ひらめき☆マンガ教室2019 第3課題感想

 基本的にはdisるだけに終わらないように心掛けましたが、至らない部分もあります。また作品じゃなくて私自身のことを延々述べているところもあります。作品によって私から引き出されたものですから感想の一部だと考えましたが、単なるこじつけに見えることを恐れます。こういう読みもあるということでお許しください。許せん場合は各自ご連絡ください。文体と主語が乱れているのは、単にその方が私にしっくりくるからです(以下敬称略)。

蝶々ひらり「新宿物語」
 絵柄がストーリーに合っているし、少女漫画のヒロインに自らを重ねることが自分の物語になっている主人公(それ自体が矛盾)が、ストリートミュージシャンと出会って変わるのがまさにboy meets girlなのか。ミュージシャンの彼も、いずれ夢が破れると分かってて歌ってるのかな。夢が破れてもそれは新しい物語のはじまり…というメッセージだと思った。

五月十三日「来栖カフェの遺言レシピ」
 えーとこの兄弟は母子家庭だったんですかね…というか弟は男の娘? 14頁目頭の兄の顔がすごくいいなぁ。何事も母との関わりでしか(しかも自分から見えていただけの母親像から)考えられない兄の認識を変えるのは、母と何の関係もない女子学生というのがお店を舞台にしていることの意味かと。後、ネームアピールの「今重要な~」という部分は何を指しているのでしょう。現代日本の社会問題?

相野ココ「マドンナかヤンキーどちらかとセックスしないと出られない部屋。」
 豆太君、変わり身が早くないっスかね…剛田の本当の気持ちが明らかになるまでの(誤)誘導は上手い。すみれを魅力的に描き過ぎないように調節しているのだろうか。

ねりけし「悪夢を見るチーズ食べてみた」
 ネームアピール読んでみて、ねりけしさんがどんな悪夢を見たのか気になる。表紙のインパクトがすごい…何が起こるのか楽しみで頁をめくりたくなる。4頁目のレシピのコマもウケる…悪夢チーズサンド食べてみたい…やっぱりねりけしさんは何か新しいことを体験してそれをマンガにするのが上手いなぁ。オチも見事にきまっておる。

ささやか「首輪をつけて!」
 リョウくんが従属する快感に目覚めて更にハードなプレイする所まで見たかったかな…というかむしろ私が首輪をつけたい。どうもチカちゃんは支配する側もやれるんじゃないか…。後、3頁辺りで彼女の過去のプレイがチラッとでも描かれていたら良かったか…エロマンガになってしまうが。

由田果「一人残らず負けてくれ」
 妹はなぜ泣いているのだろう。本当に闘いたい相手は父なのにそれは叶わないし(女だから闘う相手として認識されない)、兄は情けないくらいに弱いのにそれを認めようとしない。そして自分の頑張りは報われることがない。そういった状況全部に対してか。そして立ち向かう妹の姿(特に12-13頁)が本当に爽快である。ただし彼女はやがてどうしようもない現実に直面するのだろう…長男でありながら何も期待されてこなかった私にも刺さる作品でしたよ。

景山五月「青潭(仮)」
 7頁目の水中から見上げた光景がとてもいい。次頁の、光の手前にちかちゃんの笑顔があるのも。何か大きい決断に向きあっている人に勇気を与える作品だと思った。私は未だに逆上がりができないのだが、一緒にやってくれる仲間がその時いたら…。

暮介(guresuke)「霈」
 相変わらず、すごい理詰めでネームを作成してることが分かるネームアピールですね…先生の課題文をとことん咀嚼してやるという気負いが感じられて感服しました。男子中学生と担任の男の先生が気持ちを交わす(年の差を超えた友情?)という設定が私には新鮮だった(単に私がものを知らないだけかもしれんが)。霧崎の演奏が氷のようだというのは、極限の孤独を表してるかのよう。それが先生の孤独と共振したのかな。

グヤグヤナンジ「生徒会ラプソディー」
 細かいことだが、副会長君がある程度の人たちにバラしてることで脅しの効果が減ってないのかな(不満分子連中の誰かからどうせ話が漏れると会長が考える…とは彼は思わなかったのか)。うーんこんなこと思ってるの俺だけかもなぁ。会長の頑なさが最後の頁で一気に崩れるのが良い。

拝島ハイジ「クジラ構文に乗って」
 クジラ構文って初めて聞いたんですが…まぁ私にも語学学習は裏切らないって原書読んでた時期もありました。辛い現実から逃げるために。でも失恋とは関係なく、言語(特に外国語)は遠くまで連れて行ってくれることは賭けてもいい。で、私は5-8頁の主人公が歩いてるシーンが好きだ。水平線の彼方とその遥か手前にいる自分。その時の期待の気持ちは後から振り返ると恥ずかしいかもしれんが、甘美にも思えるんじゃないか。

