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阿吽、の呼吸だったのに。

庭の、少し離れた、斜面になっている所に
こじんまり、スクッと
立っている山椒の木がある。

160センチの私が
ちょっとだけ、見上げるぐらいの高さで
手前は、ちょこちょこと
採りやすいのだけれど
奥はちょうど、斜面になっていて
サンダルなんかで、うっかり
行っちゃうと
わぉ~、と、そのまま
ずり落ちてしまうので
完全武装で、収穫する。

煮付けの時の臭みとり
糠床の監視役、
ちりめん山椒とか、
あまり、どかっとは使わないので
少しだけもらうよ~と
ポチっ、ポチっ、と
ハサミで切っていく
どうぞ~の、返事の変わりに
いつも、清々しい香りを
はなってくれて
初夏のアロマだわ~と
いつも、うっとり
しなだれかかりそうになる、
そんな、阿吽、の呼吸のわたしたち、笑。

それが。
つい。
義弟に言ってしまった。

今やったら、山椒が売れるよ~、と。
(口を滑らす)

まじで?あるん?
あるやん、一本だけ。

即効で、売れたらしい

作りすぎた野菜を
産直販売所に持っていってる義弟に
ほぃほぃ、と持っていかれてしまった
しかも、野菜より高値だったことに
味をしめて
山椒の木を増やそうという。

いつもひっそり、端っこのほうで
手招きして
呼び寄せてくれた
山椒の木を裏切ったみたいで
せつなかった。

ごめんね。
来年は、仲間を増やすみたい。
(正直にいう)

山椒は、繊細やから
作りにくいんやで~、と舅が
口をはさんだ。

何本か植えたのに
一本だけやからなぁ、
まぁ、ぼちぼちいけよ~、と笑う。
(いつもの、ぼちぼち)

そうそう、ぼちぼち。

つい、一年も、もう半分だ、とか
焦るけど
ぼちぼち、と。
今を。
山椒の香りを思い出しながら。
ゆっくりいこう。

最後までお読み頂きありがとうございます。