「冨樫義博展–PUZZLE–」~境界を飛び越える者の怖さ~
冨樫義博展に行ってきた。
冨樫義博展とは
主に週刊少年ジャンプで活動している漫画家、冨樫義博の展示である。
展示室では多数の原画を展示し、『幽☆遊白書』、『レベルE』、『HUNTER×HUNTER』それぞれの漫画のストーリーを振り返る。
絵柄の変化の話
前々から思っていたけれど、冨樫作品は絵柄はかなり不安定だよね。突然リアル寄りになったり、少女漫画っぽくなったり、デフォルメになったりする。メインキャラですら話によって顔がかなり違う。
でもそこに違和感があるかというとそうでもなく、ストーリー全体から見るとさらっと読める。
これも漫画が上手いということなのだろうか。
そもそも「こうあるべき」という価値観に抗い続ける作家なので、わざとなのかもしれない。
あと、アナログ原稿って「こんなところまで字を書いてたのか……」と衝撃を受ける。回想シーンでコマのふちが黒くなるのも、よく見ると手で塗っている。そりゃパソコンで絵が描けなかった時期もあるから当たり前なんだけど、実際に見るとすごい。
伏線を回収しないでオチさせる
あと展示の説明でよかったのは、「パズルのピースをはめていく過程の先に結末があるわけではない」的は発言だった。メモをとらなかったので正確な言葉だったかは定かではないが……。
確かに冨樫作品は、伏線を回収しないままオチを
迎えることも多い。しかしそこが妙にリアルで、生々しい。
幽☆遊☆白書のVS忍の結末も、そんなこと言うか?!と最初は思ったんだけど、今思うと無責任なほうが人間らしいかもしれない。
よく考えれば、現実世界できっちり物語がオチることってない。結局何も解決してないじゃないか、と批判されることもあるけれど、私は好きな部分である。
人と人ではないものの境界線を越える楽しさと恐ろしさ
それから冨樫作品は、人と人ではないものの境界線を越える楽しさと恐ろしさの両方を描いているな、と思った。
幽助もゴンも、目の前の人間がどういう種族でどういう属性なのか気にしていない。その姿はとても魅力的だけれど、同時に怖いものでもある。
クラフト隊長やチードルは天才的なキャラクターに振り回されているように見えるけれど、実際のところ社会を回しているのはああいう人たちではないか。
貧者の薔薇のシーンも、ものすごく悪趣味だけれど納得感がある。
人間のために人間以外の生き物を倒すことはどうしようもない気がする。ハチだって巣を守るために戦うんだ。
ゴンやバカ王子みたいな、飛び抜けた才能のキャラがいたとしても、社会をやっていくしかないんだ、という話をずっと語っている気がする。
ストーリーや面白く思わせる技術を知る
あまり漫画系の展示を見ないのでどういうものかなあと思ったけど、ストーリーや「面白く思わせる」技術についてもつっこんだ話をしていて面白かった。
ただ久しぶりにグランフロントに行ったものだから、どこに何があるかわからなくて迷った。階によってエスカレーターの場所が違うし。こうやって梅田はダンジョンになっていくのだろう。
せっかく来たし何かランダムグッズ買っていくか!と思ってグリードアイランドのカードのキーホルダーのやつを買ったら「266 通行チケット」だったので笑ってしまった。鞄につけたいようなつけたくないような。
あとは、レベルEのポストカードを買った。よく見ると特殊印刷になっていてきれいだった。
展覧会情報
冨樫義博展–PUZZLE–
グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル
大阪府大阪市北区大深町3-1
2023年7月15日(土)~2023年9月3日(日)