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「空間有美」盆栽の心に学ぶ
いつも麦藁手仕事教室へ来てくださり、ありがとうございます(^^)
先日、福島県福島市にある盆栽屋「あべ」さんでお話を伺う機会をいただきました。
なぜ麦藁手仕事教室で盆栽?と思われるかと思いますが、私はヒンメリと盆栽に共通するものを感じていますので、そこからお話ししつつ、阿部さんに伺った盆栽の心を皆さんへシェアさせていただきます。
きっと、新たな視点でヒンメリを理解することに繋がるかと思いますのでお付き合いくださいね(^^)
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ヒンメリと盆栽の共通する魅力
改めてヒンメリとは何なのか考えてみますと、
かつては、冬至の太陽祭のための装飾として使われていたもので、だんだんと家族の幸福を願うお守りとして室内の重要なところに飾られるようになりました。
さらに現代では、インテリアとしての役割が強くなり、洗練された印象かつナチュラルな雰囲気を与えるモビールとして一般に認識されています。
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そして、ヒンメリの魅力を挙げると、以下のようになるかと思います。
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【ヒンメリの魅力】
◎室内に飾る:自然物を身近に感じる。太陽や自然への畏敬が形になったもので、宇宙や自然を表していた。
◎幾何学的な造形:洗練された印象を受けると同時に、造形に何か意味を感じる
◎麦藁で作られている:自然や農を感じる。(単なる個人の作為ではないことを感じ、)自然と伝統への敬意が沸いてくる
◎名前の「天」という意味:人間の枠を超えた大きなものを感じる
◎「光のモビール」という通称:物質的なものだけではない価値観を感じる
◎静かに回転する様子:時をゆるめてくれる。日常の喧騒から離れた無音の時間を作れる
◎言い伝え:回転すればするほど良いなど、お守りの要素がある。伝統的には回転が空間にエネルギーを与える、または、マイナスのエネルギーを吸い取って空間を浄化すると考えられてきた。
そしてこれらのポイントについてよくよく見てみると、私としては日本の盆栽にも通じることがあるのではないかと思っています。
太字のところは、私がヒンメリと盆栽に共通する魅力だと思うところです。
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ヒンメリの魅力と盆栽の魅力が重なっている点を太字にしてみると
◎室内に飾る:自然物を身近に感じる。太陽や自然への畏敬が形になったもので、宇宙や自然を表していた。
◎幾何学的な造形:洗練された印象を受けると同時に、造形に何か意味を感じる
◎麦藁で作られている:自然や農を感じる。(単なる個人の作為ではないことを感じ、)自然と伝統への敬意が沸いてくる
◎名前の「天」という意味:人間の枠を超えた大きなものを感じる
◎「光のモビール」という通称:物質的なものだけではない価値観を感じる
◎静かに回転する様子:時をゆるめてくれる。日常の喧騒から離れた無音の時間を作れる
◎言い伝え:回転すればするほど良いなど、お守りの要素がある。伝統的には回転が空間にエネルギーを与える、または、マイナスのエネルギーを吸い取って空間を浄化すると考えられてきた。
このように、ヒンメリの魅力を整理し、「なぜ日本人がこんなにもヒンメリを好きなのか」ということを考えていく中で、盆栽との共通点に気づき、興味深く思いました。
一言でいえば、自然のものを室内に飾ることで、心理的な豊かさを感じる点で共通しているのではないかと思っています。
盆栽の「長い年月を感じる姿」「自然の摂理を示す姿」「ただ静かに佇む姿」は、見るものにその背景となる”自然の理”と”生命の美しさ”を感じさせます。
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ヒンメリも、世界を抽象化して表しており、ただ単に見た目の美しさだけでなく、目に見えない背景・世界を意識させる点に大きな特徴があると言えます。
両者に共通するのは、目の前の美しいものから、さらに背景となるものを感じ取る能力を必要としていることなのかもしれません。
もしもそれがなければ、魅力が半減してしまうのだということは、私も常々思っていることです。
そのようなことを考え、実際の盆栽の精神面を知りたいと思って調べていたところ、たどり着いたのが阿部さんの”空間有美”という考え方であり、自然美を追求する盆栽づくりの姿勢でした。
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盆栽のことを何も知らない素人の私にも丁寧にお話をしてくださり、ご家族で歓待してくださった阿部さんご一家には改めて心から感謝申し上げます。
三代目の阿部大樹さんと、二代目の阿部健一さんと奥様にもお話を伺うことができ、本当に貴重な時間でした。
以下では、阿部さんに伺った”盆栽の心”をご紹介させていただきます。
自然を敬い、自然に学ぶ ~自然への信頼~