とき ところ「メイビー地球最後の日」
 混乱してます、正直。ストーリーが理解できてないのです。なので感想じゃなくて疑問の羅列になりますが。まず主人公の青年がアンドロイドなの? 10-11頁がその説明になってるようなんですが…スマホはAI? なぜ海を目指しているの? 二人(?)は別々の目的で旅していたの? でも全編に流れる、けだるげな感じはいいなぁ。

飯島 健太朗「お風呂の入り方」
 私もカラスの行水なので風呂入るのメンドいの分かるぞ(でも毎日入ってる)。「ブックオフで立ち読みしてる人のにおい」とは。どう表現すればいいか分からないが、4-5頁はもっと曲にノッてる感じが出ると良いのでは(さすがに踊るのはムリだけど、ただ脱いでるだけじゃなくてもっとオーバーな動きは描けるのでは?)。最後の頁、ユニットバスなんだろうかと気になった。

静脈「真実ちゃんを滾(たぎ)らせたい」
 既に「色々な所に行ってみる」という立派な趣味になっている気もするが…私は想定読者に入ってるけど、問題は年取ると何するのも億劫になることだな。身体が動かない。だからこの作品は取っ掛かりとして良い。更に持続的に興味を持てるものを見つけようと。真実ちゃんが一言も喋らないのが、スケッチで彼女の感情が表現されているのとかみ合ってていい。

かいじる「真夏のとんでもNIGHT」
 女幽霊は浄仏しないでいいのかな…最後のスイカは次回への伏線に違いない。9頁目の最後のコマは、主人公が怨霊を受け止めているだけなのか、怨霊の浄仏まで含まれているのか。浄仏させるヒーローならば、もっと仏っぽい要素を入れてもいいかも。ヒーローのコンセプトはいい目の付け所だと思われる。

ハミ山クリニカ「マイ・デバ・ベビー」
 ちょっ、この夫と義母まるで俺の家族みたいじゃないか(震)。まぁでも主人公の女性が頼る/利用するの違いに気付いたのには、血のつながりも大きいのでは。所詮夫と義母は血のつながらない他人だし。そもそも夫のプロポーズの言葉が問題だ。やれやれ。はじめ「共依存キター」と思って読み始めたが、前向きな結末で良かった。

国分寺崖線「ペーパーマン」
 とても皮肉の効いた作品ですね…ただネームアピールの内容もマンガに入れ込んでみてはどうでしょう。そうすればよりジャーナリズム(とヒーロー)の限界がはっきりすると思う。ついでに紙の良さを滔々と説けば、そもそもみんなこの作品PCかスマホで読んでるよ!とメタ構造になって更に面白いかもしれない。

kubota「矢田の渡し」
 私は人生の殆どを田舎で過ごしてきたが、田舎ディスって気になる人はなるんかな(方言とか)。11頁目最後の「うん…」に主人公の戸惑いを読み取った。前とその前のコマ、要は監視社会ってことだからねぇ。母親に自分の気持ちをさらけ出す後半部、良い。この物語の後、主人公は地域の人とも心を通わせていくのだろうなぁ、と想像した。

鴫原一起(シギハラ カズキ)「許せ」
 ネームアピールで心配されている点、妹がいじめられていた描写とそれによって恐怖を感じる説明を少し入れておけば解消されるのでは? それと細かいことですが2頁目の1コマ目、姉が手を振り上げたコマから始まっているけど、手を振り上げる描写と妹がそれに恐怖を感じる描写を先に挟むとより分かりやすいかもしれない。私には姉がいきなり変なポーズとってるように見えるんですが…最後に、タイトルと最終頁で言葉が微妙に異なるのはどんな意図でしょう。というかタイトルは誰の言葉なのかしら? 色々書きましたが、7頁目以降、姉妹の信頼し合ってる様子がきちんと描かれていると思いました。

高井美雨「パパ活如来」
 仏性に目覚めたおっさんが罪を悔いて如来を目指すかと思いきや…女の子殺してるやん。結局殺すんかい。仏性とは。でも予想外で面白かった。ちなみに14頁目は六道なのかな。

碌縞ろろこ「#わすれて #わすれられない #今のこのきもち #ほんとだよね ??」
 主人公の暴走=妄想を可愛く思えるか分かれそうだな…まぁ私はクラスの片隅から眺めるくらいならアリかと。近づくのはちょっと…ところで相田が吉川を好きになったのも変顔がはじまりなのかな。だとしたら吉川が自分の勘違いに気付いて恥ずかしがってそこで相田がやっぱり吉川可愛いなーみたいな展開になったら萌える、俺が。今の最後の頁もいいのだけれど。あれ、というか既にそういう話になってる?

