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災害後の暮らしに必要な知識と、プライマリーヘルスケアアプローチ #前編2022/01/17

被災したあなたを助けるお金とくらしの話について

神原: 今日は1.17という事もあり、弁護士の岡本先生に、お話を伺います。
災害復興法学の観点と、災害看護学の視点で、学際的に一つの体系をつくっていくのも、面白いんじゃないのかなと思っています。

岡本: よろしくお願いします

神原: 被災したあなたを助けるお金とくらしの話について。
私たちはこの知識がないと、健康ではいられないと考えています。
災害時、災害後の暮らしに必要なお金の知識を持つ事はプライマリヘルスケアのアプローチと考えています。
地域で実践可能、科学的根拠に基づいた、住民主体の適性技術に基づく健康維持のためのケアのことで、防災で言う共助の健康づくりのような部分です。

災害後の健康リスクは、病気になってからしか見えません。病院に行けば、災害で被災した方の怪我をした人数や病名が、電子カルテ等で数える事ができます。
しかし、病気の予防として、病気になりそうな人は数える事はできません。例えば災害関連死。
災害関連死がどうして起こるのか薄々わかってはいるけど、実際それをカウントする方法はありません。
そして病気になりそうな人を予防する方法も、たまたま寄り添った人達の中で相談に乗る事が関の山です。
いち士業や医療職の人間が、ただただ一人にかかわっただけでは、それぞれ専門分野が違う事もあり、ツールと指標がないと共通認識もできません。
もともと健康課題は、生活習慣病を含めた生活の課題によるところがあるので、そこが連携できないといけないと思っています。

災害時の人間の安全保障について

日本だと空気を吸うかのように「あんしんなくらし」ができていますが、災害が起きると、水がない、寝る場所がない、食料がない、稼げる環境もないという状況になります。
これはSDGSで言うところのSDGS目標1(貧困をなくそう)ですね。
貧困は、お金がないではなく「衣食住がない」と定義されています。日本の場合お金があれば、何とか衣食住を手に入れることができるセーフティネットがあります。
貧困をなくす事は、衣食住を買うお金だと捉え、それが暮らしだということを定義づけで話していきたいと思います。
災害が起きたばかりの時は、まずは命の安否確認があり、その中で状況があります。
生きているのか、怪我をしてるかが非常に重要になりますし、その後は先ほどの「暮らし」がどこまで脅かされているのか。水道が止まっているのか、食べるものがなくなっているのかという事。
さらには病院自体も被災し医療の継続ができなくなる事もあります。
災害後に支援制度が必要な人達、災害前から生活を整えるために支援が必要な人達もいます。
災害の前後で使える法律も違ってきます。防災として知っておかなければいけない知識として、いつも岡本先生から専門的な知識をお伺いしています。

災害後、webサイトや自治体の冊子に色々な支援制度が掲載されますが、それを見つけた人だけにしか情報や知識が届きません。
それをどうやって、タイムリーに必要としている人に知らせることができるのか、使ってもらえる事ができるかなと言うことを常々考えています。

災害時は、空腹や不安などが続いてる状況が、健康や貧困、人間の安全保障のベースを脅かされている状況と言えます。そこから、すぐにリカバーできるレジリエンスが高い人もいるし、そうではなく、もともとすぐには立ち直れない脆弱な人もいますのでそこをリカバーしていく事も大事と思っています。私たちが今日お話したいのは、共助のプライマリーヘルスケアという観点から、それを考えていかなければいけないということです。

