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おれとこなちゃん(4)

双子の姉について

 髪型に特徴がある。姉かわいいよ姉。こなちゃんの親友である。たまに喧嘩もするけれど仲の良い証明である。

 妹のほうが先にこなちゃんと友達になった。その流れで姉とこなちゃんは出会った。
 おれは思う。ふたりは愛しあっているかもしれない。いやちがう。正しくは、姉がこなちゃんを一方的に愛でている。理由は述べない。規定事項だ。
 姉は読書家である。といってもライトノベルだ。ほとんどが。早川さんと愉快な仲間たちに比ぶべくもない。ましてや対有機生命体コンタクト用汎用ヒト型決戦兵器とは比べ物にならない。まあそれはいい。かわいいから許す。でもこなちゃんほどではない。いちばんカワイイのはこなちゃんである。
 一般的な人気は双子の姉のほうが圧倒的である。双子の姉のファンを表明している者は多い。おれも姉のことは好きだが熱狂するほどではない。
 人気の要因はなんだろう? あの特徴的な髪型(ツインテール)か、それとも後期転向型(ツンデレ)の性格が好まれるのか。おかずの匂いが好きなのか。理由はわからないが、姉は人気が高い。

 双子の妹は「ぼっち」傾向であると書いた。じつは双子の姉もぼっち体質だと思うのだ。それについて少し述べたい。
 双子のいもうとは、けっして出来が良いとはいえない。かわいいのだが、それだけである。ゆとり教育の弊害を絵に描いたような女学生である。そんな妹と共に行動していうちに、双子の姉は勘違いしてしまった。自分は優れた人間である、と。
 おれの大好きなこなちゃん。幼い頃に母を亡くしている。学業の傍らに秋葉原のコスプレ喫茶でアルバイトをして稼いでいる。
 そんな健気で逞しく生きているこなちゃんのことを双子の姉は見下している節がある。こなちゃんが二次元をこよなく愛するオタクである、ただそれだけの理由でバカにしているのである。
 ちょっと待ってほしい。こなちゃんの何をバカにできるというのだろうか? ひとつずつ検証していきたい。

 まずは、一般社会における経験値について。
 こなちゃんは片親である。一方の双子の姉は五体満足、父母姉に妹フルコンプリートである。どうせ食事も風呂も洗濯もなにひとつ自分でやっていないだろう。一方のこなちゃんはどうか。きっと父親と当番制にして家事を分担しているに違いないのだ。こなちゃんの作ったチキンカレーが食いたい。おれはいま腹がへって死にそうなんだ。
 小遣いの面はどうだろう? 前述したとおり、こなちゃんは自分で稼いでいる。オタク相手にダンスを踊ったり接客したりニャンニャン言ったり。年間を通して額に汗してカネを稼いでいるのである。
 いっぽうの双子の姉はどうか? せいぜいが元旦から三が日が終わるまでのあいだに巫女業務をこなすくらいだろう。こなちゃんの苦労とは比ぶべくもない

 おわかりいただけたであろうか?
 こなちゃんのほうが人生経験が豊富なのだ。これほどまでに明確な差がある。にもかかわらず双子の姉はそれに気づかず、おれのこなちゃんに対して時折だが見下すような態度をとる。あんたはオタクだから実社会のことが全然わかってないのよ的な。
 ぜったいに大学で孤立する。全国から集まってきた連中に笑いものにされるに決まっている。ぼっち道まっしぐらである。出来のわるい妹を基準に人間の質を量ってしまっているのが大間違いのもとなのだ。

 誤解しないでほしいのは、なにも双子の姉が憎いわけではない。わりと好きである。性的な魅力も感じる。こなちゃんほどではないが抱きたい。抱きしめたい。くちづけもしたいと考えている。