阿部さんの盆栽は、”自然流”の作風だそうです。盆栽には様々な作風があるそうですが、阿部さんはご自宅のある場所が福島県の名山”吾妻山”の麓でもあり、吾妻山の自然を理想として仕立てているそうです。
私は阿部さんのような自然流の作風がメジャーで伝統的なものだと思い込んでいたのですが、お話を伺ってみると現在の主流はそうではなく、キッチリと枝が揃い、幹も見えないくらいに枝が茂っていたり、見た目が整ったものを良しとする、作りこんだ美を追求する作風が多いのだそう。
一方、阿部さんは”それぞれの植物が既に持っているものを引き出す”ことを良しとし、自然の中での植物の姿~不要になった枝は枯れていき、厳しい自然の力が植物の姿を作っていく~を人の手によって再現されています。
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”自然がお手本”であるという阿部さんの姿勢からは確固たる信念を感じました。自然への信頼は、初代の倉吉さん(皇居の盆栽士を務められた)の頃から変わらぬ”盆栽の心”であり、それを下地として様々な技法を用いていきます。その精神こそが最も重要なところであり、何を作るべきかの答えとなるところだろうと、拝察いたしました。
また、阿部さんからお話を伺う中で、盆栽の伝統の担い手としての責任感と、段々と社会が自然から乖離してしまっている現状への危機感を感じました。
「”自然美”と一言に言っても、どのようなものが自然美なのか、そもそもそこが共有できなくなってきている」
40代くらいまでの若い世代は、子供のころから自然の美を感じる体験が少なく、何をもって自然美というのかが分からなくなっていることを感じるのだそうです。
また価値観が多様化した現代で、何を芯にしたらよいか分からない人が増えており、特に30代、40代は、様々な価値観の中に埋もれ、信じるものを失っている人が多いということも語られていました。
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非常に身に覚えのあるといいますか…私自身も、そのような悩みを抱える一人と自覚しています。
しかし、麦藁の手仕事と出会ったことは大きく、これを研究し、精神的な面まで歩みを進めていくことで、つながりのある方々への一助となることを目指しています。
また、”自然と再び出会う”ことは、私の重要なテーマでもあります。土と繋がること、自然の秘密を知ること、自然を作品に表すこと… 単にものづくりをするだけではなく、そのような場を提供できるようにしていきたいと思います。
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「空間有美」~”何もない空間”が美をつくる~
初代の倉吉氏が提唱した「空間有美」という言葉があります。盆栽の姿は、枝の無い空間が美を生み出しているのだという思想です。無と有の調和こそが重要なのです。
人は目に見える「有」ばかりに目が行きがちですが、そうではなく、「無」をも感じており、その全体の調和が美を生み出しているのだと、阿部さんの作品を拝見するとそのことが良くわかります。
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フィンランドの著名なヒンメリ作家エイヤ・コスキさんも、ヒンメリには「間」が大切だとおっしゃっています。
ヒンメリにおいて、構成材である麦わらなどの素材と同じぐらい重要なものは、それによって作り出される「間」です。ヒンメリはミニマムな部材からできているので、それが特別な意味を持つのです。「間」はヒンメリにとって不可欠なもの、それがなければ調和は生まれません。空間と物質のバランスが重要なのです。
空間と物質のバランス、有と無のバランスは調和を生み出すうえで、非常に重要なポイントなのですね。
子ども時代が人生のストーリーを作る
今後、阿部さんが力を入れて取り組もうとされていることが、子どもたちへの自然教育だそうです。
自然の美しさを受け取る感性が弱ってしまったのは、子供時代の自然体験の量と質が問題だと思い、子供たちに自然の見方を伝える場を提供していくとのこと。
確かに、私自身も自然が好きなのは祖母の影響が大きく、自然の豊かさ、魅力を体験を通じて教えてもらいました。
阿部さんは、「今盆栽が好きな人も、自分では気づいていないけれども子供の頃の経験があるから」とおっしゃり、改めて子供時代の経験の重要性に気づきました。
麦藁手仕事が好きな皆さんは、いかがでしょうか?
きっと子供時代の自然体験が良い思い出になっている方が多いのではないでしょうか?
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さいごに
今回の訪問で、自然に学ぶという方向性をもっと進んでいこう(ヒンメリ②コースで触れています)と思うと同時に、子どもたちへの教育が未来をつくることだということを再発見させていただきました。そして、無と有の調和についても、難しいですが、感性を磨いていこうと思います。
阿部さん、この度は本当にありがとうございました。
ぼんさいや「あべ」さんにご興味を持たれた方は、ぜひ下のリンクでさらにご覧になってくださいね。
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