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銘柄 口コミ酷評なのに業績好調のワケ(3399 丸千代山岡家)

注:本文は投資に関して助言やアドバイスをするものではない。投資は自己責任で行ってください。

ラーメン山岡家のことは7、8年前くらいから知っていた。尊敬するとある投資家の方がラーメン山岡家の業績をみて、実際に食べに行き「美味しかった」と言ったところ、周りから「何だあなた、あんなのおいしいというのか」って言われて自信を無くし、投資をやめたところ、株価が爆上げした、というエピソードで知ったので印象は強烈だった。大多数の人が好きじゃない商品であってもそれを必要とする人々がいるなら投資としては十分に成立する。自分の感性と価値観だけで市場価値を判断しないこと。などを学んだ。

それからは実際に行ってみようと思ったことはなく、幹線道路を走るとお店が目に入ることしばしばあるものの、美味しそうな印象はまったく持てず、食べたい気もしないし、その上お母さんが酷評したこともあって、「理解できない、ナゾの人たちに好まれる店」のままだった。

最近は自炊を始めたのがきっかけで「おいしさ」を味覚の科学的な側面と、食欲として生物の進化の側面から勉強し、自分の中で「美味しさ」という概念を作り直している途中、ラーメン山岡家はちょうどいい事例かも、と思った。

詳細の話はいずれ別の記事ですることとして、「美味しさ」についてざっくりいうと、そもそも食欲は生物が正しく必要な栄養を摂取するために進化し、「美味しさ」という官能自体は身体のために存在する。人の基本的な食欲も一つだけではなく実は複数存在し、その組み合わせで身体の異なる栄養状況に対処している。健康も美味しさも人それぞれで状況それぞれであり、客観的絶対的なものではない。体の状態が異なれば美味しく感じるものも変化するのがそもそも本来あるべき正しい姿であり、我々が普段それを意識することは少ないけれど、人間の身体は実際そうなっている。

例えば私は子供の頃によく熱を出して寝込んでいた。そういう時、看病してくれた看護師の親戚のおばちゃんが「風邪麺」というものをよく作ってくれた。食欲がないし、食べる気力もないのになぜかあれだけは絶品だった。そして病気が治って試しに同じものを食べてみると、不思議と「まずい」。しかしまた風邪をひいて寝込むとまたあれを食べたい。毎度それを作ってくれたおばちゃんはもう天使に見えた。「風邪麺」の詳細はもう覚えていないが、たしか麺が溶けるかというくらいにトロトロで、ちょっとトマトが入っていて塩みがあるという感じだった。弱った体には負担が少なくて、かつ病気と戦うために必要なものが入っているからおいしかったんだろう。

同じものでも体調によっておいしくなったり、まずくなったりする。

ラーメン山岡家もそこまで極端ではないけれど、おそらく業績と評判がずれる理由は似ているだろう。とにかく業績がいいことは、それだけの人たちに認められたわけだ。しかし評判を聞いてもネットで口コミを見てもイマイチだ。それはたぶん体調の違いだと思う。ラーメン山岡家の立地は幹線沿い、駐車場が広くてトラックが止まれて、24時間営業。つまりターゲット層は夜仕事をしていて、おそらくかなり体を使っていて疲れている方たちだろう。一方で普通の現代人はほとんど体を動かさない。たまに健康のために運動しても、それは深夜働いていて疲弊した人の身体とは違う。

https://nikkan-spa.jp/1891703/2

そう考えると、こちらの記事にあるラーメン山岡家はリピーターが75%というのも頷ける。自分たちの体が切実欲しているものを与えてくれるものは、他人が何と言おうと身体が正直だ。そして社長がスープにこだわっているのもわかる。普通の人のおいしいではだめだ。そのターゲット層の体に効くものでなければいけないだろう。

もしこの仮説が正しいならばラーメン山岡家の株はすごく「おいしい」。普通のラーメン屋はそういう体調の客のケアをしないし、そもそも人間は今の自分と違う体調の人が何をおいしいと感じるかなど想像することが難しい。競合が入ってきにくい。そして体が欲するものというのはなかなか飽きない。競争が激しい、流行り廃りが激しい、そして飽きがすぐ来ちゃう外食領域ではなかなか貴重である

実際に検証するためにわたし食べてきた。体調を近づけるために寒い中をしばらく自転車こいで行った。手袋はしたけれど、それでも手が赤くなるくらい寒かった。

お店は周り真っ暗でほとんど何もないところにポツンと寂しく立っている。夜10時なのに店に入ると満席だった。一組みが先に椅子で待っていたが、すぐ席につけた。しかしラーメンが出てくるのに20分以上かかった。その間に口コミをチェックするとこの店の低評価の主な理由は店員さんの態度、衛生、匂い、待ち時間、うるさい客がいるなどだったが、確かに都内や街中のラーメン店と比べればそういう側面はある。店員さんは忙しそう、不衛生というよりは掃除はよくしているが使い込まれていて古ぼけている感じ、とんこつの匂いがする、そして左は大きな声でラーメンを啜るぽっちゃりした方で、右はちょっとチャラチャラした感じの若いお兄さん二人組みだった。気になる人は気になるだろうけれど、自分としては許容範囲かな。食べ終わって出ていく頃にはもう待つ人が列になっていた。外に出てよく見ると実は大きな駐車場が車いっぱいだった。周りが暗くて気づきにくかったが、駐車場が広いから寂しくポツンとした感じだったかもしれない。そして自転車は一台、私が乗ってきたものだけだった。

味の方はこってり、予想通り体をある程度動かしていて疲れている状態なら食べたくなるもの。そして口コミなどでよく比較される家系やじろう系との違いは、こってりだけれど生にんにくなど刺激的で体に負担をかけるようなものは控え目であることだ。街の中のこってり系、特にじろう系は普段あまり体を動かさない現代人が時々生きる実感を体感するために食べるような、いわば胃袋のバンジージャンプだと思う。食べた翌日などは少し体が重いし、食べた直後などは若干苦しかったりするが、バンジージャンプだからそれで問題ない。一方でラーメン山岡家の方はスカスカになった感じの身体をチャージするようなガツんな感じ、食べた後働くことに支障はない。官能的に味覚を楽しませる工夫感は少なく、原料から濃厚なものをシンプルに愚直に抽出した感じがする。

結論、やっぱ味は好みじゃないのでもう食べることはないと思う。が、必要な人に必要なものを提供するいい店だ。成長していて、独自の強さがあって、割高でもなく、投資先としては魅力的。不安材料は目先は値上げ効果と人流回復効果で大きく増益修正したところだが、一時的な要因だし、反動があるでしょう。一時的に利益が横ばいか微減することもありそう。そして出店はよく吟味してやっているなので、ビシバシ伸ばす感じではなく手堅く成長するようなので、長期的にはいいことだが、短期的には決算で短期勢から失望されて売られるかもしれないが、機会があれば買いたいと思った。

注:この話は去年、12月末のものだが、思いの他株価が早く上昇してしまい、記事公開時ではすでに利食いしたあとだが、今後調整することがあればまた投資したいと考えています
https://x.com/sea85419/status/1740597840660062227?s=20


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