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ChatGPT-4o、投資家として重要そうなこと


今できることではなく、これからできるようになることに目を向けよう

オープンAIからChatGPT-4oが発表された。事前テストによると言語モデルとしての満足度スコアが大幅に改善、また音声による会話や画像の解釈などマルチモーダルになったこと、そして速くなってAPIも大幅値引き、などなど、面白い点はたくさんあって話題だ。

ただ、投資家にとって重要なことは、これら具体的な改善よりも、chatGPT3からchatGPT4への進歩がここ1年程度で達成されたものであり、それが今後さらに続くところだと思う。今できるようになったことよりも、今後できるようになっていくこと、の方が大きなインパクトになるでしょう。

最も重要なことはスケーリング則だ。

AIのパラメータやデータ量などを10倍大きくするとAIの性能が飛躍して、予想もしていなかったことができるようになる、という経験則である。その意味するところは「すっごくお金がかかるけれどやれば進化する」、同じことを成し遂げるにはこれまでなら天才的なひらめきと血が滲むような努力が必要である上に、死ぬほど頑張ったところで結果が出るかどうかもわからなかったところで、お金さえかければびっくりするような結果が出るというのは、異常においしい状況だ。オープンAIはこの経験則をいち早く理解し、その持てる全べてを賭けた結果、GAFAMをまとめて出し抜いてきちゃったと言える。

パラメータを増やすスケーリング則によるモデルの精度向上なんだが、一般向けのわかりやすい解説があったので参考していただければ。
https://youtu.be/44Bl1ZwShxI?si=bYgA_T1WDJLwPTp4
ここはめっちゃ雑に喩えて、サイヤ人が超サイヤ人になるようなものだ。そのインパクトの大きさを体験するにはChatGPT3とChatGPT4の違いを見ればよい。

一方で今回のChatGPT-4oの更新なんだが、ChatGPT4からはパラメータを劇的には増やさずに、モデルの工夫だけ。なのでサイヤ人覚醒じゃなくてサイヤ人筋トレ。chatGPT4を使っている人の中では、ChatGPT3からChatGPT4を見たときのようなインパクトはない、という声もある。気持ちはわかるけれど、筋トレだけで機能も質も速度も効率もchatGPT4からこれだけ大きく向上したのは、それはそれですごい話である。

その一方でちゃんとサイヤ人覚醒した(パラメータ数を1桁増やした)モデルも実は作られていて、ChatGPT5と呼ばれたりしているが、オープンAIのCEOによるとこいつの性能は期待通りの期待以上のものらしく、ただ計算コストの問題で公開できずにいるらしい。つまりこれからかなり高い確率でもっと別格なやつが来るわけだ。

ざっくり整理するとこんな感じでしょうか

ChatGPT3(超サイヤ人)
ChatGPT4(超サイヤ人2)
ChatGPT4o(超サイヤ人2+) ← イマココ
ChatGPT5(超サイヤ人3) ← できているが高価すぎて公開できない状態

今後は超サイヤ人4、5・・・とどこまで続くかが一番重要だろう。今回のChatGPT4oから一番学べることは、実は覚醒しなくても(覚醒がいずれ止まっても)筋トレだけでも成長が期待できることだが、やっぱり覚醒はそれ以上にインパクトが大きい。

これからNvidiaは2QからH200を、そして年末にB100を出す予定で、そこで計算コストがそれぞれまた劇的に下がるから、どこかでChatGPT5(超サイヤ人3)が見られるだろう。

ChatGPT4oはそれまでのつなぎ。

雑談:市場はどこまで理解しているか

肝心のスケーリング則なんだが、研究の歴史の中でもなかなかみない状況のためか、意外とまだ大多数の投資家と経済学者がこのことの意味を十分に理解していない可能性が高い。

つい最近の決算説明会などをみると、アマゾングーグルマイクロソフトは専門家としてここが勝負どころだとAI投資をもっと増やしたくてしょうがないという感じだが、理解を示さない市場と投資家に忖度しつつも、若干こっそりやっちゃったり計画を説明する際にお茶を濁して逃げたりしているところが見ていてちょっと面白かった。

こういう時に意見を貫けるのはやっぱり創業者が現役の会社でしょう。そこで実際に投資家に忖度しないよ、というメタは株価暴落、同じく忖度はしないがModel2やFSDなど他のトピックで煙に撒いて逃げたのはテスラ。派手に振舞っているが、一度会社が潰れかけたこともあったためか、実は結構コストやキャッシュにシビヤだというイーロン・マスクさん、その彼がここ数年コツコツ貯めてきたキャッシュを一気に出して来たことの意味は大きい。

雑談:AIハイプはなかなか幻滅しない

ある意味ハイプだ。例えばSNSにはAIプロ驚き屋というのがいて、AIに関していろんな面で誇大広告をして回っている。非現実的な期待が膨らんでいることも事実だ。それがどこかで失望と落ち込みを経験する可能性も高いけれど、問題はその間にAIの方でまた新しい進化が遂げて成長と期待を生み出し続けることだ。ここ数年間はそれが続いた。5年前にもAIはバブルだと言われていたし、それはそれで正しい側面もあった。

ガートナーのハイプ曲線がわかりやすい。ガートナーは毎年のように何某AIが幻滅期前夜に書いてきた。それに反してAI業界は大して幻滅期を経験していない。今年も幻滅前夜に生成AIが入っているけれど、たぶん今までと同じことになるだろう。ガートナーは過去のグラフの予想が都合悪くなるとそれを過去のグラフから消しているので、毎度みっちりといろいろ書いたグラフを発表してはホームページの過去のグラフを覗いてみると結構スカスカになっていたりする。

実際のところガートナーさんは非常に優秀だと思う(あとから消すのは姑息だと思うが)、ただ今起きていることの方が異常なだけだ。ガートナーが来年出すハイプ曲線でも幻滅前夜に別の何某AIが登場するかもしれない。今度はエージェントAIになるか、マルチモーダルAIになるか、AGIになるか。楽しみだ。

雑談:少しだけ投資関連

Nvidia株、スケーリング則が要求するトンデモナイ計算加速とコスト削減を実現してくれそうなのはいまのところNvidiaしかいない。ガンバレNvidiaきみしかいない感じ(株価の方は・・・よくわからない。一時的な投資減速や在庫積み上げが起きれば調整することもありえるかな)

日本株は、今回の更新でAPIを組み込んでいるPKSHA Technologyは恩恵受けそう。また、難しいことは忘れてとにかく速く上手に使い倒すことに集中し、利益率が上げ始めているGMOメディア、GMO TECHも面白いかも。ほかに思いつく関連ありそうな銘柄は個人ECで機能を組み始めているBASEや、メディア部門で活用しつつ、常に新しい可能性を模索しているポート、それからクリニックの受付でもう使い始めているGENOVAは個人的に注目。今回のモデルは驚異的な画像理解力を持つようになった意味でアイビスなどお絵描き界隈も何か出してくるかも。一方で漠然とただRAGやチャットボットだけだと差別化しにくいかなと思っており、メタリアルとユーザローカルは面白そうだけれど、個人的にはとりあえずいいかなと。

どの企業が上手に活用して大きな成長を遂げるかはわからないけれど、ここから大躍進する企業が現れることだけは確かだろう。これから数年は成長株投資の黄金期になりそう。

また、今回の更新でもわかるように、進化し続けるこの技術を活用できる会社とできない会社で格差が開くだろう。そういう意味では、こういうことが一番うまいのはNASDAQの企業たちだ。向こう数年、個別株でNASDAQに勝つのが非常に難しい局面になるだろう。

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