どうしていたのだろうか。それが一つの手がかりにもなった。

だいぶ時代を遡るが、紙(paper)の語源としても知られる「パピルス」は、古代エジプト文明において書写材料として発展した。このパピルスは、ナイル川流域のカヤツリグサ科の水草のことで、パピルスの茎から皮をはぎ、茎の中心部にある芯を薄く切ったものが原料だった。

現在のトルコ(小アジア)からヨーロッパの地域では、紀元前2世紀頃には、羊皮紙(パーチメント)が書写材料として普及していた。この原料は動物性で、羊、山羊、子牛などの皮を洗い、不純物を取り除いて、引き伸ばしながら表面をなめらかにしたものだ。

一方で中国では、かつて麻の紙がつくられていた。麻を切り刻んだもの、樹皮などを灰汁で煮て、繊維を取り出してから臼でひき、ふたたび水の中で繊維を分散させて、枠に張った網で漉(す)く。これは、現在の紙の製造法と根幹では変わらないようだ。

日本においては、どうだろう。中国もそうだが、日本では主な筆記具が筆と墨であったことから、紙に求められる性質が西洋の紙とは異なっていたようだ。当時の紙は、「流し梳き」と呼ばれる、何度も簀桁(すけた)で紙料液を汲み込んで、簀の上にできた湿紙を重ねていくことでできる“薄手の紙”が主流だった。原料は、楮(こうぞ)や雁皮(がんぴ)などだ。

他にも、“木材”ではなく“非木材”原料として、藁やケナフ(東南アジアやアフリカなどに生育するアオイ科ハイビスカス属の植物)、バガス(さとうきびを搾った残りかす)といった原料を使うことが、再生紙と並んで、森林資源保護の有効な手段として期待されていることがわかってきた(「非木材」の紙の原料について、どんな種類があるかはこちら)。

ここから見えてきたことは、紙の原料として木材を使うようになったのは人類の歴史でみればわりと最近のことで、植物によって向き・不向きがあるかもしれないが、煮て、繊維を取り出すという工程で、パルプ(原料から取り出した繊維のこと。原料と紙の間)はつくれる、つまり竹から紙はつくれる、ということだった。

竹からトイレットペーパーをつくるのは、何が難しいのか?

さて、竹という原料が入手できたとして、どんな設備が工場にあれば、パルプがつくれるのだろうか。ここは調査をするのに時間も手間もかかった。そもそも私自身がフリーランスの編集者で、製紙業界での経験があるわけではなく、それはチーム内でみても同じだったこともあるし、例えばどんな商品が世の中にあるのかがわかっても、そのトイレットペーパーを製造した工場が、どんな設備を持っているかまでは簡単にはわからないという理由もあった。

抄紙(しょうし:紙をすくこと)のできそうな企業に連絡をとり、竹でトイレットペーパーをつくりたいと話すと、本当にありがたいことに、力にはなれないけど、と言いつつお話を聞いてくださる企業もあった。例えば、国際紙パルプ商事株式会社のグループ会社で製紙原料を扱う株式会社グリーン山愛の小林哲也さんや、同じく紙製品を扱う桔梗屋紙商事株式会社の早瀬照洋さんにも、家庭紙という業界について、どんな企業があるのか、製紙業界の専門誌のことなど、きめ細やかに教えていただいた。どれだけ感謝をしてもしきれないくらいだ。

他にも、日本の竹で抄紙ができたとしても、(製造にかかる)コストが見合わないと思いますよ、と忠告をしてくださる企業や、トイレットペーパーの抄紙はできないけど、非木材の原料を扱ったことがあるからサンプルをお送りします、と言ってくださった企業もある。

この時点でわかってきたことは、トイレットペーパーを抄紙できる設備のある工場だとしても、パルプという原料をつくることはできない、ということだった。日本のトイレットペーパーは、約4割がパルプで、6割が古紙だが、そのパルプは、2割ほどは輸入している(※)。つまり、原料を自社でつくっている企業は限られる、ということになる。

そして、トイレットペーパーは、家庭紙(ティッシュペーパーやハンドペーパーなど)を製造している工場だとしても、製造をしていない工場もあるということだった。

考えてみれば、トイレットペーパーはとても薄く、引っ張ってもミシン目以外でちぎれたりしない強度も必要で、高度な技術が求められるのかもしれない。そしてジャンボロールと呼ばれる大きなロールがつくられたあと、小巻にしてカットし、パッケージされるまでが一つの製造ラインになっている工場もあれば、トイレットペーパーの芯だけを製造している工場があったり、小巻にしてカット、パッケージのみを請け負う工場があったりと、分業が進んでいることもわかってきた。

さらには、製紙企業が抱える課題にも直面した。製紙業界は、あまりいい言い方ではないかもしれないが“装置産業”といわれており、単位量あたりの単価が低いことから、ずっと稼働を続けざるをえないという現状がある。スーパーやドラッグストアで販売されているトイレットペーパーが、品質がいいにもかかわらず低価格なのは、生産をし続けて「量」を確保しているからだ。

そうした工場に「竹の原料でトイレットペーパーをつくってほしい」と伝えても、原料投入口に入れる原料を変えるためには洗浄が必要で、数日機械の稼働を止めることになってしまう。そうすると、多額の損失が生まれてしまうことも聞いた。

お話を聞いていただけそう、という製紙企業との打ち合わせを重ね、この企業に聞いてみたら?という紹介をいただけたら、その紹介いただいた企業へ連絡をしてみる。地道なやり方ではあるが、それしか方法がなく続けていた中で、ようやく竹をパルプ化できる工場の目処がついてきた。(続く)

(※)製紙原料消費推移より
https://www.jpa.gr.jp/states/pulp/index.html


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