矢作さくら「君と夢を」
 夢を一緒に追いかけてたはずなのに、もう君は傍らにはいない、か。岸が夢を追いかけているのは変わってないんだって思おうとしても難しいよなぁ。自分は彼の一面しか見てなかったと気付くってことだもんなぁ。映画館で自分の青春の終わりを感じるってのもなかなか堪え難い(最初と最後の頁の差がすごく感情をかき立てる)。美しくはあるけれど。

土屋耕児郎「鉄塔のある町」
 えーとそうすけ君は結局事件と関係なかったってことですかね? 10頁目の彼、怖さとおかしさが混ざっていて何とも言えず、次の頁のコマへのつながりが絶妙だ。唐突に最後の頁で出てくる真犯人…謎だ。しかも田舎なら怪しい奴の情報はすぐに出回りそうだが…でも田舎の閉塞感が上手く表現されてるんだよな。犯人がいら立つくらいの。

向田哲郎「星を巡る者」
 ペルが最初感情に無関心で、みよ子と交流する中でその大切さに気付く…という点が良い。「単に記憶を集める→記憶には感情が伴う」の気付きが、ペルの変化そしてみよ子の成長につながっていると読んだ。ただ12-13頁は少し冗長かも。

obj.A「ふたりぼっちのなつやすみ」
 頁数超過の件は講師の先生方に委ねるとして…いやぁ振り切れましたね、掲載誌がパッと浮かぶようだ。10-11頁のご先祖様が降臨してくる辺りの雰囲気が良いな。ご先祖様との乱交→キヨおばあさん登場のくだりも次の行為への期待感が高まってきてていい感じ。「人から何を言われようとあなたの欲望を諦めてはいけません」(12頁)って名言だな(文脈から引き離せば)。

なは菜っぱの菜「菜津子の猫」
 設定が上手く読み取れてないのだが、ちび太は歳とってないのだろうか。また菜津子と志津江は一緒に歳取ったから、最初はお互い少女で次はおばあさんなのかな。とまれ、細かいこと考えなければ、会いたいという思いの連鎖が紡ぐ情緒的で美しい物語が描かれているように感じた。

ririo100「紅い結晶」
 お姉ちゃんが赤い石の出所と男の子の気持ちを知った上で喜んでいると考えるとゾクゾクするな…私はそう読んだ。男の子に名前がないのは何故だろう。石に人間の感情が宿るというのが良く分かる。最後のシーンが夕方なのも美しさと残酷さを引き立てている。

mahiro「期待して、サヨナラ」
 上手く理解できていないが、高野は翔にとっては野球と重なっているのか。つまり自分には手の届かない輝かしいもの。だからそこから逃げたと。でも高野は翔との友情(以上のもの)に支えられていたんだなぁ。高野の顔を見せない演出、完成稿でちゃんと見てみたいと思った。

タケチ イチコ「蝸牛の恩返し」
 折角JKになれたんだからもっと色々やればいいのに…という発想が既にオッサンだが、この作品では女性の身体上の制限(=生理)に焦点を当てている。興味深い。「男が偉そうに振る舞うのは普段自分の身体を意識しないからだ」とどこかで聞いたが、まさにそう。が、それは「弱音を吐けない男の生きづらさ」の裏返しでもある。

市庭実和「speculum鏡」
 細かい話だが、12頁の最後のコマの主人公の言い回しが少し分かりづらい? 何がダメなのか。後、何故タイトルがラテン語なのだろう。神話の語り変えとして上手くいっているとは思うが、主人公が自分の気持ちと父親の命令の間で葛藤する様子があるとより良いかも。今のネームだと最初から主人公は命令通りに女に近づいたようにも読める(或いはそうなのかな?)。そうすると主人公は、石に変わりゆく女を見てはじめて気持ちが動いたのか。

とねうら「あのおじさん背中で何語ってるんだろう」
 細かい設定が語られず読者が埋める部分が大きいのは、この作品には合ってるんじゃないか。色々想像したくなる。ほくろのある方の双子は彩に会いたくて泣いている男を雇っているんだろうか。一方彩の気持ちは1頁目で暗示されているだけ。12-15頁も理屈よりは感情でワーっといってる感じ。でもそれで良いと思う。

吉田屋敷「かめはめ波のメソッド」
 1頁目でのかめはめ波が何かの例えだと思ったら、ガチでやろうとしてたのか…という引き込みが上手い。日式とメソッドの説明のくだり、私は楽しく読んだが確かに「ごちゃごちゃ言わずにとっとと技見せんかい!」という声もあるかな。んーでもそこはあんこと咲との距離感をも説明する必要な部分だと感じた。で、14頁以降は吉田さんの狙い通りに展開されていると思った。うん、気持ち良くきまってる。

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