見出し画像

ミナペルホネンの皆川さんから学んだこと。


昨日は朝食会があった。
11名で国際文化会館で素敵な庭園と朝食と、ゲストがファッショブランド、ミナペルホネンの皆川明さんという最高の朝が8時からスタートした。

普段私は、いわゆるネットワーキング的なこういう会には出ないようにしている。自分が費やす時間の対象として、他のことをした方がいいと思ってきたから。でもミナペルホネンの皆川さんの話をこんな少人数で聴ける機会なんてないはず!と思い、参加させていただいた。

ミネペルホネンをご存知の方はnoteだったら多いかもしれない。
創業者が皆川明さんで、95年に自身のレディースファッションブランド「mina」を設立し、2004年にパリコレ参加、2006年には毎日ファッション大賞を受賞された。生地は日本の職人の技術力をいかし、蝶や植物、自然をモチーフに、産地と連携した布地の開発が競争力になっている。
今は代官山や表参道、京都にも直営店があり、どれも本当に素敵なショップばかりなのです。

最近では東京国立美術館で開催されていた「つづく」展が有名で、ブランド25周年ということで、2018年から服作りを開始した私にとっては、本当に大大大先輩。

その会の空気感や、景色や食事、皆川さんの声が相まって、なんだか禅的な感じだった。皆川さんのお話の後に、質疑応答の時間があったので普段感じてきた疑問を聞いてみた。

「私はバッグのデザインを12年やった後に、一昨年からお洋服作りをはじめました。インドでガンジーさんが形成した手紡ぎ、手織のインド綿布の経済振興の在り方に魅了されてインドに自社工房を作りました。
服のお店はまだ3店舗なのですが、バッグから服をやって強烈に思ったことがあります。
それは、“サイズ”です。
私は、ガンジーさんの素晴らしさや、インドの手仕事は本当に多くの人に届けたい普遍的なものだと思っています。だけれど、服にはサイズがあって、着れない人がいることに面くらいました。
大きい方も、太い方も着てもらいたいと思ったらサイズを広く展開したらいいのですが、在庫が多くなることは資源の無駄なのでやりたくありません。
伸縮性の素材は化学繊維が多いし、それはインドのものづくりではありません。
届けたい普遍的な哲学と、実際に着れる人、着ている人が限定されるアパレルって、なんだかとても心の中でズレちゃう感じがするんです。どうですか?」

というのが私のすごく素朴な、現場で感じた質問だった。
みなさんが、人生観や未来の捉え方など崇高な質問をされているのに私は、何だか的を得ていない質問をしてしまったかもしれないが、ずーーーっと悩んでいたので聞いてみたかった。

皆川さんは一瞬顔がビジネスマンになって、即座に私に聞いた。
「年間の生産量は何枚なんですか?」と。

「えっと、、、今は、自社工房はまあ一万着くらいです。」
「だとしたら、日本でいったら数千人に一人買ってもらえたら十分なわけですよね。みんなに届けようっていったって、作れないのですから。工場にはキャパシティというものがあるのですから、それを満たすために、どうしたらいいかと考えればいいのではないですか?だとしたら、これが私のスタイル、丈、サイズ感なんだ!とこだわって作ったほうがいいです。」

私は、その答えを聞いて、なるほどーって思う気持ちが半分、残りは、なんとなく少し、腑に落ちない感じがあった。

帰り道、夕方になっても、夜になっても、お風呂の中でも
「うーーーーーん・・・・。」と一人唸っていた。

私が感じた違和感って何なんだろうか。
違和感の正体を探す行為を私は結構日常的にするし、好きだ。
人間って、根拠が言語化できなくても、「なんとなく・・・」が感覚として残る時がある。そんな時は、必ず根拠があると思った方がいい。
私は100%これまでそうだった。
だから、じっくりその違和感を探そうと思って持ち帰っている。
大抵の場合、そこから、「ああ、自分ってそういう考えなんだ」という自分分析に非常に役に立つからだ。

「工場のキャパシティを満たすことが大事。」
「工場が生きていけることが大事。」
「キャパシティには限界があるから。」

これらの皆川さんのセリフから、私が読み解いたこと。それは、前提としてミナペルホネンさんが「日本で作ってきた」歴史があると思った。
ミネペルホネンさんは21社の日本の素晴らしい工房と何十年も連携をとりながらものづくりをしてきた。その過程は家族のように二人三脚で魅了される。
皆川さんは工場をどうにか守り抜くという強い責任感があると彼の本を読んで私は感じた。

ただ、私の場合は、「自分たちの工場」であって「工場も作っている途中」という明確な違いがそこにはあるんだと思った。
私は、「工場のキャパシティっていうけれど、それは来年には何人雇用できて、何倍になって、、、、インドにはたくさんの織り子さんが存在するから・・・。」と常に巨大な可能性を描いていたのだった。
今は、たった30人で1万着しかできないかもしれない。けれど、将来バングラデシュ の工場のように250人になったら、一体何着できるだろうか?インドのポテンシャルを考えれば決して夢ではない。

ビジネスにおいては、一つの答えを出すのに様々な変数がある。
その変数の中で、何が固定変数なのか、変動することが可能な変数なのかは意思決定を左右する極めて重要なこと。
皆川さんの場合、「日本の職人の技術と知恵を」というブランド哲学があるため、日本の工房の生産能力というのは外注しているなら尚更自ずと固定化された変数になる。
しかし、私たちの場合、相手が発展途上国で国自体が成長過程。そこにきて、自社化しているので、自社の工場能力はもちろん、変動変数だ。

固定変数である日本の生産能力は、あくまで「規模」的な側面だが、皆川さんは「付加価値」という異なる側面においてはどんどん伸ばしていっている。

ブランドも会社も、最上位にくる哲学を戦略や戦術に落とし込むために異なるビジネスモデルを形成している。
自分の質問から、自分の違和感、そしてこのノートに書くことでお互いのブランドが大事にしてきたことが浮かび上がって、私は改めて皆川さんの哲学、姿勢に惚れ惚れしているし、また、自分では気付きにくい自分たちの特殊性も改めて理解した。

そして「カディ(インドの綿布)を伝える手段は、服だけじゃないですよね」って言ってくれたことが、ものすごく、ものすごく、私の右脳を刺激してくれたのだ。時同じくしてインドからラインがきて、インドの社長田口から「面白いもの見つけました!!」と。

生産地と販売地、二つのキャッチボールをしながら変数をどんどん可変でき内製化している面白さは大変だけどたまらないのだ。

早速インドのみんなと話し合おう!!!

出会い、そして刺激、そして思考という1日のサイクルでした。

追伸:写真はインドの職人と私のデザインが形になった衣服です。
(東京大丸店オープンしたんです♪)http://www.edot.jp


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?