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ビッグイシューを通して見てきたこと

昨日は久しぶりにビッグイシュー日本 東京事務所さんにお邪魔しました。
前回伺ったのは、起業してすぐの頃。3〜4年前くらいかなぁ。ご無沙汰しております^^

ビッグイシューは「ホームレスの人の仕事をつくり、自立を応援する」をコンセプトとしたオリジナルの雑誌であり、その雑誌をつくる企業です。絶対に失敗すると言われながら、2020年9月11日に創刊17周年を迎え、月2回発刊の雑誌は392号にもなります。


大学修了間近な24歳、国際経済論の先生が「おもしろいよ」と一冊くださったのが私とビッグイシューの出会いでした。創刊してまだ1〜2年の頃。新宿南口の交差点の販売員さんから購入するようになりました。こざっぱりとしたTシャツとデニムで、真っ直ぐ腕を伸ばして雑誌を掲げて立っていた、あの販売員さんは、それまでの私のホームレスへのイメージをガラリと変えてくれました。

世界のストリートペーパーのネットワークから集まる記事、広告収入に頼らず独自の視点で書く日本版の編集部のみなさんの記事。特集の切り口も新鮮で、読み応えがあり、雑誌そのものとしてもチカラがある。創刊号は当時でもう買えなかったけれど、バックナンバーも集め出して今も実家に4号から残っています。

読者としてだけではなく、大学院時代には社会調査のレポートのために、学校近くの販売員さんにインタビューをさせていただきました。社会人になって最初に名古屋に住んだ時は、名古屋の販売サポートボランティアにも参加し、これを機に佐野代表とも直接お話させていただくようになりました。東京に戻ってきて転職後、ビジネスパーソン向けの勉強会として佐野代表をお招きした講演会も主宰しました。起業した頃に近況報告のご挨拶に行って、佐野代表とみくさんとご飯を食べたのが懐かしい^^ 


私にとってビッグイシューは、ビジネスの見方を変えてくれたものでした。

社会学部で、国際開発論を勉強し、小生意気な学生だった私。企業というと、途上国の資源や労働力を搾取し、ローカルな文化を壊して画一的な商品を売りつけて…という悪徳グローバル企業なイメージでした苦笑 国際NGOを目指したりフリーのジャーナリストになるのがカッコよく見えて、ビジネス、というだけでちょっと違和感。就職する気にもなかなかなれなかったな。


なので、ビッグイシューの仕組みを知ったとき、ものすごく新鮮でした。独自の雑誌を作り、ホームレスの人だけに販売権を与え、路上だけで販売をする。ビジネスで社会課題を解決する!


しかも、しかも、ホームレス問題!!

話が前後しますが、ホームレス問題は私にとってかなり小さな頃から気になっていたテーマでした。幼稚園とか小学校低学年の頃、休日にちょっと家族でお出かけしようとすると、住んでいた八王子から新宿に出てデパートとかに行っていたんですね。1980年代、当時の新宿駅は昼間でもダンボールハウスが軒を連ねていました。路上で寝転がっている人たちとその横を何も見ないかのように歩く人たちとのギャップは、幼い私にはかなり衝撃でした。だけど、「あの人たちはなんでここで寝てるの?」と両親に聞いてはいけない気がして、そのときの衝撃はグッと心に閉じ込めたことを覚えています。

また、父の実家が隅田川沿いにありました。以前の隅田川沿いはブルーシートハウスが軒を連ねており、近所に住んでいる叔母や従姉妹から見ると、決して仲の良い隣人ではありませんでした。大好きな叔母から出る、ブルーシートハウスに向けた厳しい言葉。「おばちゃん、そんなこと言うんだ」とどきっとしながらも、反論も何もせず、そうなんだ…と言葉を呑み込みました。

そういえば、15歳の高校推薦入試の小論文はホームレス問題をテーマに書きました。試験日の朝、ちょうど都庁への動く歩道建設でダンボールハウスを撤去するニュースを見て、そのことが頭に離れなくて…内容は全く覚えていませんが熱い思いで小論文を書いた記憶があります。その推薦入試は不合格だったな。本試験で無事合格をいただきました。

大学生になったころ、新宿のホームレスの人たちへの炊き出し・夜回りボランティアをしている団体さんの活動に参加したことがあります。気になっていたホームレス問題に、自らかかわれることを楽しみに参加しました。ところが、私のボランティアはたった2回ほどで終わりました。失礼を承知でかくと、そのときの炊き出しの食事、ご飯に味噌汁をかけたぶっかけご飯一杯が美味しそうに見えなかったこと、渡す側も受け取る側もたんたんとしていたこと。…一歩も二歩も引いて見てしまう自分がいて、私のボランティアは全く続きませんでした。


こう遡ると、ホームレスって私の中で意外と長いテーマだったんだなぁ。



多くの人々からまるで存在しないかのように見られ、ときに疎まれ、一部のボランティアからの炊き出しや夜回りで与えられる存在の「ホームレス」という人たち。日本の社会問題の中でも、特に難しいと言われたホームレス問題にこんな解決策を、ビジネスで提示するなんて!!


ビジネスはやりようによって、
社会的課題を解決する手段になること。

仕事をすることは、
苦しい労働ではなく、
社会との繋がりをつくり、生きる喜びになること。

価値あるものを売ってお金を払うことは、
売り手にも買い手にも幸せの循環になること。


アタマでっかちな、小生意気な学生だった私にビッグイシューはその姿で教えてくれました。


昨日、東京事務所に伺ったのは広告出稿のご相談でした。
とある経緯でわたしに広告予算が取れたので、どの媒体に出稿しようかと考えたとき、きもの雑誌でもなく、ファッション雑誌でもなく、ビッグイシューにしようと思い立ちました。女性読者が多いこと、バックナンバーもずっと売れ続けることもとても魅力的だと思う。

文化や歴史をそのまま身にまといエコロジーで自己表現ツールにもなる、日本の伝統衣装 きもの。ただ着て楽しい、だけではない きものの広く深い価値をビッグイシューの読者さんは感じてもらえる気がする。何よりもビッグイシューの読者さんには、「フツー」にはまらない人がいっぱいいて、わたしと気が合う人がきっといる気がするのです^^

ビッグイシューとまた新たな関わり方ができるといいなと思っています。


2020.10.2  上杉惠理子



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