災害時の支援について

住民のニーズに基づいて行う事が重要です。
支援の内容は本当に住民たちが求めている内容か。もしかしたら行政だけが良かれと思ってやっていることではないか。支援者だけが良かれと思ってやっていることではないか。
基本的には住民さん達のニーズや声が聞こえてくる内容でないと、災害により害を与えている状況になります。
そしてコロナの現状や南海トラフのように、災害外部から支援がきて当たり前ではなく、基本的には自分達の内側で解決できることから始めないといけない事があります。
そもそも海外では、行政にお金がなかったり、外部から支援が来ること自体が地理的に難しい場合もあります。
住民が参加してできる支援でないと、支援をいくら一方的に与えても、そこでザルに水を注ぐかのようにもったいないお金が流れたり、人の努力が流れたりっていうことがあります。
今私たちはここが適正技術と呼んでるんですけれども、information communication technology(ICT)なのか、それが日本の中で最適な技術で、特に色々な人が いるところの技術が必要だと考えています。
ヘルスだけの問題ではなく、私たちも防災の方々や教育の方々。
例えば教育委員会や内閣府防災ですね。
他にもジェンダーの人たちのグループや、建築の人達、同じようなことをやっている色々な方々と共同協調しないと、課題も解決しない。
自分達の中だけで課題を抱えて、同じ目的を持つ人たちが同じように課題を持ち、結果、それでは住民さんのためには何も解決しない状況が起きていると思っています。
公衆衛生や看護の観点からみると、昔から地域の中にある特に健康推進の部分が防災教育って読み替えるかなと思います。
食料確保も今、避難所の環境改善の課題で多々ありますが、 原則は変わってないかなって思います。
感染症も、今まで災害後は直ぐインフルエンザの問題だとか、いまだにずっと残っている基本的な活動の問題だと思います。それが現在、お金に対して保険や色々な制度が増えてきているので、それを駆使すれば福祉と住民の共助の部分でやっていけることが増えています。
そこの部分も、自助共助を私たちは考えている認識で岡本先生と話がしたいと思い、お誘いしました。
今までの話の感想的な部分や、お話を聞かせてもらえると嬉しいです。

災害復興法学

岡本: ありがとうございます。
私は東日本大震災をきっかけに「災害復興法学」を提唱しています。
災害時に必要な法律や制度を、新しく作っていく。あるいは、せっかくある制度をみんなにしっかり知ってもらうという活動をしてきました。
その中で、今日紹介いただいた「被災したあなたを助けるお金とくらしの話」と名付けた防災教育を始めています。
例えば避難所の支援の段階。応急期から復興期までの間、減災ケアをして行く中で災害後にどうやって生活再建するかのについて感心が集まります。
まず認識しておかなければいけないのは、生活再建のニーズというのは、災害から助かってその場にいる人達はその瞬間からあるのだということをまず強調したいです。

災害ケースマネジメント

僕らは弁護士として、東日本大震災やその他の災害も被災地で色々な相談活動、いわゆるヒアリング活動をしています。
そこではまさに弁護士しか聞けないような、お金や家の再建、ある意味生々しい生活の悩みをお聞きします。
それは被災後徐々に出てきているのではなく、被災したその瞬間に起きていることなのです。
その声をもとに色々な支援をオーダーメイドで提供することこそが大切です。
この事に、あえて単語を使えば「災害ケースマネジメント」という言葉を使うのがいいのかなと思います。
災害ソーシャルワーク、あるいは災害ケースマネジメントという概念で支援を行う事が重要だと考えると、神原先生の「減災ケア」のお話と合致するところです。
身体の健康に対する物的支援なのか、制度を使いこなす知恵なのか、という差でしかないのだと思います。プライマリーヘルスケアと被災したあなたを助けるお金とくらしの話は、同じテーブルに乗った議論だった事に気づかされましたというのが、最初の感想になります。

防災的に私たちはマネジメントを協働していける

神原:災害ケースマネジメントという言葉を岸田首相も発せられ、一歩進歩しています。私は看護の観点、公衆衛生の観点から含めると、さらにリスクマネジメントができるのではないかと、福祉の方々と考えたいです。
人々の職種、家族、生活の場所等から、もしかしたら災害が起きたらこんな目にあうんじゃないのかというリスクに対して、防災的に私たちはマネジメントを協働していけるのではないかなと、岡本先生からヒントをいただきました。
ケースマネジメントといった時に、いつも災害が起きる前から日常的に困りごとがある人は災害後にどうなるのか、日常の困り事が災害後に発覚し悪化しそこで表面化していますが、この課題は災害が起きる前からの話かもしれません。

岡本:ありがとうございます。
私は弁護士でもありますが、ファイナンシャルプランナーでもあります。
ライフプランを人生を通して考えていく専門家の視点でお話しすると、被災した時にどんな制度があるのかとおなじくらい、そもそも、どんな被災をしてしまうのかを認識しておくイマジネーションが重要だと思います。
そのイマジネーションが、だったらいまこの保険に入っておこうとか、家族との連絡先だけでもしっかり作っておこうとか、身近なリスクマネジメントに繋がります。
そういった意味では、災害ケースマネジメントを看護福祉の分野の皆様にも評価していただいて、健康支援とリンクさせることが一つの理想形になると考えます。


今回はここまで。
後編では具体的な事例や対応について深掘りしていきます。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

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