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つばめの巣

古い民家を建て壊すけど、最後に見とく? と誘ってもらったのでお邪魔して来た。

増築増築を繰り返したお家で、お勝手という言葉がぴったりな台所は、広くて、懐かしい。今時のUVカットでしっかりした生地のカーテンでは出せない味のあるカーテンに差し込む光がノスタルジックで、本当に素敵で、壊されてしまうのはもったいないと思った。とは言っても、木造建築だし、誰も住んでいない古い建物をずっと放置していくわけにもいかないんだ。

欲しいものがあったら持っていっていいよ、と言ってもらったけれど、この家から持ち出すことは憚られた。

大切にモノを使っていたんだなと伝わってくる。玉手箱のような箱からは軍歌の冊子や、戦時中の何かしらのメンバーが書かれた紙等が大切に仕舞われていた。家主にとって、確実に経験した人生の一部、出来事だったんだよな。と、想像した。そういえば、ウチの祖父母から戦争の話を一度も聞いたことはなかった。今となっては聞いておきたかったという気持ちと、思い出したくもないよねという気持ちが両方ある。幼い頃、一緒に行ったファミレスで楽しく食事をした時の記憶しかないけれど、本当は、あの時も戦争のことを思い出して押しだまっちゃうこととかもあったのかもしれないな。

話は逸れますが、私には最近楽しみにしていることがあります。最寄り駅に出来たつばめの巣を観察すること。つばめ父母は、交代で見張りをしたり、3匹のヒナに餌を持って来たり、一緒に並んで休んでいたり。仲良しそうです。ヒナはみるみるうちに大きくなり、ものの2週間くらいで成鳥になった気がします。あまり詳しくないのでわかりませんが、見た目は父母より少し小さいくらいになりました。近辺で、揃って飛ぶ練習をしていて、どこか秩序があって、練習しているという自覚があるようで、どうしてそんなことが出来るのか不思議です。言語があるのかな。

見せてもらった民家の玄関の上方には、四角窓が空いていました。そして左角の壁には、三角形に傷んだ跡が。(写真を見てね。)毎年この家には、つばめが来ていたんですって。最初は玄関の外に巣を作っていたんだけれど、寒いだろうと、四角窓を開けてあげたら、次からはちゃんと中に作るようになったって。やさしいな、こういう跡に、ドラマが見えて、何とも言えない暖かい気持ちになりました。
この建物が壊され、更地になってしまう姿を想像し、しみじみと。

今日の帰り、いつものように最寄駅でつばめを観察しようとしたら、みんないなくなっていました。ずっとそこにあるって、当たり前に思い込んじゃってたんだと気がつきました。

2024.6.19

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