人生で一番古い記憶

畳の上に置かれたパンパースのパッケージを見ている。

私は畳の床に寝かされている。手足を動かしてみるけれど自力で起き上がれない。たぶん乳児なのだと思う。仰向けになって首だけ横を向いていて、視線の先にパンパースの袋がひとつ置いてある。パッケージの色は青か緑。CMみたいにこちらが正面で、真ん中に囲まれた白人の赤ちゃんの写真。当時印刷されていたその子も私と似たような体勢を取っていて、「おんなじだ」と思っている。映像でいったら1カットくらいの数秒の記憶。

今はもう自分の記憶として引き出してくることはできなくて、子供の頃に覚えていたのを改めて記憶しているだけになってしまった。誰かが出てくるわけでもなく、何でもない記憶なので情感は薄い。当時住んでいた部屋の雰囲気だけ懐かしい。

こんなどうでもいいようなディテールがなぜ最古の記憶なのか、自分のことながらよくわからない。 生まれたての頃は身の回りすべてのものが珍しかったのかもしれない。全部見たことがなくて、何もかも新しい。そういう世界があった。


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