「可愛い蕾」は「愛と美の女神」へと繋がっていた
「ギンバイカ(マートル・祝いの木)」という名の植物で間違いないと思う。
昨年の春のこと、駐車場で車に戻ろうと歩いていたところ、左の下の方でちらっと視界に入ってきた白くてまんまるの蕾。小さいけれど、こちらに飛び出してくるような雰囲気があって、まだ蕾ながらすごいアピールだなと感じた。弾んでいるような様子にも見えて、力強いと言うより可愛いアピールだったので微笑ましく、どんな花が咲くのか見てみたかったのだけれど、少し遠い場所にあるので、次に見に行った時には花は終わっていた。「残念、また来年」とnoteにつぶやきを残してから一年が経ち、今年は見逃さないように「そろそろかな~」「まだかな~」とチェックしに行くこと三回、ようやく花を見ることができた。
圧巻だった。葉も花も蕾も数が多くて迫力がある。つやつやの葉、雄しべが細く長く伸びて繊細なレースのような白い花、丸くてぴょんぴょん飛び出したあの可愛い蕾もまだまだたくさん跳ねている。これが全部開くとなると、すごいボリュームになる。きっと丈夫で生命力の強い植物なのだろう。
スマホに収めた写真を何度も見返しては、レースのように綺麗でキャンディーみたいに可愛いのだけれど、少し引いて全体を見渡すと「エネルギーが有り余っているのでは?」と尋ねたくなるようなアンバランスな空気を放つ姿に、すっかり惹かれてしまった。
ちょっと調べてみたところ、『梅に似た花を咲かせるので銀梅花』『葉に香りがありハーブとして利用できる』『秋にはブルーベリーに似た実を付ける』『地中海沿岸から南西ヨーロッパが原産地で、愛と美の女神ヴィーナスの神木とされ、ブライダルブーケや装飾に用いられる』等々、なるほどと納得するような情報を得た。蕾の頃の可愛いアピールは愛と美の女神に繋がっていた。「すごいなあ」とまた写真を眺めている。
植木としてのギンバイカ、ハーブとしてのマートル、ブーケや装飾としての祝いの木。幾つもの呼び名を持ち、幅広い用途で色々な場所で愛されているこの植物と一緒に季節を過ごしてみたら、きっと面白い発見があると思うのだけれど、何だかちょっとパワーが強すぎるような気がして躊躇してしまう。
真夏のような暑さが続いている。
朝の新聞の見出しは『梅雨最短』、その下には『電力きょうも注意報』。テレビでは『太陽とか地球のせいではなく人間活動が原因』と地球温暖化対策の話が進んでいる。いつからか暑さに負けないと言うより、限りある中で暑さをしのぐことを多く考えるようになった。そんな日々では、勢いとか迫力よりもゆるりと柔らかに過ごせる物事を求める気持ちが強まるのだろうか。
今年の始め、noteに「チャレンジは大事」とつぶやいた。ちょうど一年の折り返し地点、初心に帰って愛と美の女神の神木を我が家に迎えてみたら、面白い発見が少しの時間でも暑さを忘れさせてくれるかも知れない。
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